R-1グランプリ2024を観て思ったこと

僕らお笑い好きの夢がひとつ叶ったといってもいい、今年のR-1グランプリの感想を書きます。



【観る前に思ったこと】

今年のR-1は、何といっても芸歴制限が撤廃されたってのがめちゃくちゃ大きいですよね。
突然の芸歴10年ルールの制定から3年、そろそろR-1はそういう大会なんだと定着しはじめてきた頃ではあったので、こんな根本的なルールがコロコロ変わってしまうのはどうなんやって思うところも若干あるものの、個人的にはそもそも芸歴制限いらん派ではあったので、嬉しいほうが大きいです。実際ルール変更最初の年っていうのもあって、決勝常連組などのかつてのR-1戦士やビッグネームのエントリーが見受けられ、エントリー数は過去最多を叩き出し、それに連動してか1回戦の合格率の圧倒的低さにより大多数がバッサリ削られていく様が、今年のR-1の異様な盛り上がりを表していて、序盤からかなりのワクワクがありました。
そんな熾烈すぎる予選も、準々決勝・準決勝までくると流石に強者ばかりが揃い踏み、決勝はこれぞ今のピン芸No.1を決めるに相応しい顔ぶれとなり、ワクワクは更に高まりました。常連組、復活組、初決勝組どれもみんな激アツでしたが、僕的にはやはり、面白すぎるが故にR-1では見られないと思ってしまってた街裏ぴんくさん、まさかのアマチュアで大喜利界隈でもいらっしゃるどくさいスイッチ企画さん、たまたま観に行った準決でおそろしく心を掴まれたトンツカタンお抹茶、この3人のお笑いが、決勝で、全国ネットのゴールデンで観られるというのが、それだけで充分夢のようで最高潮にワクワクさせられました。
今年のR-1決勝、過去イチといっていいくらいめちゃくちゃ楽しみになりました。


【FIRST STAGE】

  真輝志

めっちゃ面白かったし良く出来たネタだったと思います。
サクセスストーリーのはじまりを思い起こさせるナレーションという丁度いいあるあるなフォーマットと内容の裏切り、そこにいろんなパターンがあって、良い意味でわかりやすく、でもベタで終わらない展開もいろいろあってずっと飽きずに笑えました。自分に対するナレーションのバリエーションだけじゃなくて、別の登場人物にはちゃんとしたナレーションがつくみたいな幅の広げ方もよかったですし、あと毎回入る「ほなええわ!」のフレーズも気持ちよくてネタの強度を上げてて、ピンネタとしてめっちゃ良い仕上がりになってました。
ただ、個人的にひとつ言うとしたら、ネタ中出てきた「軟式ラグビー」について、これは最初“無いスポーツ”っていうボケだと思ったんですが、ネタの最後でラグビーをはじめるような描写があって、結局それがボケなのかどうかが曖昧になってた気がして、それがちょっと意図がはっきりせずノイズになってしまったかなぁと、僕の邪な見方ですが思ってしまいました。僕的にここだけ僅かに引っ掛かってしまったんですけど、全体的にはめっちゃ面白くて良いネタでしたし、褒めにならないかもですが最高のトップバッターだったと思います。

  ルシファー吉岡

めちゃくちゃ面白かった!1人コントとしての完成形を見た気がします。
コントとしてネタの脚本・流れがしっかり面白いのは勿論、その見せ方というか、これを1人で演じ切る本人の演技力が素晴らしすぎて、自分自身の演技もそうだし、自分以外の登場人物のセリフや挙動をナレーションや音響に頼ることなく、でも状況説明のセリフを一切使わずというかちゃんと自分のセリフとして違和感なく状況説明ができるようなセリフ回しで、完成度エグ高かったです。登場人物の数こそ多めだけど、これは複数人でやるより1人だからこそ面白さが際立つコントだと思うし、でも実際1人でしっかり見せるところまで持っていくのは相当難しいはずで、それをしっかり1人で笑いどころを取りこぼすことなく表現しきっていて、圧巻でしたね。
僕はこのネタを準々決勝でも準決勝でも観たので3回目でしたが、どう展開するのかばっちり知ってても全然まだまだ声出して笑えて、こういうちゃんと筋のあるコントで何度見ても笑えるって、めちゃくちゃ凄いネタなんだなぁと痛感しました。

