2023年3月①

季節もいよいよ春めいてきて、もう上着を着ることもなくなってきた頃かと思います。

上着に関して、この冬は個人的にちょっとした攻防がありまして、あまりにも個人的すぎる話なんですがここで書き残しておきたいと思います。

職場に行くと、共用で上着を掛けておくスペースがあり、各フロアだいたい2ヶ所あって皆席から近い方を使うという感じなんですが、情勢によりテレワークが増えたことに伴う諸々の都合で、今年度そのスペースが狭められ、これまで共用で掛けられていたハンガーも少なくなるという措置が施されました。それ自体は代わりに打合せスペースが広くなったりしていることもあり別に問題ないんですが、上着掛けスペースとともにハンガーが削減されたことで、僕がそれまで使っていたオレンジのハンガーがなくなってしまいました。

僕が使っていたと言っても全然僕の私物ではなく、あくまで共用の備品としてあったもののひとつをさも自分のかのように抱え込んで使っていたという感じのやつなので、そもそも他の共用のハンガーを使えばいい話で、それがなくなったからといって僕は何にも言えないです。でも、ずっとオレンジのハンガーを使っていて、しかも弊フロアでは元々オレンジが品薄色だったので、自然と愛着が生まれており、レイアウト変更後にオレンジのハンガーを見つけられなかったときは結構ショックでした。

ただ、そこで僕はすぐに、同じフロアに上着掛けスペースが2ヶ所あることを思い出し、その場では一旦何事もないように適当にその場にあるハンガーを使わせてもらった上で、帰るタイミングで人が全然いないときにもう一方の上着掛けスペースを見に行くと、そっちの方にはオレンジのハンガーがまだ残っていました。このときはとても嬉しかったです。
そして僕は、少し迷って、僕がいつも使ってる方の上着掛けスペースからひとつハンガーを持ち出し、もう片方にあったオレンジのハンガーとこっそり入れ替えて使わせてもらうことにしました。何度も言いますが個人の所有物ではない共用の備品なので、本来そんな抱え込むようなことをするものじゃないし、わざわざ入れ替えなくても、普通にオレンジのハンガーをただ移動させるか、もしくは僕が今度からもう片方の上着掛けスペースを使うかでいいんですが、席に遠い方に上着を掛ける煩わしさと双方のハンガー量の均衡を崩したくないという、ひとりよがりなくせに全体のバランスは考慮したいという自己満足によりこのような措置となりました。

いずれにせよ、これで無事、今年もオレンジのハンガーを使い続けることができるようになりました。
ただ、何度も言うようにこれは共用の備品なので、例えばここでそのハンガーに僕の名前のテプラ的なものを貼り付けたり、紙の切れ端に僕の苗字のシャチハタを押したものをセロハンテープで貼り付けたり、といった、個人の所有物であることの主張は一切できないわけです。そんな状況でハンガーを抱え込むには、どうするのかというと、とにかく「奥の端っこの目立たないところに掛ける」一択になります。他の人が僕より先に手に取ることを一切規制できない以上、他人の目に留まらない位置に追いやる、ぐらいしかやりようがないわけです。

とにかく僕はこのやり方で、今年度も無事にオレンジのハンガーを使う冬をはじめることができました。昨年末くらいまでは。

最初こそ焦ったけどすぐにオレンジのハンガーを見つけてきてからの僕は、また例年どおり奥の端っこで穏やかに上着を掛ける出社日を過ごしていたのですが、今年に入った頃ぐらいから、僕が出社すると既にそのオレンジのハンガーが別の誰かに使われている、という日が少しずつ増えてきて、気づけば何日も連続でオレンジのハンガーが使えない、という事態に陥ってしまってました。今まで「奥の端っこに掛けておく」の手法で何年もオレンジのハンガーを確保してきたのに、ここに来てまさかの刺客、僕が勝手に敵対視してるだけで顔も名前もわからない、ハンガーライバルが現れてしまいました。

