見出し画像

模型にこだわるわけ

3Dパース?模型?

はじめまして、多田です。ちょうど今工事中の建物の模型を作ったので、設計事務所における模型の意義を説明します。

最近の建築3Dソフトは、ハウスメーカーや他の業界でも広く使用されており、プランニングと一緒にウォークスルー機能を使用して簡単にプレゼンテーションを行うことが一般的になってきました。

3Dソフトでパースを描くのと、模型を作るのでは圧倒的に時間も手間も後者の方が掛かります。
それでも私たちの事務所は模型でプレゼンする事にこだわっています。そのわけは?

1/50の模型は内部も作りますよ

スタディ模型の重要性

私たちの事務所では、ファーストプランをクライアントに提示する際、平面図と立面図のスケッチに加えて、1/100スケールのスタディ模型も提供しています。

平面図(間取り図)は一般的に理解されやすく、動線などの説明も容易ですが、光や風、視線などのZ軸に関する情報は理解しづらいことがあります。
そのため、スタディ模型を使用することで、より直感的に建物の環境要素を伝えることができ、建物の外観や空間の立体的な特徴を視覚化し、より具体的なイメージを提供することができます。

これにより、クライアントが建物の全体像をより明確に把握し、理解しやすくなることを目指しています。
実際、模型を見せると提案を受け入れてもらいやすいというメリットもあります。


ファーストプラン平面スケッチ


ファーストプラン立面スケッチ


スタディ模型


3Dソフトのデメリット

私も以前にいくつかの3Dソフトウェアを使用した経験があります。

使用してみた結果、外観の表現はなんとなく良いと感じますが、内部のウォークスルーは基本的に窮屈に感じることが多いと感じます。これは、視点が固定されて進むためだと考えています。実際に建物の内部を歩く際、私たちは窓からの景色や空間の広がり、開放感などを最初に感じるものです。しかし、画面を見ながら歩いている感覚では、迫りくる壁や天井、ドアや窓などの障害物的な要素が目立ってしまいます。

その結果、「もうちょっと広い方がいいなあ」という感想を多く抱くことがあります。実際の建物に比べて、3Dソフトウェアでのウォークスルーは視覚的な制約があるため、十分な広がりや空間の感じを再現するのは難しいと言えます。


スケッチパース

1/50スケールの模型

実施設計が完了し、工事が始まるタイミングで、1/50の模型を作成します。
これは建設予定の家屋の1/50スケールのミニチュアモデルであり、クライアントはとても喜んでじっくり見てくれます。
この、じっくり見てくれるという事が模型のいいところで、みなさん持ち上げてクルクル回して、窓から中を覗いたり、ドアを開けてみたり、屋根を外してみたり、と見る中でやっと本当に今までの図面の内容を理解してもらえると思っています。

工事中のクライアントとの打合せはあまりないのですが、一番重要な色彩計画の説明の時も模型は非常に役立ちます。
基礎の色や軒天のデザインなどを模型で指し示すことで、図面をめくりながら説明する必要がなくなり、建築に詳しくない一般の方々にもわかりやすく伝わります。

工事中、模型を預かっている間に、模型を見ながら空間のイメージが湧くため、家具や家電に関する相談も増えることがあります。
本物の建物は出来上がったら引き渡してしまうので、この模型が事務所の作品として手元に残ります。
ちなみに、初めに作った1/100の模型はプレゼントしていますよ。

1/50スケールの模型
屋根を外すと中も見えます


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?