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32 SLEの筋骨格系と骨代謝
Dubois 32章は、The musculoskeletal system and bone metabolism
Introduction
全身性エリテマトーデスと筋骨格系のキーワードとしては、関節炎、筋炎、骨壊死、骨粗鬆症などがある。本章では、SLEにおける筋骨格系疾患の疫学、画像診断、病理学的、遺伝子関連のデータを紹介する。
順番としては、1 Arthritis, 2 Myositis, 3 Avascular Necrosis, 4 Osteoporosis, 5 関節置換術Joint Replacement in SLEをまとめます。
1 Arthritis関節炎
Pearl: SLEの関節炎はrhupusと呼ばれるびらん性、とJaccoud(ジャクー)関節症によって特徴づけられる非びらん性に分かれる。
comment: Whereas SLE is generally categorized as “nondeforming and nonerosive,” “erosive” arthritis is typically aligned with the concept of “rhupus,” and deforming and nonerosive arthritis is characterized by Jaccoud arthropathy.
・関節炎はSLEの主要な症状であり、少なくとも90%の患者に認められる分類基準に含まれる症状である。SLEは一般的に「非形成性・非びらん性」に分類される、びらん性 "関節炎は一般的に "rheusus "の概念と一致し、変形性・非びらん性関節炎はJaccoud関節症によって特徴づけられる。
・関節炎は様々なSLEの分類基準に含まれている。1971年のACRの予備的分類基準( preliminary classification criteria)で、初めてSLE関節炎の定義が確立された。 その後、1982年に改訂された基準では、非びらん型とされ、2012年のSLICC、び2019年のACR/EULARではレントゲンによるびらんの評価は不要になっている。
Pearl: SLEの関節炎の評価は、アロディニアや線維筋痛症と区別すべきである
comment: Joint line tenderness became a specified physical examination element to distinguish arthritis patients from those with diffuse allodynia or
fibromyalgia, which is prevalent in SLE patients.
ACR/EULAR Musculoskeletalの項目
・Joint involvementのところの記載は、以下の通りで、2関節以上の関節炎
※Joint involvement is defined as either synovitis involving ≥ 2 joints characterized by swelling or effusion or tenderness in ≥ 2 joints and at least 30 minutes of morning stiffness.
・※関節炎の評価は、SLE患者に多くみられるびまん性アロディニア(通常は痛みを感じないような刺激でも痛みを感じてしまう感覚異常)や線維筋痛症の患者と区別するために、身体所見として指定されている。
・今のところ筋炎は分類基準には含まれていないこと、超音波によるsubclinicalな滑膜炎を評価することなどは今後の検討事項である。
Pearl: 臨床上、関節炎を認めていなくても画像上のsubclinicalな関節炎を認めることがある
comment: Subclinical inflammatory arthritis can occur even when no synovitis is detected on physical examination.
・ポイントオブケア超音波検査(POCUS)の普及により、筋骨格系の評価ができるようになってきた。MRIはより感度が高く骨浮腫の評価もできるが、コストがかかる。
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SLEのsubclinicalな関節炎を調べた研究
まとめとしては
・無症状でも、超音波で滑膜肥厚(SH ≥1)が77%に認められたが、その大半(63%)は軽度(grade 1)、異常な(power doppular)PDシグナル(SH ≥2 または PD ≥1)は23%の患者に認められた
・症状のあるSLE患者では、滑膜肥厚(SH)が100%であり、より重度(grade 2以上)が多く、83%にPDシグナルが認められた
・健常対照群(コントロール)でも50%にSH(grade 1)が見られたが、PDシグナルは0%。
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・Synovial fluid analysis and synovial tissue pathology 関節液分析および滑膜組織病理に関する検討
Pearl: SLEの関節液は補体の低下と、インターフェロンαの関連が示唆されている単核細胞内の管状網状構造(tubuloreticular structures)が観察される
comment: Joint fluid in SLE can have varied white blood cell counts, LE inclusions with chromatin-like filaments, and a small amount of electron-dense immunoglobulin-like material; lowered total hemolytic complement; and tubuloreticular structures in mononuclear cells, which have been associated with interferon-alpha.