ルシファーさんは今年の決勝メンバーの中でたしか唯一くらいの芸歴制限以前のR-1決勝経験者、しかも常連メンバーだったというレジェンド級のR-1戦士ですが、2番手という決して良くはない出順にして堂々の1位通過、流石すぎたし全く文句なしの最高の仕上がりでした。

  街裏ぴんく

間違いなく面白すぎるのは言うまでもなく、もう本当に、評価されたことが何よりもめちゃくちゃ嬉しいです。本当にありがとうございます。
こればっかりは誰が何と言おうと、この人の漫談がとんでもなく面白すぎることは僕の中で一切揺るがないので、それこそ完全にネタ選びを間違えるとか、思いっきりネタ飛ばすとか、事故レベルのミスとかそういうのがない限り、内容にあれこれ言及できることはなく、あとはどう評価されるかだけの話だと思ってました。そういう意味では、これはミスとかではなく不可抗力かと思いますが、やはり今年からネタ時間増えたとはいえ、4分という決して本意気を出せる尺じゃないところで、特に1本目はちょっと言葉数多くて間が詰まってたかもっていう感覚はどうしてもあって、そこがどういう印象を持たれるかっていうのが気がかりでしたが、審査員軒並み高評価で2位通過となり、本当に嬉しかったです。

この石川啄木のネタ、僕の中ではかつて独演会で観た、それこそyoutubeにあがってるのがオリジナル版という印象で、それとは後半の展開が違っていて個人的にはオリジナル板のほうが好みだったりします(そちらも是非観てほしいです)が、賞レース用の4分ネタに作り変えるとして「偉人が集まる」という方向はわかりやすくて良い改変だと思いました。あと、何より僕は、ビート板という無機物と会話をするキュリー夫人が「聞き役」というボケがえげつない角度だと思っていてめちゃくちゃ好きで、元々別のネタ(僕が観たのは『日本刀』のネタ)にあったくだりで、それをこの大勝負のネタに組み込んできたっていう集大成感もエモくて、これを決勝のテレビで聞けたのが最高でした。

とにかくもう1回言うけど、面白すぎるのは間違いない街裏ぴんくが、本当に決勝に来てめちゃくちゃ高評価で勝ち進んだという事実が、僕は何よりも嬉しかったです。マジでこの事実が生まれただけで今年のR-1は最高の大会になったと思っています。

  kento fukaya

めちゃくちゃ面白かったです。めっちゃ笑いました。
マッチングアプリを題材に、マッチング相手のプロフィールとか写真でひたすらボケていくというのを軸として、そこにそれらのマッチング候補者が実際にマップ画面上をうろついたりしてるっていう見せ方も新しくてかなり引き良い感じになってたと思いました。勿論軸となってるプロフィールボケも手数多めで面白いのいっぱいあったので、個人的にkfのネタの感じが昔からずっと好きっていうのもあるけど、「Facebooker」とか「腕組みソムリエ」みたいな、この辺の細かいニュアンスが個人的にかなりくすぐられる感じで、笑っちゃいますね。
ただ、どうしてもベースがフリップネタ的というか並列的なネタではある以上、今の審査員全員にバチッとハマるには、ネタの構造としての大きな展開、仕掛けめいたものがないと厳しそうで、そういう意味ではマップの見せ方はもっと良い方向に転がりそうなポテンシャルはありそうだったんですが、ネタとしてはちょっとした遊び的な要素に留まってしまってたので、こういう新しい要素からもっと大胆な見せ方があってもよかったのかもしれないですね。充分面白くはあったんですが。

kento fukayaも実は芸歴制限撤廃による復活組なので、今後R-1とどういう向き合い方をしていくのかわかりませんが、この春東京進出もするし、ピンとして面白くて良い感性をもってる人だと僕は思うので、引き続き挑戦するなら今後とも期待したいですね。

