【自家製サッカー概論】91 なでしこ 北朝鮮戦に向けて
今回、もの凄くタイムリーです。
女子サッカーのパリ五輪最終予選の最終戦。それが明日なんです!
本当にドンピシャなタイミング。こんな機会本当にレア。
何を書こうか逡巡しちゃいます。
とにかく、先ずは一戦目を振り返りましょう。
ポイントは左サイドバック。遠藤純選手が右膝前十字靭帯損傷で離脱。
そこに古賀塔子選手が入りました。さらにアンカーに熊谷紗希選手を起用。
これを見れば、結構守備的な布陣であることは一目瞭然。
そして試合内容は…、これば長くなるから割愛。
でも一つだけ。
途中から谷川萌々子選手が入って日本が押し込む回数も増えました。
だから明日は、「谷川選手を先発に!」という意見もある。
でもその前に、「なぜ、日本はポゼッションで上手くいかなかったのか」
この点を考えるべきだと思う。
分かりやすい例は、右サイドで藤野あおば選手にボールが入った時だ。
北朝鮮のウイングバックが猛烈にプレスを掛けて来た。
どうしてこんな状態になるか。
それは、「狙われていたから」である。
センターバックからサイドバック、そして藤野選手へ。
或いは、センターバックから藤野選手へ。
相手からすれば分かりやすい展開で、実に狙い易い。
なぜ、そんな展開になったのかと言われれば、これも簡単で「相手陣形の縁(へり)でボールを送っていた」からである。
縦パスが少なく、相手陣形の中に入ることなく、その外でパスを送る。
そんなポゼッションをしていたのだ。
サッカーでよく言われる「くさび」。これが少なかったのである。
最近の日本のサッカー論では「あの選手を使え」といった選手論に終始しがちだが、北朝鮮戦では、基本的な戦術で足りなかった部分は結構あったと思う。
さてもう一つ。北朝鮮のパス回しが上手かった点について。
昔、京都サンガを取材していた時の話で、大木武監督時代のことである。
大木サッカーは常に「ボールを中心にしたサッカー」を掲げていた。
相手がボールを持っていれば、常にボールに“行く”のである。
上手くハマれば相手はパニックを起こす。だが、そうでなければ、相手は京都のプレスを早いパス回しでいなして、逆サイドに展開する。
つまり、京都が早くプレスを仕掛けることで、相手のパス回しも早まるのである。
これを北朝鮮戦に当てはめれば、「日本が全力でプレスを掛けることで、北朝鮮はそれをかわすために近い味方にドンドンパスを出していく」という現象が起こったのである。
日本が「間に合わない!」と、パスコースを消す形でプレスに行かなければ、今度は北朝鮮がパスコースを探して手間取る様になる。
要は、そんな状況だったのだ。
面倒くさいのは、出す所がないと感じた北朝鮮は、そこからアバウトなボールを前に蹴り出すことである。
本来なら、それを跳ね返して日本ボールにしたいのだが、相手がボールを収めてしまい、攻撃が連続するのだ。
だがこの点は、女子だけでなく、男子も同じである。
だから、「日本サッカーはアバウトなスペースに出されたボールに弱い」となる。
ここは、今回のなでしこだけの問題ではないので、対応は難しいと思う。
そこは見ないことにして、明日の大一番の対応策にいこう。
今回は、起こりそうな状況から、戦い方を考えてみたい。
先ずは、「相手が守りを固めて来た」場合。
状況は、24日の第一戦と同じだ。あの試合、相手は5-4-1で守ってきた。
その場合はどうするか。縦(くさび)パスを使って、相手FWと中盤の守備を振り回すことだと思う。
喰い付いてくればパスでいなして、来なければ相手FWの脇のスペースや中盤と最終ラインのスペースで受けて、相手を喰い付かせてスペースを使う。
前を向ければ、スペースにボールを送るのもありだろう。
それを見せて相手が下がれば、サイドアタッカーの足元に付けて勝負させる。
要は、先手を取るのだ。これはなでしこの得意とするパス回しのはずである。
逆に相手が攻勢に出てきたらどうするか。
守備的に戦い、カウンターを狙ってもよいだろう。
ワールドカップではこれが見事にハマった。
スペイン相手には素直に守りを固めて、北朝鮮には守りを固めないというのは奢りだと思う。
例えば日本がリードし、相手が背水の陣で遮二無二に攻めて来た場合だ。
守りを固めて、カウンターを狙う戦い方も十分にあり得ると思う。
そこでカウンターを繰り出せれば、それが日本の底力になると思う。
さて、もう一つの状況である。
それが、リードを許す状況になったらどうするか、である。
これも想定して、試合中にドタバタしたり、不安に陥らないことである。
こうした準備もしておくべきだと思う。
明日の試合に向けての総括。
非常に重圧のかかる試合ではあるが、「この試合で私たちはどんなチャレンジが出来るかな」とポジティブに戦えるかどうかだと思う。
パリ五輪がかかった本当に大事な試合。だが、「真剣勝負でサッカーが出来るのは幸せ」と思って戦って欲しいと思う。
責任や義務を背負って戦う以上に、この状況でもサッカーを楽しめるかどうか。ここが問われると思う。
こうした「選手の心持ち」は、意外と観ている人に伝わるものである。
スタジムの観客やテレビを観ている人に「サッカーを楽しんでる」という姿をぜひ見せて欲しいと思う。
それが、北朝鮮と決定的な差異であり、選手が果敢に戦える大きな原動力になるはずである。
いよいよ北朝鮮との大一番。だが、相手のことよりも「自分たちに出来ること」に集中して欲しいし、これが大事だと思う。
ガンバレなでしこ!