Synovial fluid cells in systemic lupus erythematosus: light and electron microscopic studies. Lupus. 1995;4(5):353-364
・SLEにおける関節液にはクロマチン様フィラメントを伴うLE封入体や電子密度の高い免疫グロブリン様物質の少量の沈着が認められる。
※LE(Lupus Erythematosus)細胞は、SLE患者の白血球(主に好中球や単球)が他の壊れた細胞の核成分を貪食してできたもので、このとき、核の一部が抗核抗体と結合して凝集し、特有の封入体を形成する。
※ クロマチン様フィラメントとは?: LE封入体の内部には、クロマチン(DNAとヒストンなどのタンパク質が絡み合った構造)が線維状(フィラメント状)に変化したものが含まれることがあり、これをクロマチン様フィラメント(chromatin-like filaments)と呼ぶ。
・また、CH50の低下、および単核細胞内の管状網状構造(tubuloreticular structures)が観察され、これらはインターフェロン-α(IFN-α)が示唆されている。
※ 管状網状構造(TRS)は、電子顕微鏡で観察される滑面小胞体由来の網目状の構造であり、SLE患者の単核細胞(リンパ球・マクロファージ)にTRSが多く観察される。TRSの存在は、SLEにおけるI型インターフェロン(特にIFN-α)の過剰な産生と関連している。
※tubuloreticular structuresは腎炎でも認めるがSLEに特異的ではない。HIVなどのウィルス関連でも認めておりやはりINF-α関連とされる。
・病理ではSLEの滑膜は滑膜細胞の過形成と微小血管病変を呈し、血管炎から様々な程度の炎症細胞浸潤まで認められる。
・しかし、RAに特徴的な**炎症性パンヌス(pannus)**は形成されない
・関節液中には、インターロイキン(IL)-17、IL-6、インターフェロン-γ(IFN-γ)の産生が確認されている。
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Arthritis Rheum. 2007 May;56(5):1579-88
・滑膜の遺伝子発現解析では、SLE滑膜は線維芽細胞が豊富であり、強いIFN-β1シグネチャーを認めている。RAや変形性関節症(OA)の滑膜と比較すると、SLE滑膜ではインターフェロン誘導性遺伝子の発現亢進と、細胞外マトリックス成分の発現低下が特徴的であり、さらにIFI27、TLR4(Toll-like receptor 4)、STAT-1の発現量も高値を示す。
Pearl: SLEの滑膜炎は自然免疫系の主役のmyeloid cellsが主体であることがゲノム解析で示唆されている。
comment: Genome set variation analysis has noted that, in comparison to synovium from RA and OA subjects, lupus arthritis may be more myeloid-mediated than RA with significant upregulation of type 1 interferon signature, antigen presentation signature, inflammasome pathways, and monocyte/macrophage cell populations.
・ゲノム解析によると、SLEの関節炎はRAよりも骨髄系細胞(myeloid cells)を主体とする病態である可能性が指摘されており、I型インターフェロンシグネチャー、抗原提示経路、インフラマソーム経路、単球・マクロファージ系細胞の活性化が顕著に亢進していることが明らかになっている。また、TNおよびIL-1はSLE関節炎においてもRAと同様の炎症促進作用と関連している。
※書かれている関節炎の免疫学的機序を、SLEと関節炎で分けてみると
![](https://assets.st-note.com/img/1738161060-DtZEnb798PI4dzxy5ASJXihj.png?width=1200)
※こうなると病態がよくわからなくなるので勝手に推測します。SLEの病態としてはIFN依存性のpDCの活性化で、自己抗原・自己抗体が反応し、補体が活性化せるみたいなイメージ。関節炎の主体がMyeloid-drivenとすると、おそらくはIFN依存性の環境下において、Netosisのようなことがおき関節炎を増強し、MΦが活性化し、自己抗原が放出され、全身性の自己免疫反応が増幅させる。よくわからないが、関節炎→全身性に炎症の波及・リンパ球系の活性は起きそうなので、関節炎はしっかり治療したほうがいいな、と思いました。それは皮膚も同じか。自己抗原の発生源はしっかり消す。
Jaccoud arthropathy (JA)
・ジャクー先生:1869年、フランスのFrancois-Sigismond Jaccoud (1830-1913)は、リウマチ熱と関節の変形を伴う患者について述べた。
Jaccoud FS. Sur une forme de rhumatisme chronique: Lecions de
clinique medicale faites a l’hopital de la charite. Paris: Delahaye. 1869:
598-616.