  寺田寛明

今年の寺田さんもマジで面白すぎた…言葉の意味というフリップネタの基本中の基本みたいなテーマで、まだこんだけ面白いネタが作れるんですね…
構造としては言葉の意味を材料としたyoutubeとかのネット上のコメントあるあるという感じで、昨年のレビューのネタと同系統ではありますが、やっぱり言葉の意味に対するアプローチとコメントのあるあるの温度感が本当に絶妙で、言葉のチョイスもちょうどいい距離感の難しさだし、コメントの言い回しの解像度も抜群だし、出てくるあるあるはちょうどまだ手垢のついてないラインという感じだし、文句なしの面白さでした。「着物を着るタイプのオタク」とか、「昨年よりやや難化」とか、この感じめっちゃよかったです。あと「あんたんたるおもい🥺」はマジでよく見つけたなぁという、ホンマにそういうスレが立ってそうな一連の流れで、最高でしたね。
この完璧に近いネタで唯一隙というか穴があるとすれば、コメント欄の雰囲気がちょうど審査員以上の年齢層に伝わるかどうかという点で、でも今の審査員もだいたい皆youtubeやってたりしてこの辺の感覚鈍い人いないからいけるかもって思ったけど、それとは別にやっぱりバカリズムとかザコシとか、フリップ的並列的なネタ、人間味が表に出てこないネタに厳しい審査員を唸らせるまでには至らず、残念極まりないです。
ここまで特定の審査員に阻まれると最早根比べみたいな領域にいってそうなんですが、僕の本当個人的な思いとしては、寺田さんにはヘンに迎合せずに今の寺田さんならではの路線で面白い強いネタで決勝に出続け、今の審査員全員を参ったと言わせるくらい大勝ちしてほしいですね。勿論言われなくてもそのつもりで毎年この路線でネタを進化させ続け圧倒的なウケ量で決勝に戻ってきてると思うので、R-1に挑戦され続ける限り、信じたいところです。

本当に来年こそは、決勝で晴れやかに審査コメントを聞く寺田さんを観たいですね。

  サツマカワRPG

めちゃくちゃ面白かった!サツマカワさんらしい狂気が一貫して漂いつつ、その怖面白いテイストだけじゃない、お笑い的にしっかり強いくだりがいっぱいあって、めちゃくちゃ良く出来た面白すぎネタだったと思います。
最初の掴み的に怖いボケにカツラとるっていうここがピークのショートネタみたいなトップスピードから、実は防犯ブザーの子ども向け講習だったっていう設定はかなりオリジナリティー高いと思うし、その設定のバラしが終わってからも、SASUKEの最後の効果音とか、肉声が面白くないとか、他人のために鳴らせるとかSASUKEって自分のためでしかないとか、ここの一連はパンチライン級のくだり連発でマジでずっと凄すぎましたね。ほんで最後にホラーテイストのオチながらただホラーに逃げただけじゃない肉声ブザーの回収とかも完璧で、最初から最後までずっと見応え抜群の強すぎ面白すぎネタでした。

これはもう結果ありきの僕の素人的邪推でしかないんですが、サツマカワさんのこの凄すぎるネタとか、それこそ先の寺田さんkfのネタとかが全然良く出来てるのにそこまで点数伸び切らないのは、序盤にルシファー吉岡と街裏ぴんくっていう、コントと漫談と、演じるお笑いと素の自分でやるお笑いの両面で完璧すぎるパフォーマンスがもう出てしまったから、後どれだけ面白くてもそこまでも高い点数をつけにくいっていう流れになっていった気がします。個人的にサツマカワさんのこのネタはその空気を打破するポテンシャルは充分あったようには思うものの、順番的にまだちょっと早かったかもしれないです。もしもう1~2番出順遅かったら、打破できてたかもしれないですね。
まぁ正直全然わかんないですけど。でもとにかく僕的には、全然決勝下位で終わるとは思えないくらい、凄面白いネタだったと思っています。