なぜ今年になってこんなことになったのか、それは恐らく、冒頭に述べたように、昨年度までと比べて上着掛けのスペースが狭まったことで、上着掛けスペースひとつあたりの使用人口が増え、僕と同じように奥の端っこの方を使いたい派の人が僕と同じ上着掛けスペースの方に流れ込んできたからではないか、と推察されます。普通は手前とか真ん中の、出入りしやすい位置に人口は集中しやすく、わざわざ決して広くない上着掛けスペースに姿勢を低くしながら奥の端っこまで進んでいって上着を掛けたい人は少ないはずなので。

いずれにせよこの事態、これまで弊フロアで働いてきて10余年、ぬくぬくとオレンジハンガーのある冬を過ごしていた僕に訪れたはじめての脅威であるので、何とか取り戻したいという思いが芽生えました。ですが、何度でも言いますがこれは共用の備品、決して所有権を主張できるものではないので、取り戻す方法はただふたつ、誰よりも先に出社してオレンジのハンガーを確保する、もしくは、奥の端っこを使いたい派の人に他のハンガーに興味をもってもらう、です。

前者が確実なのは言うまでもないですが、こう見えて僕はここ数年出社するときはかなり早めに行くようにしていて、その理由は仕事熱心とかでは全くなくただただ混んでるエレベーターに乗るのが嫌というだけなんですが、そのために近隣部署の中でも既にかなり早く出社しています。その上で、先にオレンジのハンガーを使われてしまっているという感じで、実際朝に残業しようと始業の1時間以上早く出社して既に使われていたこともあったくらいなので、ここから更に出社時間を早めるのはかなり厳しかったです。最近はPCログ時間も取られたりして不必要に早く行き過ぎても困ったりするし。

そうなると自然と後者、僕より先に出社して上着掛けスペースの奥の端っこを使いたい派の人に、オレンジ以外のハンガーに興味をもってもらう方法しかなく、この線でいろいろ試行錯誤していきました。帰りがけの人がいないタイミングで、オレンジのハンガーを元々僕が定位置とした奥の端っこから少し手前に移動させた上で、緑のハンガー、青のハンガー、紫のハンガーなど、オレンジ以外のいろんな色のハンガーを、どうぞこれらの好きなのを使ってくださいと言わんばかりに奥の端っこに置き換えて様子を見ました。いっそのことオレンジのハンガーをもっと手前側に置いてみようとなった日もありましたが、それはそれで使用人口が多い領域に投じるので余計他の人に使われるリスクが高く、やはり手前すぎない範囲の奥の方の、でも端っこにはいかない位置をキープしつつ、端っこにはオレンジ以外のハンガーを置いてみて日々動向を見ました。

結果的にこの動き方での僕の勝率は、ざっくり5割よりは下回るくらい、ちゃんと集計こそしてないけど印象では負け越したかな、という感じでした。端っこに仕掛けたオレンジじゃないハンガーが見事に使われて僕がオレンジのハンガーを使える日もあれば、端っこより少し手前の位置のオレンジのハンガーをわざわざ選んで使われてる日もありました。きっとその人も、今年に入ってオレンジハンガーづいた日々を送りはじめたからか、徐々にオレンジのハンガーに愛着が生まれてきていたのかもしれません。もしかしたら僕が姑息な動き方をしたことで逆に意識させてしまったというのもあるかもしれません。

今年は例年より春が早めだったのか、3月に入って思ったより早く暖かくなって急に上着不要になったので、もうちょっと3月後半の巻き返しをはかりたかったところですが、今年度は負け越しのままシーズン終了で受け入れざるを得ません。でも、ここで終わる気は全然ありませんので。来年度の冬こそは、僕が、職場内の誰よりも、オレンジのハンガーを使う!


因みに何で僕がオレンジのハンガーにこだわって使い続けようとしているのかというと、ずっとめちゃくちゃすきで応援している元私立恵比寿中学の柏木ひなたさんのメンバーカラーがオレンジだった、というのが発端です。ただのキショ理由でしかないです。
ただ、今年に入ってもう柏木ひなたさんにメンバーカラーの概念がなくなってしまい、まさかそのタイミングで僕がオレンジのハンガーを使えない日が増えてきた、ということの因果関係については流石に考え過ぎですが、今やすっかりオレンジのハンガー自体への愛着がしっかりついてしまっているので、今後とも使わせてもらいたいという気持ちは内に秘められておきたいと思います。あくまでも共用の備品なので、所有権を主張している捉えられない範囲で。


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