以下は、その598ページ
![](https://assets.st-note.com/img/1738161116-vctgA9La4qfjEDh1yuiFpWQO.png?width=1200)
https://iiif.wellcomecollection.org/pdf/b28147698
これの598ページから読んでみます。
第二十三講 慢性リウマチの一形態について
第二十三講 慢性リウマチの一形態について
概要
慢性リウマチ患者の病歴。— 手足の変形。— 肘の持続的屈曲。— これらの変形の解剖学的条件。— 骨の亜脱臼および脱臼。— 不可逆性の原因。— 線維組織および腱膜組織における病変の優位性。
この事例と、一般的な慢性リウマチの形態との比較。— 慢性の症状と急性発作の関連性。— 結節性リウマチにおける骨および関節病変。— こうした病変がない場合でも変形が生じる可能性。— 慢性リウマチの線維性形態と結節性形態の対比。
諸君、
サン=シャルル病棟の2号室の患者は、リウマチ体質の無限の影響力を示す恐るべき例である。この青年はまだ29歳であり、数年前までは健全で活力に満ちていた。ところが、現在は極度に衰弱し、顔色は青白く貧血状態にある。そして、たとえ心臓に深刻な病変がなく激しい運動を制限されることがなかったとしても、手足の持続的な変形のために、彼はすべての労働が不可能となっている。
29歳という若さで、この不幸な男は障害を抱え、生活の糧を得ることができない状況に陥っている。この悲惨な事例は、諸君にとって単なる事例として片付けてはならない。それは、すでに以前の講義で述べた重要な原則を深く心に刻むべき例なのだ。
線維性リウマチ(Forme fibreuse)
心膜炎について:リウマチの予後を考える際には、現在の発作だけでなく、将来にわたる病状の不確実性にも慎重に注意を払う必要がある。
今日私が取り上げる患者は、すでに6回の関節リウマチの発作を経験している。最初の4回は激しいものであり、最後の2回は長期間に及んだ。最初の2回は跡を残さずに治癒したが、3回目の発作では心内膜炎を伴い、強力な治療が必要だった。関節症状が消えた後も、この患者は動悸(心悸亢進)を訴え、運動時には息切れが増強するようになった。さらに、夕方になると足の浮腫が繰り返し発生した。心内膜炎が一部の心臓弁に持続的な変化をもたらし、器質的な心疾患が形成されたのである。
数か月後、患者は4回目の発作を経験し、これは4~5週間持続した。この時、心内膜の炎症(心内膜炎)が再燃した可能性が高い。胸部に吸い玉(カッピング)や水疱形成剤(ヴェシカント)が適用されたが、実際には以前の心内膜炎の残存所見と混同された可能性もある。
いずれにせよ、この時の関節症状は今回も完全に治癒し、変形や運動障害を残すことはなかった。しかし、心臓の病変は持続し、今日に至っても、心臓基部で二重の心雑音(ダブルサウンド)が聴取される。
https://iiif.wellcomecollection.org/pdf/b28147698
リウマチ熱のことから入ってました。ずっと読んでいくとSLEのジャクーがでてくると思います。
・duboisに戻りまして
・JAはSLE患者の10%から40%にみられる関節炎で、RAと同様に尺骨偏位、スワンネック、ブートニエール変形などの関節変形がみられます。RAとは違い歴史的にはSLEはびらんがない。
・SLEの⅓は病初期にJAを発症するが、その後ほとんどの患者は障害を残さない。
![](https://assets.st-note.com/img/1738161395-kGF627zjneA5WTRBvNlfPsr9.png?width=1200)
pearl: type1 インターフェロンは組織障害を保護し、損傷を減らす役割をはたす。このためSLEの関節炎はびらんが生じにくい。
comment: Another important facet of the homeostatic function of type I interferons is their capacity to protect tissue integrity and restrain damage.