  吉住

めちゃくちゃ面白いし、まだこんな設定あったんだって思いました。
キャラとしてデモ活動する人を採用するってのもあんま見たことなくて面白いし、それが結婚相手の親に挨拶に行くっていうデモ活動のオフの状態のシチュエーションでやるのもだいぶ新しいし面白いし、決勝常連でめちゃくちゃ実績あるとはいえこの若さこの芸歴でこんな設定のコントが堂々とできるのが、まず凄すぎると思いました。
設定だけでだいぶ強いですが当然中身も面白すぎて、個人的にはデモ活動するキャラの掘り下げ方として、「デモジャンキー」というフレーズが出てきたように、主義主張の内容じゃなくただただ過激な活動をすることに喜びを感じてるという方向に行き切ってるのが、お笑いとして最高だと思いました。デモ活動をするような人の思考とか内面を表現するんじゃなくて、火炎瓶とかデカい声とか、デモのフィジカルの部分をフィーチャーしてデフォルメしてるから、そんな奴実際おらんねんていう、面白いフィクションとしてめっちゃ笑える感じになっててめちゃよかったです。これでも炎上してまうんやから、世間にまだお笑いの見方が伝わってないというか、まだお笑いを軽視してる層が一定数いるんやなぁて、思いますねぇ。

さっきサツマカワさんのところで、ルシファーさん街ぴんさんにそれぞれピン芸としての最高到達点のようなものを見せられた後で点数が伸びきらない感じになってると言いましたが、その空気を打破したのは、7番手の吉住でしたね。順番的にそろそろいかないとというところではありましたが、ここでうまいことこの吉住のめちゃくちゃ強いネタがバッチリハマった感じがあったかと思います。マジで面白かったから当然とはいえ、マジで吉住が凄すぎる…

  トンツカタンお抹茶

ホンマにおもろすぎる…マジでしぬほど笑った…
決勝の結果だけを見れば最下位だしその後ちょっとゴタついてまさかの動画非公開になってしまってはいるけど、そんなことは関係なく、決勝の舞台でこの『かりんとうの車』が披露され、多くの人の目に触れることになったという事実が、本当に最高だと思えるくらい、僕は準々決勝で一目見たときからがっしり心を掴まれていました。
勿論何回見ても面白いし見れば見るほど細部に面白さを発見できるという良さもあるんですが、やっぱり初見の衝撃がえげつなかったっすね… 毎年賞レースの予選とかでいっぱいお笑いを観てると、面白いネタは山のようにあるんですが中でもごく稀に、ただ面白いだけじゃなくてどうしても笑うのを制御できなくて、最初のボケから最後の終わり際までずっと笑い続けてしまうっていう、化け物級のネタに出会うことがあるんですが、そんな毎回味わえるわけではない最高の体験が、まさか今年のR-1で、トンツカタンお抹茶で起こるとは…

マジでおもしろポイントはいっぱいあるんですけど、僕はやっぱり、そもそも「かりんとうの車」「かりんとうの老舗が作った車」という概念が何よりもまずおもろすぎて、ファンタジーでメルヘンなんだけど、かりんとうっていう決して洒落たスイーツではなくて、でも美味しくて昔から愛される和菓子っていうノスタルジックさ、それで車を作るっていうそもそものアイデアの起点が、おもろすぎて好きすぎて、ほんでそれをオリジナルソング(音源としては自作じゃなくて何ならその使い方に問題はあったけど、一応歌詞に軸を置いてオリジナルソングとさせてもらいます)に乗せて歌うというネタ、めちゃめちゃ何やねんこれではあるけど、マジで最初は歌ってる間ずっと声出して席からずれ落ちそうになるくらい笑い転げましたね。
あと、それこそ審査コメントでは出オチ的な扱いだったけど、2番終わりで他のかりんとうの車が出てきてこれ流通してるんやって判明したり、スピード出し過ぎの車はかりんとうじゃないんやと思ったらずっと見てたかりんとうの車が実は覆面パトカーだったり、終盤どんどんかりんとうの車のある世界が広がっていくことにめっちゃワクワクできたし、最後雨降ってきたところで路肩停めて敬礼するのもオチとしてめっちゃキレイだし、決してただの出オチ、1アイデアで押し切るだけじゃない、意外と隙のない構成だったと思うので、僕は全然1位通過あり得ると思ってました。まぁでも最初に言ったように、結果以上にこれが決勝のテレビで放送されたことで、多くの人の心に、決して点数では計れない楽しい気持ちを授けられたと思うので、マジでよかったです。

