海よ悲しき----台湾引き揚げの記
#創作大賞2023 #エッセイ部門
はじめに
私は終戦間近、台湾・台北市内の産院で生まれた。アメリカ軍の空襲が頻繁な中、母は空襲警報におびえながら私を生んだという。どうせ死ぬのなら家族の傍でと医師の止めるのを振り切って翌日退院。その直後、爆弾が産院を直撃。多くの赤ちゃん、母親、医師たちが命を落とした。私は生きたくても生きられなかった赤ちゃんたちから血まみれの命のたすきを渡されたのだ。自分の意志とは関係なく。
以下は、私が半世紀以上にわたり家族や体験者から漏れ聞いた言葉を