SLEの関節炎、いわゆるジャクー関節症はなぜびらんがきにくいかは、duboisには書いていないから掘り下げてみる
・RAではTNF-αやIL-17が関節の線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)を活性化し、パンヌス形成を促す。
・SLE関節炎ではIFN-αがマクロファージを活性化するが、FLSの異常増殖は起こりにくい。このためパンヌス形成が乏しいのでコツびらんが生じにくい。
・さらに、IFN-αが破骨細胞(Osteoclast)を抑制する、という報告もある。RAではRANKL(Receptor activator of NF-κB ligand)を介して破骨細胞が活性化し、骨びらんを引き起こすが、SLEでは、IFN-αがRANKLを抑制し、破骨細胞の分化を阻害する。
とのこと。
Pearl: type1 インターフェロンは組織障害を保護し、損傷を減らす役割をはたす。このためSLEの関節炎はびらんが生じにくい。
comment:
Another important facet of the homeostatic function of type I interferons is their capacity to protect tissue integrity and restrain damage.
note: RAは滑膜炎で、膠原病は結合組織炎か?という議論について
・RAが滑膜炎はよし
・強皮症も滑膜炎はくるが結合組織が主なのでそうだろう
・皮膚筋炎も滑膜炎はきてもよいがメインは皮膚と筋肉なのでよし
・SLEはというとよくわからない。滑膜炎はあるが上の議論ようになぜか関節は守られて、炎症が周囲に及んでいく、とも考えられる。結合組織(腱鞘など)中心だからびらんが生じにくいジャクーだ、というとキレイではある。またoverlapを考慮すると筋炎も入ってくるので、またそれは複雑な議論展開になってくる。
Myth: SLEのリウマトイド因子は関節炎のリスク因子である
comment: A relevant role seems to be played by the autoantibodies directed against post-translational modified proteins: above all, a significant association has been observed with antibodies directed against citrullinated and carbamylated proteins. Conversely, the rheumatoid factor was not associated with this more aggressive SLE-related arthritis.
Rhupus ループス: びらん性関節炎の概念の再検討
・RhupusはSLE患者の一部にみられるびらん性対称性多発性関節炎であり、SLEとRAの両方の分類基準を満たすことがある。 SLEのみと比較すると、Rhupus患者はRAに類似した特徴的な臨床像を示す傾向があり、腎炎の発症が少ないなど、SLEに関連した特徴がより軽度である傾向がある。
・通常のSLEと比べてCRP、ESRは高い傾向あるが、これは通常のRAと同程度である。
・CeccarelliらのRhupusの検討
特に、シトルリン化蛋白やカルバミル化蛋白に対する抗体との有意な関連が観察された。 逆に、リウマトイド因子はSLE関連のより攻撃的な関節炎とは関連がなかった。
※リウマトイド因子についても、SLE患者の約20~30%で陽性となることが知られています。
SLE関節炎の治療
・ヒドロキシクロロキンとステロイド
・メトトレキサート、アザチオプリン、MMFなどのDMARDs
・TNF阻害薬は効くかもしれないが薬剤性ループスのリスクとなるため避けておく。
・tocilizumabを用いた小規模試験では、関節炎の症状を持つ7人の患者のうち4人に関節炎の完全な消失が見られた。
・リツキシマブのデータでは80%が関節炎がを改善させている。
・アバタセプトも効果ある。
・JAK阻害薬は効きそうであるが、データはこれから。
・ベリムマブは、関節炎、皮疹などの中等症SLEとして最初に適応が認可されているぐらいである程度効くと考えられる。
・Anifrolumabは52週間の第IIb相臨床試験の事後解析において、関節疾患活動性の指標全体で最大12%の患者で関節炎の改善を示した。
※実臨床では、ヒドロキシクロロキンとメトトレキサートでいって、短期的にステロイドを使う、という感じでしょうか。
2 ループス筋炎
Pearl: ループス筋炎はRNP抗体などに加えて、筋炎特異的抗体および筋炎関連抗体が患者の40%以上にみられることがある
comment: In addition to dsDNA and Smith and RNP autoantibodies, myositis-specific and myositis-associated antibodies can be present in more than 40% of patients.
