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【漫画レビュー】いま隣にいる人を大切に想える漫画【瓜を破る】

※2025年2月、漫画【瓜を破る】第11巻を読了したあとの感想です。


全員の恋愛観や性思考が、リアルで、ぐっとくる。

恋愛・結婚・出産、人生でいろんなことがあったりなかったりする中で、いろんな立場やシチュエーションで感じ方、考え方は違うはずなのに、

登場人物一人ひとりの心理描写が丁寧で、それぞれに対して「あぁ、、わかる、、」と思うことが多い。

私は、創作作品を見るときに、登場人物たちの心の機微を見てしまう。
その人が何を感じ、何を思うのか、
読んでいて「なんで?」「どうしてその思考になった?」「そうはならんやろ」と違和感を感じると、
途端に距離を置きたくなってしまう。

それがこの漫画には一つもない。読んでいてストレス無いってすごいことですよ。

主人公の悩みとセックス論

主人公の香坂まい子ちゃんは、キレイ目で、性格もとがってなくて、あんまり敵を作らないOLさん。
でも機会がなくてセックスしたことがないことに悩んでる。

それを相談した親友の理乃ちゃんに言われる言葉

まい子は一度会ったくらいの人でも顔と名前ちゃんと覚えるし、人と丁寧に関わるでしょ
そういう情に厚いタイプは、焦らずちゃんと大事にしてくれる人とした方がいい!

瓜を破る 第5話

もうグッときますよね~~。
特に女の人は、セックスって性欲を満たすだけではなく、感情を満たす面も大きいから、「誰彼問わず!」「経験だけしたい!」というのは、その後のリスクがね。

そこじゃないじゃん。求めているのは。「それ」は目的ではなく他者とのかかわり方の手段の一つであって、そこをはき違えると、せっかくのセックスが、ただの辛い経験になる可能性だってある。

第6話で陶芸を体験したまい子は、えげつない変態ジジイと会うわけだけど、そこで気づくんだよね。そういうことじゃないって。
あのスタンプラリーの表現、分かりやすくて私は衝撃を受けました。

ああいう男って(女もいるかもだけど)まい子みたいな欲求不満、何かで満たされていない人を常に狙っているから、センサーが発動するんだと思う。
(まぁそういうことをしている時点で、その人も「満たされていない人」ではあるんだけどね。)

だからまい子は狙われたし、運よく逃げられたけど、ほんと「スタンプラリー」くらいにしか思っていない人間とのセックスなんて、絶対に後悔しかない。

少し戻るけど、第1話でまい子が元カレと未遂に終わるシーンがある。
あれだって、もし最後まで至っていたら?
情が湧いてしまって元カレのことを好きになってしまったら?その時まい子は気づいていなかったけど、後になって相手が既婚者だったことを知ったら?
きっと、まい子みたいなタイプは一生辛い気持ちのまま過ごすことになってしまっていたよね。

だから、私は鍵谷くんみたいな人が現れてくれて、心底ほっとしているんですよ。

鍵谷くんとの出逢い

個人的には性癖ど真ん中のタイプなので俄然鍵谷くん推しですが、

鍵谷くんが登場するのは第2話。
まい子が使っていた会社のプリンターの調子が悪く、メンテナンス会社に連絡して、その会社で働いていた鍵谷くんが来てくれて出会います。

もう第11巻まで読了した私からすると、この初期の野犬みたいな鍵谷くんが最高にツボなんですわ。可愛すぎ。お前、この後まい子にメロメロになるくせに!

なんだかんだ2人はデートをするわけなんですが、会う前にめんどくさくなるやつ、この現象、めちゃくちゃわかるよ…と。まだ10代の頃なんかは、パワーもあるし楽しみ100%!って感じだったけど、アラサーにもなると色んなことがしんどくなって。楽しいだけじゃままならないのがさ〜

でも2人はそこを乗り越えるんですよね…うんうん。

ゲーセンでも嫌がらないまい子も、今までの流れからはとても自然だし、その後鍵谷さんを誘うシーンも全然不快じゃないからすごい。

描き方が滑らかだから、スムーズに読めて、心に響く。

誰かに惹かれるということ

2人が惹かれ合うのも、何かお互いにすごい大きなことをしたからではないんですよね。

笑ってくれた、喜んでくれた、いい匂いがする、話してて楽しい、

そんなことの繰り返しで、人は誰かを好きになるというか、
もう既に気になっているから、相手のちょっとしたことが、積み重なって全部特別に見えてくるのか。

すごくドラマチックではないんだけど、誰かを好きになるってこういうことだよなと…
もう長らく新しく誰かを好きになったことがない私からしても、あの頃を思い出すというか。

そういう描き方をしてくれた漫画は、新鮮さを何度も感じられて本当に面白い。また改めて、今横にいる人を大切に思えるよなと、思ってしまう。

本当に大好きな漫画。

ぜひ、たくさんの人に読んでもらいたい。

読んでいただき、ありがとうございました。
また時間があれば、続きを書けると良いな。

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