歴史上でも変わらぬ、他人に意見を実行してもらう困難さ。
個人的には、このテーマについて非常に苦い体験ばかりがありまして…。(笑)
とは言え、自分の体験談を書くつもりではありません。メインはあくまで歴史。特に分かりやすいところからピックアップしてみたいと思いマス。
まず、中国史ではあの三国志。一番著名な、失敗談ともいえる結末は
袁紹と田豊の関係
でしょうね。軍師であった田豊の悲劇については、まさか自分もリアルに俺はこれだわ…と思う時が来るとは思いもしませんでしたが。(苦笑)
田豊は袁紹の軍師として頭角を現していきます。軍師らしく全体を見ながら袁紹の北方統一に貢献。三国志演義においても、両輪の軍師として沮授と共に評価が高いようです。
ところが、袁紹の性格というのは良家の出身であるがゆえに
自分がどう見られているか
を気にする傾向があったようです。そのため、必要な決断や判断が自己の見せ方と衝突する場合、後者を選ぶ傾向にあった。結果的に、この間違いが曹操に足元をすくわれる結果となって現れます。
田豊は、そんな袁紹をいさめます。当時、北方を統一したとはいっても相次ぐ戦争によって疲弊していた。実力・名声ともにその時点で抜きんでていた袁紹が、無理に戦争を継続する必要性が薄れている。にもかかわらず、当時子分扱いから勢力を拡大してきた曹操が目障りになったようです。
袁紹からすれば、それまで自分の目下・子分扱いだった曹操が自分に近い実力を付け始めてきたことに穏やかならぬ気持だったのでしょう。自分が依然、圧倒的に上であることを示すべくつぶしにかかってしまった。
当時袁紹が手にした地域・人口から比べれば、曹操とはかなり差がある。元手に差があるのだから、それをさらに引き離すべく、田豊は内治に努めるべきだと。つまり、ギャンブルの様な行為をする必要はない、という事でしょう。
しかし、袁紹はメンツにこだわります。自分の子分扱いだった曹操が皇帝を保護しているのも面白くない。(自分が断ったのを棚に上げて。)そういう彼の心理を、読み取って迎合する家臣が出てくる。それと、田豊・沮授は対立してしまったのです。
相手は、袁紹の歓心を買うために彼らの中傷に走る。スナワチ、
彼らは自分たちが正しいと思いあがってあなたをないがしろにしてる
と言った中傷ですね。これは、袁紹が彼らに対して潜在的に思っていたこと。それも悪い意味で読み取られ、利用された。結果、強くいさめた田豊は投獄されてしまいます。
結果は、惨敗。これが有名な官渡の戦いです。そしてこの知らせを受けた人が、投獄されていた田豊に
これであなたの正しさが証明されたから、尊重されるでしょう
と祝福します。しかし、田豊は
コレで私は殺されることになった
と返す。なぜ?と問いかけるその人に田豊は
主君の思い通りになれば、ほれみたことか!と命までは取られない。だが、自分の言った通りになったなら、恥辱と嫉妬から自分を生かしてはおかないだろう
という理由を述べたのです。そして、彼の言葉の通りになってしまいました。
こうしたことに近い体験したせいか、私としても田豊に対する親近感がパネェことになりました。(苦笑)しかし、田豊にも欠点というか間違いがここである。それが、
選んだ主君を間違った
ことと、
相手の性格を見極めた上での身の処し方
であったでしょう。
ただし、田豊の身ぎれいな生き様が今に至るまで共感を呼び起こす点を考えたら、決して悪いことばかりではありません。同僚だった沮授も、袁紹に最後まで忠義を貫いて死んでいます。曹操から再三の誘いがあったにもかかわらず、です。
そして、日本。日本では、皇居である江戸城を作った人
太田道灌
がそれに該当するでしょう。
彼は、傾きかけた上杉家を立て直した。当時、上杉家は二つに大きく分裂していた。押され気味の主君の家を立て直させ、ライバルを凌ぐように持っていった。
しかし、次第に優秀過ぎる道灌が怖くなってしまったのでしょう。主君は中傷する家臣の言葉を信じ、もてなしを偽装して暗殺。その際道灌は
当方滅亡!
という言葉を残したとされます。
私が文献を見る限り、双方に問題があったと思います。まず、主君側はありがちな
相手が優秀な分、足元すくわれるんじゃ・・・
という気持ちになってしまった。で、そこを蹴落としたい連中に付け込まれた。これは人間の歴史において、いつも変わらないパターンなんですよね。(苦笑)
そして、道灌の方にも問題はあった。これは私にも言えたことでしょうが
受け手の不安を理解する
事が欠けていた点。だから、テキパキと仕事をこなす方ばかり目を向けた。これ、優秀な人にありがちなことじゃないかな?と思いますね…。
こうしたことからも、人に意見を言う事も、採用・実行されることも非常に困難なことだと分るのです。私は歴史を読んでいたため、そのことは知ってはいました。が、実際にやってみても同じ結果になってしまった。
皆さんはこのような事実を読んで、どう思われましたか?自分が採用する側であった時や、逆の時。この内容を読んで、次からは是非とも最低限、採用する側の時には受け入れ、実行できる判断力と決断力を培ってほしいなと切に願う次第です。
いぢょー。