・SLEにおける筋炎の有病率は、中国の成人患者1701人のコホートでは約2.6%、67%の白人患者を含むコホートでは、有病率は1%よりさらに低かった。
lupus筋炎のreview- Lupus. 2020;29(7):776-781
・筋炎の発症は、血液学的異常、脱毛症、光線過敏症などの皮膚学的特徴と関連している
・他に関連しているのは、補体低下、DNA抗体、RNP抗体、関節炎、漿膜炎などである。約30%の患者に血栓性イベントと妊娠に関連した罹患がある。
・dsDNA、SmithおよびRNP自己抗体に加え、筋炎特異的抗体および筋炎関連抗体が患者の40%以上にみられることがある。
・封入体筋炎の最大76%に見らるNT5C1Aに対する抗体は、この自己抗体のスクリーニングを受けたSLE患者の14%に認められましたが、これらの患者には臨床的に明らかな筋炎はなかった。
※ということで、概ね筋炎は、MCTDをはじめとしたoverlap syndromeのイメージ。
筋炎を合併したSLEのコホート
合計1718人がSLEと同定された(小児451人、成人1267人)。 そのうち108人が炎症性筋炎(6.3%)を合併した。
・強皮症の合併は48%にみられ、皮膚筋炎に特異的な発疹は3分の1にみられた。
・90%は関節痛と90%があった。
・ 血栓性イベントと妊娠に関連した重大な罹患率は患者の3分の1以上にみられた。
リンパ球減少、低補体血症、RNP陽性が最も一般的な検査所見であった。 筋炎特異抗体(MSA)と筋炎関連抗体(MAA)は患者の40%に認められた。 28例の筋生検報告から、非特異的変化、皮膚筋炎、多発性筋炎、壊死性自己免疫性ミオパチーを含む幅広い病理学的特徴が明らかになった。
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よく見ると、mi-2やMDA5の合併あり
・SLEの筋炎にたいする臨床試験はない。 メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ、免疫グロブリン静注などのDMARDsが使用されている。概ね炎症性筋疾患の標準治療を参考にすれば良い。
Pearl: 超稀に、眼窩筋炎が起こる
・眼窩筋炎は非常にまれな病態であり、多くの自己免疫疾患において起こりうる。
・発症は片側または両側で、疼痛や複視、眼外筋の1~2の筋力低下が考えられる。
・CKが上がらない症例もあり、造影MRIで診断をする。ほとんどの症例で生検は必要ない。
case: 45歳の女性患者は、右眼の痛み、眼球突出、外転制限を呈した。 眼窩コンピュータ断層撮影により、右外側直筋の肥厚が認められた。 他の全身症状はなかった。 炎症のバイオマーカーや疾患活動性の上昇はみられなかった。 彼女は高用量のステロイドで治療され、症状は急速に消失した。
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SLEにおける眼窩筋炎は文献上6例しか報告されていない
Myth: ヒドロキシクロロキンはクロロキンと比べてmyopathyのリスクは下がる
realitiy: Antimalarials are a mainstay in the treatment of SLE. However, chronic antimalarial use has been associated with the development of myopathy in SLE patients, with chloroquine and hydroxychloroquine having comparable risks at 3.3- vs. 3.1-fold.
SLEにおける薬剤性ミオパチー
・実際は同程度。長期の抗マラリア薬の使用はSLE患者のミオパチーの発症と関連しており、クロロキンとヒドロキシクロロキンのリスクは3.3倍対3.1倍で同等である。
・CK上昇は抗マラリア薬を使用しているSLE患者の最大30%にみられ、中央値7.3年間追跡した203人の患者のうち、49%に持続的な上昇がみられ、14.8%に間欠的な上昇がみられ、2.5%に臨床的に重要なミオパチーがみられた。
※つまり、CK上昇することはあるが問題になるミオパチーになることは稀である。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26585070/
・あと関連するのは、ステロイドミオパチー(CKは上がらない)、よくあるスタチン、心膜炎がきたときのコルヒチン。
3 Avascular necrosis 血管壊死
Pearl:SLEと骨壊死の関連についての最初の報告はDubois先生である
comment: The first reports of the association between SLE and AVN were published by Dubois and Cozen in 1960.
