神戸市のタワマン規制について規制地域内に住む人間として考えてみた
神戸市は三宮を中心とした地域に対して、タワマンを規制する条例を施行している。
この都市戦略。ものすごい賛否両論だったりする。
賛成意見としては、タワーマンションの未来を考えたときの問題、そして都心と住宅地をハッキリと分けることで、市内の周辺地域への転居や住宅開発を進めることで市内のバランスを取ろうということがある。
反対意見は人口増にはタワマンが必要である・・あれ、それくらいかw
大阪市内は今、あちこちでタワーマンション建設が行われてるから、神戸がまた周回遅れになるという懸念はある。
ぶっちゃけた話、神戸市民はタワマン規制に割と賛成な人が多いように見受けられる。
反対していて声が大きいのは一部の「再開発マニア」くらい。
多くの市民はタワマン規制に関して「そこまで興味がない」ということなのかもしれない。
タワーマンションの長所短所を考えてみた
タワーマンションが一つでき、人が居住すると人口増加が発生する。
これはまぁ当然の話し。
人口増加=税収アップという直接的な効果をもたらす。
居住人口が増えるとその周辺に生活に必要な買い物拠点などができる。
経済効果という面でみると、タワーマンションというのは街の起爆剤になるのだ。
短所はどうだろう。
急激な人口増加は教育施設、幼稚園・保育所・小学校・中学校が手狭になる。ましてや過去のドーナツ化現象によって淘汰してしまっているので余計にそうなる。
でも今から学校を新設するというのはさすがに難しい。しかも都心に新たに作ることになると、地価高騰が起こってるだろうからさらに困難になる。
要は急激な人口増加に教育を中心とした行政が追いつけない、ということが発生する。これは現に大阪や東京でも起きていることだと思う。
警察も人員増やさないといけないだろうし、消防はタワマン対応の消防車とか対策が必要になってくる。
これらがおろそかになると、治安の悪化も起きるかもしれない。
あとは神戸市長が言う「タワマンの廃墟化」が起きる可能性があること。
マンションデベロッパーは建てるだけ建てて、あとの保守メンテナンスは管理組合とか管理会社でやってねーと100%ではないけども、丸投げされることだってあるだろう。
そうなったときに、ちゃんと管理できるのか、修繕工事や災害が起きたときの復旧作業などができるのか、という不安。
まぁこれはタワマンだけに言えることではないんだけど、タワマンは低層マンションに比べるとコストも高くなってくる。
正直、大阪や東京にできてるタワマンは「投資目的」も多くて、実際に人が住んで生活をしているかどうか怪しいところもある。
そうなるとタワマン=人口増加は必ずしも・・?と思ってたりする。
「タワマン規制後にどうなったか」に思うこと
先程の神戸市のnoteには、タワマン規制後の三宮についてこう書かれている。
うーん・・。
JR三ノ宮駅駅ビルはタワマン規制前から話はあったし、その他の商業施設やホテルなども軒並み規制前から決まっていたりすることが多いだろうから、一概にすべて「タワマン規制のおかげ!」では無いような気がする。
街にはある程度の新陳代謝が必要だと思う。古いものを捨てて新しいものへと変わること、街の進歩にも維持にも必要なことだ。
でもついこの前までの神戸にはそれがあまり感じられなかった。もちろん古いものを活かすことは大事だと思うけど、街の新陳代謝が起きていない。
阪急三宮駅の駅ビルができてからはかなりインパクトがあったのか、新しい店とかがどんどんできていたけども、それ以外の地域はあんまり変わってなかった。
話をタワマン規制に戻すけども、新しいタワマンができない以上、街は変わらない。先ほどの経済効果や人口増による周辺への波及が起きないのだから。よく言えば「現状維持」、悪く言えば「停滞」だ。
でも世の中の流れは停滞することは衰退へ向かっていることへの証左である。
新しい変化に対応する必要があるけど、それをしない、諦めることは衰退を受け入れているということになってしまう。
まぁ三宮の再開発が進むことで前向きになってるので、神戸はまだ諦めてないとは思ってる。
以前はそれすらなかったんだから。そう考えたら一歩進んだ気がする(遅れを取ったけど)
タワマン規制後に起きているなと住んでる人が感じていること
僕は2022年10月に神戸に戻ってきて、10数年ぶりに神戸市民になった。
家は新神戸駅の南側にあるちょい古めのマンションに住んでいる。
このエリア、先程の神戸市のnoteにあった、「都心機能活性化地区」と呼ばれる地域に指定されている。
三宮周辺は住宅自体の建設を禁止しているのに対して、その周辺である「都心機能活性化地区」は「住宅建ててもいいけど住宅としての床面積に上限を設ける」地域になっている。