すみませんもうここでしか語る余地がないのでまだかりんとうの車の話を続けるんですけど、何回も観て聴いてるといろんなおもしろポイントが発見されて、それこそ運転中のお抹茶の何とも言えない悦の表情とか、何でお抹茶がコーラス側を歌ってんのとか、気になるところだらけなんですけど、僕がだいぶ後になって気づいた凄いことがあって、このかりんとうの車は、完成に5年を費やし、そのうち味に3年かけて作ったというのは、歌詞にあるとおりなんですが、そもそもかりんとうの老舗だったら昔から受け継がれた伝統の味があるはずで、それなのにかりんとうの車の味の開発に3年かけたということは、既存の商品とは違う味、かりんとうの車ならではの味を新たに発明したということで、この事実に気づいたときは流石に震えましたね… ただ車を作ることだけが目的だったら味は既存のものの使い回しで全然いいはずなのに、敢えて車用の味を新たに仕上げようというのが、ただの普通自動車を作れればいいじゃなくて、あくまでも『かりんとうの車』を作ることにこだわっていた姿勢の表れだと思うので、それを考えた上で、ファミリーカーとか、パトカーに採用されるところまで流通している現状、めちゃくちゃ感慨深いです。
あと車のナンバー「26-78」は特に何かしらのかりんとう関連の語呂合わせとかじゃなく、お抹茶のエントリーナンバーになってるのも僕は好きです。

かりんとうの車、めちゃくちゃキャッチーで大味のお笑いでありながら、噛めば噛むほど味わい深くもある、ものすごいビッグコンテンツでした。こんな最高のお笑いを生み出してくれたトンツカタンお抹茶さん、本当にありがとうございます。新しい音源がどこまで馴染んでくれるかというのはあるけど、早く問題がクリアになった、キレイなかりんとうの車が公然と見られる日が来ることを、願っています。

  どくさいスイッチ企画

マジでめちゃくちゃ面白くて、とてもアマチュアとは思えない、もの凄い1人コントでした。
アマチュアで決勝まで来るって、普通に考えたらめっちゃキャラクターが強いとか、素人っぽさが逆にウケてみたいな感じが想像できるところだと思いますが、どくさいさんの凄いのは何よりスタイルがしっかり脚本の面白さがベースにあるストロングスタイル1人コントっていう、がっつりプロと同じ土俵で勝負しているところで、それで予選爆ウケで決勝に来て、決勝でも他の出場者と全然遜色ないクオリティーでしっかりウケで4位タイなんだから、マジで凄すぎるってレベルじゃないです。
アマチュアなのにという視点を排除して感想を述べると、僕はこのネタの見せ方の部分が結構肝なんじゃないかと思いました。ツチノコを発見してからの主人公の人生をかなりハイスピードで捲し立てて演じていくっていう見せ方は、セリフも早口だし目まぐるしく時系列が進んでいくので観る側がついていくの一見大変そうなんですが、ちゃんと強弱もあるし展開自体はわかりやすいので全然ついていけるし、寧ろこのテンポ感が良い具合で細かいところを気にさせずに内容の面白さを増幅させて何かずっと笑えるっていう空気感のネタになってて、僕の中ではこの慌ただしさがクセになる感じでめっちゃよかったです。一方、敢えて惜しいかなと思った点を挙げるとすれば、このネタオチも綺麗なんですが、終盤そのオチにスムーズに向かうあまりちょっと予定調和感が出てしまったかなぁって、マジで偉そうにどの口が言ってんねんですが、そこの終盤でちょっとでも予想外の面白さがあれば、全然もっと上いけたと思います。そんなことまで言いたくなるくらい、プロの一流レベルの1人コントだったと思っています。

本当にもう何回でも言うけどマジでめちゃくちゃ凄すぎます。本当に凄い良いものを見せていただけました。全然顔見知り程度なのに勝手に知ってるアピールさせてもらいますが、今後きっとご一緒する場がありそうな気配はしているので、是非関東の何かしらの場で、よろしくお願い申し上げます。


