通行量の減少という擬似問題
「通行量の減少」とはどういう問題なのか?
最低限、”集客イベントの増大” では解決出来ない問題だ、ということでは理解が共有されていていいはずなのに。
もし、本当に〈経験と勘〉で問題を解決しようとするなら、〈集客イベント〉が問題の解決にはならないことは全国・全商店街的に共有されて以内とおかしいのでは?
〈経験と勘〉で取り組む=経験に学んで適切な解決法を選択するということなら、失敗した経験は反省し、改善し、あるいは代替手段と交換しなかればならない。
しかし、現実にはイベントへの集客には成功しても事後の集客・通行量の増大には結びつかない集客イベントがずっと使われ続けられている。
つまり、経験を活かした解決策の改善はほとんど行われていない→経験は活かされていない。
これはどうしたこと?
「通行量を増大すれば商店街は活性化する」ことは、国の商店街政策の基本方針の一つ*ですから、長年に渡って「経験と勘」に基づいて同質類似微差事業を繰り返してきたが成果が得られていないという「苦い経験」に学び、あらためて〈通行量増大策〉の新しいチャレンジ、あるいはさらに踏み込んで:
そもそも「通行量を増大すれば商店街は活性化出来る」
という考えはどのような根拠(経験)に基づく〈仮説〉なのか?
ということも考えて見るべきでは?
ちなみに、
”昔、商店街が繁盛していた頃は通行量が多かった” という「経験」は、”通行量を増やせば商店街は活性化する” という仮説の根拠にはなりませんからね。通行量と商店街の繁盛とのあいだに、原因=通行量、結果=繁盛という因果関係が成立することは証明されていませんので。
*なお、国は一貫して〈通行量の増大〉を商店街活性化のための目標の主要な一つにしていることはご承知のとおり。『地域商店街活性化法』第一条目的には “来訪者の増大” が謳われています。
”通行量(住む人来る人)を増大すれば商店街は活性化する”という【活性化理論】を提供しているのは、日本政策投資銀行の藻谷浩介氏ただ一人です。(氏の主張が客観的な検討に耐える内容をもっているかどうか、関心があれば次のNOTE記事を参照のこと)
『藻谷浩介的中心市街地活性化論批判』
https://note.com/takeoquolaid/n/naddbc2f37a2f
商店街の“栄えていた当時の”とおり景観の想い出” と藻谷説の「合作」が今にして考えられる「通行量増大路線」の根拠です。
前述の通り、“繁盛している商店街は通行量が多い” のは事実だとしても、そのことが原因=通行量増大―結果=商店街の繁栄という因果関係を意味するものではありません。”通行量を増大すれば商店街は活性化する” と言う理論(主張)は一度も論証されていません。
これまでの取り組みの経験で分かったこと: 少なくとも ”通行量を増大させる事業では通行量を増やすことは出来ない" ことは、規模・回数などは様々ですが全国全商店街で長年に渡って取り組まれた結果として明らかになっています。 すなわち、“商店街の通行量減少という問題は、通行量増大策では解決出来ない” 問題です。 しっかり確認・納得して下さい。
あらためて「通行量が減少する原因」について考えます。通行量=通行量調査の歩行者数=買物目的の来街者数✕平均買回り店舗数とします。 通行量が減少する原因は、 1.来街客の減少 2.買い回り行動の減少 だということは容易に分かります。 原因はいろいろいろいろ考えられます。
ちなみに、中企庁の商店街実態調査(H27年)の結果=商店街が考える来街者減少の原因は、添付グラフのとおりです。
上位3項目は: ①魅力ある店舗の減少 ②業種業態の不足 ③近郊の大型店の進出 となっています。 ③の結果、集積間競争が激化→商業集積としての機能の相対的な陳腐化・劣化による顧客の新に進出してきた商業集積への顧客の移動が増えた結果として来街者、通行量の減少が起きていることが読み取れます。
グラフから分かるのは、通行量減少の原因は、商業集積としての機能の相対的な陳腐化、劣化であること、 従って、既存の来街者・通行量増大事業ではこの原因への対策にはならず、いくら事業に取り組んでも通行量を増大することは出来ないということ、これまでの事業の結果として起こっているとおりです。
以上の検討からあらためて分かったこと
1.通行量の減少は、商店街衰退の原因では無い
2.だから、通行量の増大に取り組んでも商店街を活性化することは出来ないの二点(特に重要)、加えて
3.商店街の通行量は現在取り組まれている〈通行量増大策〉策で増大することは極めて難しい
4.ごく稀に増大できても活性化には結びつかない
5.以上について〈例外〉は無い
※商店街活性化=衰退趨勢に陥っている商店街が施策を講じて商業集積としての永続可能性を取り戻すこと
商店街を活性化したければ、現在取り組みのメインとなっている「通行量増大策」は効果が期待できない(論理的にも経験的にも)ので、新しい効果が期待できる取り組みに転回することが喫緊の課題です。この課題は、すべての活性化が必要な問題状況に直面している商店街が解決することを求められているもの、我々が提唱している【商店街再生への道】は、現在のところ、〈通行量増大策〉の解決策としての不可能を越える唯一の選択肢です。
それにしても。
中企庁は、自ら実施した『商店街の実態調査』における「商店街の来街者の変化」のヒアリングで「来街者減少の原因」について上掲グラフのような結果を得ながら、従来通りの〈来街者・通行量増大策〉を推進しようとするのは何故?