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![](https://assets.st-note.com/img/1738161837-ENgB6Ptd84oVa3FYC2ZwQkOG.png)
・SLEとAVNの関連についての最初の報告は、1960年にDuboisとCozenによって発表された。
・頻度としては全体として、SLE患者における症候性AVNの頻度は3%から40%と報告されており、小児や若年成人のSLE患者では頻度が高い。
・AVNは一般的に長骨の骨端、特に腰と膝に発症するが、肩、手首、足首にも発症することがある。
・大腿骨頭の前外側は、大きな機械的ストレスがかかる部位であり、機能的な側副動脈終末循環が十分に供給されていないため、虚血性損傷を特に受けやすい。
・SLEはAVN発症の独立した危険因子であり、そのなかでもステロイドの使用はSLEにおけるAVNの最も強い危険因子であるl
・ステロイドはどのような量や期間でも起こりうる。 プレドニゾンは1日10mg(投与期間中央値3.4年)という低用量でもAVNと関連しており、少なくとも2ヵ月間、60mg/日を超える量を投与するとAVNリスクは1.2倍に増加する。
Myth: 抗リン脂質抗体症候群は骨壊死のリスクとなる
reality: The presence of antiphospholipid antibodies is controversial risk factor for the development of AVN.
・抗リン脂質抗体の存在はAVN発症の危険因子として議論の的となっている。
・抗リン脂質症候群患者を対象としたある前向き研究では、大腿骨頭AVNが無症候性患者の20%、特に網様静脈炎を有する患者で検出された。 122 抗リン脂質抗体はAVNのあるSLE患者ではない患者より多いと報告されているが、他の研究ではAVNとグルココルチコイドの使用や血小板減少症との関連はより強固であると報告されている。
・MRIは90%を超える高い感度と特異度から、AVNを検出するためのゴールドスタンダードと考えられている。
・保存療法には、罹患関節への負荷軽減、可動域と筋力を改善する理学療法と組み合わせた歩行補助具の使用が含まれる。
4 骨粗鬆症
Pearl: 小児期発症のSLEは骨粗鬆症のリスクが高い
comment: There seems to be a higher risk of osteoporosis in childhood-onset SLE, which is likely related to the higher cumulative dose of systemic corticosteroids and failure to achieve normal peak bone mass during puberty.
・SLEの骨粗鬆症の有病率は4.0%から48.8%、骨減少症は1.4%から68.7%、骨折は5.0%から21.4%で、一般的に脚、足、腕、脊椎、股関節に起こる。
・小児期発症のSLEでは骨粗鬆症のリスクが高い。これはおそらく、ステロイドの累積投与量が多いことと、思春期に骨量が正常なピークに達しないことが関係していると考えられる。
・他のリスク要因としては、炎症、ステロイド、ビタミンD欠乏症、卵巣機能障害、甲状腺疾患の合併、抗けいれん薬などの薬剤などである。 以下はリスク因子の表。
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5 SLEにおける人工関節置換術
・関節炎や関節痛はSLEの主要な症状であり、患者の95%が罹患している。 30%までが無症候性、症候性の骨壊死をおこし、その多くは股関節である。
・過去50年間にSLEに対するより効果的な治療法が出現したため、死亡率は減少したが、寿命が長くなったため、関節炎、骨粗鬆症による骨折、AVNなどのSLEの生命を脅かさない合併症の症例が増加している。
・SLE患者が人工関節置換術を受ける最も一般的な関節は、股関節(人工関節置換術の62%)、膝関節(33.7%)、肩関節(4.3%)である。
MP, Mandl
LA. Arthroplasty rates are increased among US patients with systemic
lupus erythematosus: 1991-2005. J Rheumatol. 2014;41(5):867-874.
股関節・膝関節手術における薬剤マネージメントの推奨を最後に乗せておしまいにします。
2022 American College of Rheumatology/American Association of Hip and Knee Surgeons Guideline for the Perioperative Management of Antirheumatic Medication in Patients with Rheumatic Diseases Undergoing Elective Total Hip or Total Knee Arthroplasty
![](https://assets.st-note.com/img/1738161936-olBe5AywCLdUSbtpk8TD2MIi.png?width=1200)
Nonsevere SLEの定義:重症SLE未満の症状で現在治療を受けていない
以上です。関節炎の滑膜炎の病態がとても興味深かったのと、ジャクー先生の論文を見つけたのがとても印象的でした。