【FIRST STAGEが終わって】

何と言っても芸歴10年超えのベテラン勢が戻ってきた初年度で、めちゃくちゃレベル高い大会になることは予選の時点からわかってはいましたが、やはりトップバッターからめっちゃ面白くて、観る側はずっと最高でしたが審査はかなり難しそうではありましたね。しかも結果的に1位2位でFinalに進出することになるルシファーさん街ぴんさんが2番手3番手っていう早い順番で出たっていうので、序盤から高得点が叩き出されこの2人はもう確定で勝ち残り、あとの1枠を後続の出場者で奪い合うみたいな構図になっていったような気がして、だから各組の感想でも触れたけど面白いのに点が伸びないっていう現象も正直あったように思うし、そのレベル高いが故の中盤以降の閉塞感を見事に打破した吉住はマジで凄すぎます。全然お抹茶が打破するifもあったはずなんですが、まぁ実際の結果はこれはこれで美味しいに転換できるネタでもあるので、それはそれで最高でした。


【FINAL STAGE】

  吉住

2本目もめちゃくちゃ良い設定で面白かったですが、個人的な好みとしては1本目のほうが想像を超えた面白さだった分、ちょっと小さくまとまった感じに見えてしまいました。
鑑識が訪れた事件現場がたまたま彼氏の職場だったっていう設定自体は他で見たことない感じでめちゃよかったんですが、そこからの彼氏とイチャつく感じとか、浮気が発覚して態度がガラッと変わる感じとか、個人的にはこの設定から想像できる範疇は超えてなかったように思えて、ちょっと冷静に観てたらそのまま終わっていった感覚はありましたね。僕的には1本目のデモのネタのほうが、そもそもの設定の新しさに加えて、デモというそれだけで濃いジャンルを、現実離れしたところまでお笑い的に昇華させてたのが見事に想像を超えていたので、そこと比べても、また、ファンタジーという意味で突き抜けてる街ぴんさんと比べても、相対的に上回ることはなかったかと思いました。
なので最終審査で接戦になったのは正直ちょい意外でしたが、発想を飛ばすファンタジーの面白さか、「ありそう」を追求するリアリティーの面白さか、どっちに重きを置くかで拮抗したのかなぁと、結果論ですがそう感じました。

吉住が今実際どれくらい売れっ子なのか把握できてるわけではないですが、事前番組とか観る限り今年の決勝メンバーではいちばん売れてるというかメディア露出が多そうで、何より芸歴最年少なのにそうっていうのが凄すぎるんですが、それでもR-1に挑戦して、出ればほぼ確実に優勝争いに食い込むっていうのはマジでえげつないので、ピン芸人としてしっかりネタで評価、はもう充分されてるけど、優勝という結果が伴うべき実力なので、早く結果が追いついてくれたらと思います。

  街裏ぴんく

2本目もめちゃくちゃ面白すぎた!!最高に街裏ぴんくで最高すぎました…
個人的には1本目は、後半石川啄木以外の偉人が、ジャンル問わず出てくるところでちょっとゴチャついた感じがあって、そのゴチャつきが刺さる範囲を広げた可能性もあるので全然悪い構成ではないんですが、2本目のほうが、モーニング娘。の初期メンバーやったっていう、お話として1本の軸をたどっていく展開だったので、より聞きやすくて、ストーリーとして入ってきやすい分、飛び込んでくるボケがどれも想像を遥かに超えるものばかりで、常人にはない発想力をがっつり受けとめさせられるネタだったんじゃないかなぁと思いました。実際2本目のほうがウケてたように思うし、それは単純に2回目の街裏ぴんくでどういう芸風か客席もわかった上で観てたっていうのもあったかもしれないけど、いずれにせよ、他の2人と比べて2本目で更に勢いが増した感があったように思えて、ここまできたら優勝しかないと思いました。まぁ僕はリアタイしてないので結果は先知ってたんですけど。
あと個人的に2本目のよかった点として、たとえば街ぴんさん自身が「八っちゃん」と呼ばれてることとかPopteenの専属モデルやってたことを当然の事実として説明なしに流したり、悦夫・越・嗚咽先生にスカウトされたときに「Dreaming, dreaming」て答えるみたいな、街ぴんさん自身が単にこの異質な世界に巻き込まれたんじゃなくて自分からも入り込んでたっていう感じがより強くあって、僕はこの感じが街裏ぴんくの漫談の魅力のひとつだと思ってるので、この感じが見てとれたのもよかったです。ボケ単位でいうと、終盤に出てきた、椎間板が粉砕骨折したときの破裂音が「元からエコーかかってた」てのがまたえげつない角度で、1本目にあった「聞き役やったんですよ」と同じくらい、これだけで発想力に打ちのめされるレベルで最高すぎました。こんなボケできる人、優勝しか相応しくないです。ここでもう言うてまうけど、本当に優勝おめでとうございます。