要は「本来は商業地であるべきなんで住宅は程々にね。あ、タワマンはダメよ」ということ。
その結果起きているのは「低中層マンションの乱立」である。
うちの家の周り、新神戸駅近辺だけで少なくとも4棟は建設中で、そのすべてが15階建て前後のマンションだ。
ファミリー向けと謳っているところもあるけど、単身者向けがほとんどのように見受けられる。
僕なりに考えた「マンションラッシュ」の要因の一つは
「ターミナル駅(三宮)まで徒歩圏である」
ということ。自分もその理由で今の家に住むことにしたしw
三宮に通勤する人も、僕のような大阪に通勤する人も、徒歩で三宮というターミナルに出られるメリットは大きい。
徒歩でなくても地下鉄・市バスで10分もかからないし。
新神戸駅近くには1棟すでにタワーマンションが建っているのだが(本来はもう一つあるんだけど、こっちはちょっと意味が違うらしい)、そこそこ埋まっているらしい(なんなら1億超えとかある)。
ということはタワーマンションとしての需要はそれなりにある地域なのかもしれない。
なので、もしかすると今建設中の低中層マンションは、タワマン規制がなければ本来タワーマンションになっていたのかもしれない。
本来、神戸市としては「三宮周辺に住むのではなく、他の区、北区・西区・須磨区などにもバランスよく住んでほしい」と計画しているものの、実際に住む人は「やっぱり都心に近いほうがいいよね」と三宮周辺の需要が下がらず、それに応えたデベロッパーが低中層マンションを作りまくっているのかもしれない。
まぁ正直に思ったことを書くと「計画、失敗してない?」。
タワーマンションを規制することで、都心に住みたい人の需要を下げて、周辺に分散させるはずだった。
でも実際は都心に住みたい人の需要は下がらず、その結果、三宮徒歩圏エリアでその需要を満たそうとしている、ということなのではないか。
とはいえ、今建設中のマンションはどこもかなりのお値段するらしいし、すでに三宮周辺の家賃相場は高くなっているので、それによって都心から周辺地域へ需要が向くだろうけども、現状はそんな感じだ。
タワマン規制は十分なのか?不十分なのか?
神戸市も分散させたい地域の拠点の再開発を進めている・・んだけれども、その効果というのは1年とか数年単位では分からない。
ただ一つだけ言うと、西神中央も名谷もとても素晴らしい街だと思うけど「大阪から通勤する」という事を考えたとき、やっぱり「遠い」という障壁が大きい。
大阪~三ノ宮が新快速で最速20分そこら、阪急でも40分かからないくらいで速いと感じるけども、そこから地下鉄で1時間近くはちょっと・・。
リモートワークができたり、三宮で働く人ならば、名谷とか西神中央はかなり住みやすいんだろうけど、そこからさらに大阪に出るとなるとなぁ・・。
明らかにビジネス人口が多いのは大阪だ。だから大阪で働く人を受け入れる、ベッドタウンになるのはある程度仕方がないことだと思う。
ただそのベッドタウンを三宮にしたくない、名谷や西神中央にそれを設定するとなると、今のタワマン規制だけでは正直、効果は薄いように思える。
さらに、三宮の周りに低中層マンションが乱立することは、維持管理対象の建物がより増えるし、さらにタワマンよりも厄介な問題が起こってくる。(孤独死とか不法滞在の外国人とか)
もちろん、まだ施行して2年ちょいで結論は出せないとは思う。
だけども、タワマン規制をするのであれば、禁止したエリアの周辺のマンション開発についても容積率制限だけでなく、もっと踏み込んだ条件(例えばワンルームとか1Kはダメとか)とか、維持管理についてはデベロッパーも責任持つとか、そういうことまで踏み込まないと十分だとは思えない。
結論
僕個人としては、タワマン規制は今のところ賛成である。
放棄タワマン問題は今はそれほど問題になってないけど、数年先のことを考えたときに必ず直面するはずだ。
そして「日本のあちこちに似たりよったりなタワーマンションが建つ」という光景も、個人的にはあんまり・・だったりする。
地震や台風などの災害が多いこの国でのタワマンを建てることへのリスクが高すぎる。武蔵小杉のタワマン群で起きた「ウンコナガレーゼ」問題を忘れたのかと。
でも「中途半端に三宮の周りに住宅需要を逃がす」だけでは意味がない。
放棄タワマン対策として遠い未来まで見据えているのであれば、三宮の近くに乱立しつつある低中層マンション対策もセットで考えないと、なかなか郊外まで需要を移動することは難しい。
神戸でのタワマン規制が成功するかどうか。
まぁ2年ではわからないけども、5年後、10年後どうなるのか。
期待7割不安3割ってところかなぁ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?