もしかしたらグラフに示されている「来街者が減った原因」について効果的な対策が考えられず、講じることが出来ないから?
他に理由がありますか?
一方商店街は、通行量減少原因を経験に基づいてグラフのように回答しながら、取り組む事業は原因とは無縁の〈来街者・通行量増大策〉に相変わらず取り組んでいるのは何故?
来街者通行量減少の本当の理由を直視すれば、当然取り組むべき効果的な対策を考えつかないから?
それとも中企庁をはじめ関係各方面が従来通りの増大策を補助金付きで推奨しているから?
「来訪者・通行量減少」という、たとえ解決しても商店街活性化には無縁の「擬似問題」に関係各方面足並みを揃えて取り組んでいる間も商店街の衰退趨勢は確実に進行しています。一日一刻も早く「解決すべき本物の問題」を確立し、解決策に取り組まなければならない←全国全商店街、関係各方面が例外なくこの問題に直面していると言ってけして過言ではなりません。
実態調査のグラフを手がかりに考えてみましょう。「来街者が減少した要因」の1~3位は図のとおり。
3項目のうち、1,2位はに共通しているのは、来街客がショッピング行き先に期待する商業集積としての満足要因の不足、3位は商店街と代替機能(優位性を持つ)の商業集積の存在です。
すなわち、商店街に対してショッピング行き先としての不満があること、および、その不満を解消する別の商業集積が立地している、と言う二つの条件がそろって「買物行先としての魅力の減少―陳腐化」が始まり、次第に「買物目的の来街者の減少」→来街者の減少が起こります。
〈買物目的の来街者が減少する二つの要因の相互作用〉
1.商業集積としてショッピング行動の期待に応える機能が不十分である
2.日常行動圏内に競合する商業集積がある
二つの要因が相互作用することで商業機能としての要件の不備(魅力ある店舗の減少、業種業態の不足)は漸進的に進みます(その結果が商店街の陳腐化―空胴化)。
活性化を目指す商店街が解決を目指さなければならない問題はすでに明らかですね。
三大要因に従来の解決法で取り組もうとすると・・
従来の方法とは:”打てば響く” 条件反射
・通行量減少→通行量増大事業:集客イベント
・空店舗増大→空店舗活用事業:賃貸料補助
・コミュニティ機能劣化→施設整備
取り組みはしたものの活性化への効果は得られなかった
三大要因に対しては:
・魅力ある店舗の減少→魅力店舗を増やす→How ?
・業種/業態の不足→不足店舗の誘致→How ?
・近隣大型店の影響→大型店の誘致HHow?
★「来街者減少」三大要因については、条件反射的取り組みは出来ない→実態調査で明らかになった来街者減少要因は、対症療法では解決出来ない、取り組み方が分からないので、効果が無いのは承知の上で「来街者・通行増大」に取り組んでいる?
課題は明らかです。
来街者減少とは、商業機能の陳腐化、劣化によるショッピング目的の来街者の減少だから、商店街活性化が取り組むべき問題は、「商業機能の陳腐化、劣化からの脱出」→「地域住民の生活の現在―近未来のショッピングニーズに対応する商業集積への転換」←これが商店街活性化が解決しなければならない問題です。
あらためて確認してみました。
ショッピングニーズに対応する商業集積とは?
どうすれば転換出来るか?
一朝一夕に解決出来る問題では無い、喫緊の課題である「増収増益」を実現しながら転換していくことが出来る方法があるだろうか?
という難題への解答=取り組むべき問題が我々が提案する「売れる売場づくりからスタートする商業集積としての再生」です。
現状見たままの商店街の状況からスタート、直ちに増収増益を実現しながら、商業集積としてのあり方を転換していくことが出来る、「虫のいい」取り組みですね。
現状ありのままからのスタートの条件とは:
立地、店舗、商品構成など基本条件は現状のままで取り組みが始められること、すなわち:
1.取り組みに先立つ準備(知識、技術の修得):無し
2.新規投資(設備投資、運転資金の増加)無し
3.経営診断・計画作成:無し
4.品揃え転換:無し
5.来街者、通行量増大への依存:無し
等々の条件→大がかりな作業無しで始められることが必要です。
条件をみればお分かりのとおり、この取り組みは、仮説―試行、即ち、売場で小さな問題を発見し、解答を仮説として実行する、期待した効果が得られなかったらやり直す、「一部手直し」的取り組みの連続―積み重ねで組み立てられています
なにしろ「スタートと同時に増収増益が始まる」ことが必要、そうで無いとスタートもましてや取り組みを継続することも出来ませんからね。
すなわち、スタ-ト時点で必要なのは「やってみようか」という【試行・チャレンジへの決意だけ】です。
長文お疲れ様でした。
以上で、【通行量の減少】が解決出来ない、解決しても商店街の再生にはほとんど無縁の仕事だということをあらためて明らかにしました。
さらに、本つの問題は、
【売れる売場づくり】であるということも書き添えました。
納得いただければ幸いですが、如何でしょうか。
もしよろしければ商店街の有志、その他問題意識を共有される方にお伝えいただければ幸いです。
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