因みにこの2本目、僕は漫談としては初めて観たんですが話自体はPodcastの『虚史平成』で聴いてたので、このPodcastから本ネタに仕上がったんやっていうのも嬉しかったです。『虚史平成』、街裏ぴんく全開のPodcastで面白すぎるので是非聴いてください。

  ルシファー吉岡

2本目も勿論面白くはあったんですが、1本目があまりにも1人コントとして完璧な仕上がりだと感じられたが故に、どうしてもそこと比べると小さくまとまってた感じはあったように思います。
アパートの壁が薄くて隣りの部屋のことが筒抜けすぎるが故に干渉してしまうという、ざっくり概要はこうだったかと思いますが、これでほぼ説明完結できてしまう感じでは正直あって、勿論細かいやりとりとか、登場人物のキャラとか、細々と笑えるところが随所に散りばめられてて面白いことは面白いんですが、もっと想像を超えた展開が広がっていったら、もっと優勝争いに食い込めたんじゃないかなぁと思っちゃいました。あんまり展開展開言い過ぎるのも安直な審査基準に囚われてるだけなのでよくないとは思いつつ、でもやっぱり、観る側としてこの設定だとこういう感じで話が進んでいくんやろうなぁとぼんやり想像して、それを超えてくる面白さの展開が待ってたときってめちゃくちゃ笑えるしワクワクできるし、どうしてもそういうのを期待しちゃうので、そういう意味では惜しかったなぁという感想になりますね。

ルシファーさんは今年の決勝メンバーで唯一、芸歴制限以前のR-1決勝の常連で、芸歴制限撤廃により見事に決勝の舞台に戻ってきて、それが叶わなかった旧R-1戦士も多数いる中、圧倒的な力で決勝1本目も1位通過という堂々とした立ち回りで、やはりルール改正初年度は経験値の差を見せつけられるのかと思いましたが、惜しくも、というか単純にもっと溜め込んで溜め込んできた面白い人が報われる年だったってことで、残念ですが今年は仕方ないっすね。
それこそ今年ルシファーさんが全然下ネタやらなかったのは、そういう戦略だったのかどうか、全然わかってないですが、来年こそは、これぞルシファー吉岡な変態系のネタでも、今年みたいに下ネタだけじゃない面白さを見せてくれてもいいので、またバチバチに仕上げた1人コントで、返り咲いてほしいですね。


【観た後に思ったこと】

本当に何回も言ってしまうんですけど、まさか街裏ぴんくさんが優勝するなんて!こんなにも予想できない結果が出て、こんなにも嬉しいことは、これまでもなかったことだし、もしかしたらもう二度とないかもしれない……マジでそれくらい、本当に夢のような最高の結果だし、本当に街裏ぴんくがR-1で優勝することはないと思ってました……

