フルプライムを考える4「アンカー阻止1」
いちおう下記からの続きですが、それぞれのテーマは独立しているとも言えるため参照不要かも。
ポジションを見て考えた方が早そうなので、まずはポジション提示から。
ポジション1
選択肢は2通りで、「フルプライムを維持して次のポイントオンを目指す」のか、「フルプライムを崩してヒットし、アンカー作りを阻止する」のか。
ここはヒットが最善手で、勝率を上げるのみならずギャモン率も押し上げる。
前回までお読みの方ならわかると思うが、2枚ヒットしてバーに上げる意義は大きく、ギャモン率を押し上げる。1ポイントのぼっちチェッカーをヒットしないデメリットはアンカーを作られる可能性があることで、これが厄介。
ヒットしていればギャモン率が約78%あったのに、ヒットせずに白16/10 8/3と進むだけでギャモン率は約61%に減少し、さらにアンカーを作られたことでギャモン率が約21%にまで下がってしまった。
相手のポジションがひどいこともあるが、アンカーを阻止した方が良いと言うことになる。また、前回までのテーマ「ギャモンを獲る」と同様で、「アンカーを阻止する」→「2枚ヒットしてギャモン勝ちに持ち込む」という意味もある。
ポジション2
相手のポジションはポジション1よりは良い。ヒットしない方が良いか?
ポジション1同様に、アンカー阻止以外はブランダーとなった。
ちなみに相手のポジションをより強く5プライムボードにするとどうだろう?
この場合はヒットしない安全策の方が良い。
仮にアンカー阻止の目的でヒットしてリターンヒットされ返した場合、次の図のようになる。
お互いの5プライムを超えるためには1でエンターして6を振る必要があり、条件は同じになる。白が先手である分だけ若干有利だが、黒には1ゾロというジョーカーもある上に最大5枚拾う展開まであり、勝率もほぼイーブン。ここまでくるとヒット前とかなり景色が違ってくる。
4プライムかつ穴あきフルプライムだとアンカー阻止の方が良い。リターンヒットされてもまだプライムで勝っており、先ほどのような悲惨なことにはならなさそうだ。
ポジション3
白が56を振った。黒のチェッカー2枚をフルプライムに閉じ込めており、かなり有利な状態。このまま勝ち切りたいと同時に、できれば2枚とも閉じ込めてギャモン勝ちを狙いたい。
ぱっと浮かぶ選択肢としては3つくらいか。
プラン1:ヒットしない。フルプライムの後ろの3枚のチェッカーをプライムの上に乗せてしまい、次のチャンスを狙う。ただし、次に2ポイントにアンカーを作られると大変。
プラン2:2ポイントを作る。フルプライムを崩すことになるが、5プライムは維持。1ポイントにアンカーを作られると厄介だが、ダンスされると次に1ポイントを攻撃して、2枚とも拾う展開が見えてくる。
プラン3:7/1* 7/2*とダブルヒットする。うまくいくと2枚とも拾えるが、下手すると1ポイントあるいは2ポイントにアンカーを作られる可能性もある。プライムも4プライムにダウングレードする上に、展開次第では、白→フルプライム作り直し、黒→1と2にブロット、と千日手のようなことになりかねない。
で、結果は2ポイントをつくる手が最善手。
この手が最善になる理由としては、「5プライム=5ポイントボードは強い」「2ポイントにアンカーを作られる展開は1ポイントに作られるよりまずい」というところだと思う。
ポジション4
白が12を振った。できれば1ポイントのアンカーをヒットして、相手のアンカー作りを阻止したかったができなさそうだ。仕方ないのでここは無難に9/6で次のチャンスを待つか…。
無難だ。
しかし他に選択肢なさそうとそのままゲームを続行。そして対戦後、解析を見て目を疑った。
強引すぎるがヒットできるじゃないか! なんと実戦では1ミリも考えなかったバナナスプリット!
確かに黒の11、12、22の4通りは激痛だが、3-7ポイントにずらりと並ぶ5プライムは強く、残りの32通りはまだギャモン勝ちを目指して戦える。またヒットされても相手陣は弱く、インナーブロットも2つあり、逆に相手の方が窮地に追いやられそうだ。
そして、1ポイントにアンカーを作られること自体が激痛(ここがめっちゃ大事)。例えばバナナスプリットをせずに白が無難な9/6と進み、その後、黒が12を振って下記のように進行した場合。
黒がアンカーを確保したことでギャモン勝ちが13.7%まで激減し、のみならず勝率も9割を切った。なんと逆転負けする可能性まで出てきてしまった。さっきまでのギャモン勝ちの可能性はどこへやら、なんとToo goodとDouble-Passの境界線上であり、XG先生は「そろそろ諦めてキャッシュを考えようや」とおっしゃっている。
「人間は、未経験のことは選択肢に上らない」と言う。たとえ本で読んでいたとしても、実際に経験しなければ頭に浮かばない。
しかし、私は経験を一つ積んだ。今後は同様の局面でバナナスプリットが選択肢に上るだろうし、最善とされる場面で「バナナスプリットの名手」とされるSander Lylloffの如くバナナスプリットをキメてみたいと思う。
いやあ、バックギャモンって本当に面白いですね!