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EVを体験する(日産サクラ)

これまで、Twitter(@TakenoGishi)で度々EV(電気自動車)の新聞記事を紹介してきましたが、実際にEVを利用したことがないので、NISSAN e-シェアモビで日産「サクラ」を借りてみました。

そこに「サクラ」があった

日曜日の13時、横浜駅西口近くの駐車場。
「サクラ」は給電ケーブルに繋がれた状態で駐車されていました。EVには家庭でもエネルギー源を容易に供給できるという大きな長所があります。従来の内燃機関を使った車、すなわちガソリン車やディーゼル車では、危険物取扱者の甲種か乙種4類有資格者のいる販売店(ガソリンスタンド)まで行かなければいけません。ただし、航続距離の問題から、この長所がメリットとして広く理解されていないのが実情ではあります。運転免許証でドアを開錠し、給電ケーブルを外し、運転席に座って電源を入れます。ブレーキを踏みながら電源ボタンを押すところは、今のガソリン車の主流と同じ方法でもあります。当然ですが、エンジンの起動音はせず、何かのオープニングのメロディみたいなものが流れるだけで、大変静かなものでした。

普通の充電は上のコネクタ、下は急速充電用

駐車場を出発し、一般道を走っていきます。前に使っていた人の設定でしょうか。何やら「スポーツモード」に入っています。信号待ちの時に「ECO」モードに切り替え、さらに「e-Pedal」をオンにします。
藤塚インターから保土ヶ谷バイパスに入ります。国道16号のバイパスで無料でありながら完全立体交差、最高速度80キロの自動車専用道路、いわゆる「高速道路」です。プロパイロット、特にアクティブキープレーンが驚くほど正確に機能します。保土ヶ谷バイパスは通行量が非常に多いせいか、車線のラインが消えかかっているところばかりです。自分のガソリン車がスバル車で「アイサイト」を搭載しているのですが、同じ保土ヶ谷バイパスをよく走行していますが、常にアクティブキープレーンがあまり使えない状況です。これはEVとは関係ない分野の話でしょうが、自動運転技術の進歩を示すところではないでしょうか。
横浜町田インターから東名高速に入り、時速100キロで走行しても安定した走行、合流車線でも最初から高トルクでスムースな加速、軽自動車というより高級車のような感覚すらしました。

充電設備の問題

海老名サービスエリアでは、充電施設がすでに満杯になっていました。ポルシェのEVを撮影しながら充電しているドライバーもいました。EVは航続距離がまだ短いものが多く、「サクラ」にいたっては実際は150km程度。長距離ドライブでは途中充電が欠かせません。私の場合、福島県の実家まで帰るためには片道250km程度のドライブをすることになりますが、今のガソリン車なら給油せずとも往復できます。しかし、「サクラ」であれば途中で必ず1回は充電し、実家でも充電しないといけません。
ですが、EVが普及していないこともあり、充電設備はまだそれほど多くありません。場所的には結構あるようですが、多くて数台分しかなく、ドライバーは充電以外にも充電待ちで多くの時間を費やすことにもなっています。

厚木インターで降りて、再び一般道で横浜へ戻ります。
途中の横浜市瀬谷区内の日産販売店で急速給電を試します。そこで、お店の方から興味深いお話を聞かせていただきました。

充電設備はコンパクトだが…

先ほどの海老名サービスエリアの充電設備も含めて、ほとんどの急速充電施設は有料です。日本の多くの急速充電設備が「e-Mobility Power」ネットワークのもので、ここか関係する組織の会員登録がない場合はビジター利用としてクレジットカード情報を電話などで伝えた上で暗証番号を発行してもらいます。料金は30分で1,650円でした。
お店の方の話では、EVの給電はガソリンのように量(リットル)ではなく、時間での課金で車種によって充電の具合が異なるとのことでした。また、充電施設の少なさから30分で切り上げるという暗黙のルールもあるようで、不十分な充電状況であれば、もう1回行うか、別の場所で充電することになるようです。給電設備の整備が進めばEV化は急速に進むようにも思えますが、逆に言えば、その給電設備が整備されないうちはEV化も進まないということでしょう。

回生制動とは

再び横浜市の中心地区へ戻っていきます。下川井インターから保土ヶ谷バイパスに入り、狩場インターからみなとみらいへ向かいます。

回生制動が効けばブレーキランプも点灯

ここでようやく気づいたのですが、アクセルペダルから足を外すと強力な回生制動がかかります。回生制動というのはモーターが発電に転じてバッテリーに充電することによって制動力を得るというものです。この強力な回生制動のおかげで、時速10キロ程度までは回生制動を使い、停止目標直前でブレーキを使って停止させることが可能になります。つまり、電力の節約になるばかりでなく、ブレーキパッドの消耗を減らすことにも繋がるようです。これは鉄道(電車)で多用されている技術です。
EVではこれまでのガソリン車やディーゼル車とは違った特性を理解し、それを活かす運転の仕方が望ましいものになるようです。

元町、中華街付近を通り、本牧で折り返して新横浜駅へ向かいます。観光でもない、ただ車を走らせているだけですが、回生制動を活かし、ガソリン車にはない醍醐味を味わうドライブを楽しむだけで充分でした。それはまた、近未来の自動車のあり方を感じるものでありました。
6時間近くドライブを続け、車をもとのパーキングに戻しました。

EV体験を終えて

パーキングに止めていた自分のガソリン車で帰宅しました。エンジン音が鳴り響き、EVで味わった強い回生制動もありません。たしかに2016年に購入した車で、エコカー認証も受けており、世間一般の平均よりは便利な車だろうとは思います。しかし、ガソリン車であるが故の限界があり、地球環境への影響やこの国の交通のあり方を考えると、世界の潮流でもあるEV化は避けられないという思いが強くなりました。
もちろん、EVにも航続距離や充電の問題だけではなく、寒冷地における電欠の危険性やバッテリーの処分、増大する電力供給の問題など、多くの課題が残っており、手放しに賞賛すべきではありません。逆に言えば、自動車メーカーやEV愛好家だけが頑張ってどうにかなることではなく、政治問題であり、国のありようとして国家が取り組むべきグランドデザインにも取り込むべき課題ではないでしょうか。そういう意味で、EVに関する技術的な知識のみならず、経済的、会計的、法的な観点でも学びを深めたいと思います。

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