僕が街裏ぴんくさんの優勝を予想できなかったのは、普通に考えたらロジックとしては破綻してるんですけど、「面白すぎるから」なんです。この人の漫談は唯一無二の面白さが突き抜けていて、個人的な推しとかそういうのに限らず、ピンの中で、芸人の中で、とにかくネタが面白すぎる存在として真っ先に挙がって然るべき、個人的にはお笑いのネタというジャンルでは現役プレイヤーの中でも別格の人と思ってました。それ故に、R-1グランプリのような、既存の賞レース、老若男女を広く対象とした全国放送のテレビの大会では、枠に収まりきらず、結果としての勝利があてはまることは難しいと考えていました。なので僕は、決勝までは予選の雰囲気次第では無くはないと思ってたから、決勝まで来てくれさえすれば、そこで観た人の心に1人でも多く衝撃を与えてくれたら、それこそ地方とかでまだ東京のお笑いの最先端に触れることが叶わない、でも感度は高く未知のエンタメに飢えてる思春期の若者たちにぶっ刺さってくれたら、これからの日本がまた一段と明るいものになってくれるだろうという期待だけを抱いて、結果までを求めるのは欲張りすぎだと考えていました。

それがまさかの!優勝!まさか一番の結果がついてくるなんて、僕は想像できなかったけど、これは僕の想像力が足りてなかっただけで、本当に一番正しい結果が実現したと思うし、マジで心の底から嬉しすぎます。お笑いなんて不確実の極みみたいな概念においては、結果が全てではないし結果だけで議論するのは不純だとは思ってるけど、優勝という最高の結果を出して然るべき方にその結果がもたらされた以上は、その結果は素直に賞賛されるべきだし、本当に夢があるというか、夢が現実になりましたね。

今年のR-1、芸歴制限撤廃により新たに生まれ変わったといっていい、新生R-1グランプリが、街裏ぴんく優勝というとんでもない結果を生み出しました。これは本当に凄いことですし、これからのR-1がますます目が離せない大会になることでしょう。

という感じで、街裏ぴんく優勝という最高の結果が出た今年のR-1グランプリは最高の大会になった。ということですんなり終わればいいんですが、よせばいいのに当日から暫くXのトレンドに入る「R-1」「街裏ぴんく」関連のワードをタップすると、めちゃめちゃ嫌な感想が次々出てきて、本当情けなくなってくるというか、またちょっと意味は違うけど吉住の感想のところでも書いたように、世の中お笑いというものを軽視しすぎてる人ってまだこんなにもおんねやって、正直ちょっとショックでしたね。そもそも今の時代にわざわざテレビをつけてR-1を観ようと思うレベルに、お笑いを観ることに少なくとも後ろ向きではない層が、ただただ自分がついていけなかっただけで、自分がいろいろ足りてない可能性は棚に上げて結果、大会、芸人が悪いみたいに文句言うって、こんなに素晴らしい日本のお笑いがまだ世間にはこんなにも舐められてしまうんやって、正直めちゃくちゃ悔しくなりました。マジでネット上のそんなん見やんかったらええのに、もしかしたら絶賛コメントの嵐かと思ってちょっとでも期待した自分がアホでした。いやでも何で優勝してんのにまだ世間に認められてない前提で、こっちが肩身狭いままでおらなアカンねんとは思いますけど、事実そうなんやったら、今はまだ仕方ないですね。
世間がアホという意味では時間が経ったら昔叩いてたんすら忘れて急に手のひら返しで賞賛する流れに変わっていくというアホさもあるので、きっと何年後かに、本当に時代が街裏ぴんくに追いつくときがくるのを、楽しみに待っときたいと思います。

ただ、じっと待ってるのも勿体ないので、最後に、R-1で見せたような競技仕様じゃない、街裏ぴんくの個人的大好き漫談を、公式youtubeにあがってる動画の中から幾つかピックアップして紹介させていただきたいと思います。ここまで読んでくれるアンチは残念ながらいないと思いますが、これから紹介する動画、もしくはそれを起点として関連動画やチャンネルから自分で見つけた別の動画から、少しでも、街裏ぴんくのえげつない面白さを目の当たりにしていただけたら、こんなにも幸せなことはないです。


【僕的オススメ街裏ぴんく漫談 7選】

本当は5選くらいが多すぎず少なすぎずでいいかなと思ったんですが、どうしても絞りきれず、でも10まではいくと流石にしんどいかと思い、何とか7選まで絞りました。

教習ビデオ


増量


Kinki Kids


到着アナウンス


夢のTV出演


床穴


図工


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