住宅の形をつくったひとつの条件[episode#01]
はじめに
こんにちは、たけのこ建築設計室の齋藤です。
普段、住宅を設計するプロセスの中での私たちがどのように思考を積み上げてカタチを決めていくのかをお客さんのお話することがあります。
時には「目からウロコ」のように言って頂けるそのお話の内容は、これから住まいづくりを考えていく方の参考になるのかなと思い、今回よりnoteにて[episodeシリーズ]として過去のプロジェクト事案の中で、特に私たちがどのように思考し、取り組んだのかを書いていきます。
試行錯誤しながらの執筆になりますが…お付き合いくださいね。
条件
少し前になりますが、とても厳しい「条件」をお客さんから提示されたことがありました。
それは「日照」。敷地北側に道路が取り付き、敷地の東西に建つ建物が大きく影を落とすような敷地です。そして一見大きく拓いた南側隣地には近い未来にこの敷地に寄せるような形で住宅が建てられるという、まさに日照に関しては「八方塞がり」のような状況でした。この状況の中でも「陽の当たる、太陽の移り変わりを感じられる住宅」というご希望がありました。
プロジェクトを象徴するような大きな要素は、そのまま建築の形を決定付ける事になります。今回はこうした厳しい条件に対して私たちがどのように思考して、どのような提案をしていったのかをお話しします。
敷地の状態を読み解く
現地調査に行ったとき、昼前でしたが確かに敷地内に落ちる影が大きく難しい印象でした。しかし時間をずらして見てみると、敷地内のあちらこちらに日の光が落ちてきて、少しづつ移動していく様子が伺えました。
確かに日の当たりづらい土地ではありますが、時間によって散りばめられる光を捕まえられるような窓の配置、建ち方を工夫したなら充分な採光を得られるのではないかと考えました。
シミュレーション
想定される日照の変化とざっくりとしたご要望からプランニングを開始。ある程度形になったところで現地で掴んだ手応えを確認するために、敷地周辺に建つ建物の位置や高さ、形状を実測して3Dモデルを作成し、実際の緯度を落とし込み日照のシミュレーションをすることにしました。
これにより室内への日照取得を最大限確保できている事がわかりました。基本的な外観の形状と窓の配置はこれで確定することになります。
一見、鋭角に尖った間取りは奇抜に見えるかもしれません。でも実際は与えられた条件、抱えている問題を解決するためにそうした形状が自然的に現れているのです。
最後に
このように私たちのつくる建築のカタチは、機能性、居住性、可変性などのたくさんの条件を与えられて初めてカタチを現します。条件を与えてくれるお客さんひとりひとりの声に耳を傾け、丁寧に会話をしていくことで、唯一無二の住宅になっていく。決してこちらから押し付けるデザインではなく、ごく自然な住宅のつくりかただと考えてひとつひとつを大切に取り組んでいます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?