〈緊急記事〉煮干しの急激な価格上昇について
どうもお久しぶりです──たけちゃんにぼしらーめんのにだいめです。
今回は他のラーメン屋さんから非常に問い合わせの多い、煮干しの急激の価格上昇について、記事にしたく思い、久々に筆を取りました。
まず当店の実例を引きながら状況についてご説明しようと思います。
当社で使用している煮干しの価格も二倍ほど上昇しております。厳密な価格を書くことはプライベートなことなので控えさせてもらいますが、例えば元々1kgが1000円の価格だった煮干しが現在ですと2000円ほどすると考えてもらって結構です。
ではなぜこのような事態に陥っているのかという話なのですが、これはロシアのウクライナ侵攻も影響し、様々な物価が上昇しているのも考えられますが、それ以上に実は去年のイワシの漁が最悪だったことが最もな影響です。
まず、念頭に入れてもらいたいことが『煮干しの漁は規定上、6月しか行われない場所が多い』ということです。有名な煮干しブランドの『伊吹』は確実に6月にしか行われません。これは私の考えですが、恐らく海の生態系を守るためにそのような規定を漁業協会が結んでいるのではないのかと思っております。
なので一年の煮干しの供給量は6月でだいたい決まってしまうそうです。
当社が取引させていただいている会社は非常に温厚でかつ、様々な煮干しの情報を提供してくださる大変素晴らしい業者様ですので、この時点で〝とんでもないこと〟が起こるだろうと双方予測し、それに伴った行動を取りあっておりますので、なんとか状況を保持できておりますが、これらの情報を会得できなかったラーメン屋さんは、現在とても苦しい状態を強いられているのではないのか、と思われます。
次に、これは私が煮干しのセリを見たことがあるのですが、その一部の地域の〝ローカルルール〟かもしれないので、参考にはしていただかなくて結構なのですが、煮干しの入札方法というのは少し特殊だからこそ、価格上昇が影響しているように思えます。
普通、セリという言葉を聞いて、皆様がご想像されるのは『公開競り』いわゆるヤフオクのようなシステムだと思われます。
ですが煮干しの入札方法は本来の『入札』──一斉に価格を公開し、最高値をつけた会社が落札するというシステムです。
この入札システムと去年の煮干しの不漁が複合して現在の煮干しの価格上昇に繋がっているように思えます。
詳細を解説しますと、まず去年の煮干しの不漁の影響で、重要と供給のバランスが崩れていることはもう皆様はご理解いただいているとおもいます。次にこの『入札』システムで肝心なのは資本です──それはヤフオクのような『公開競り』なんかとは比べものになりません。
重要なことなのでもう一度書きますが『入札』は最高値をつけた会社が落札をします。それまでは他の会社が幾らの金額を示したのかが曖昧な状態であります。だからこそ確実に購入したいという業者さんが取る行動はたった一つ……思いっきり高く金を積んで相手を黙らせるということです。
『公開競り』のいいところは〝チキンレース〟なところだとおもっております。安く仕入れたいという考えは誰しもが念頭に入れていることは間違いないからこそ、ジリ貧な戦いが求められるがゆえに、市場価格というのも急上昇しない手助けを担っているのではないのかと私は考えておりますが、これが『入札』ですと、やはり資本金を蓄えている大企業には敵わないのが現状であり。さらには大企業側も他社には絶対に買わせないという意地を見せつけるかのように、とんでもない価格で競り落としている状況みたいです。
というわけでまずは一旦、まとめます。
・煮干しの価格上昇の理由
1・戦争による世界的な恐慌の雰囲気(戦争クソ喰らえ)
2・去年の煮干しの不漁(需要に対し供給が追いついていない)
3・煮干しの入札システム(主観が入っているので鵜呑みにしないで)
おそらく6月まではこの状況は続くとおもいますし、それ以上に6月までは価格がもっと酷くなる可能性があります。いや、もっと怖いことを書くならば、6月までに日本から煮干しがあるかどうか……それすら疑問を抱くほど、現在煮干しというのはダイヤモンドのように激しい取り合いが行われている状態であります。
この件についてはオフレコなことも多いので、詳細を書くことができませんが、ですが勇気を出して書くならば『儲かっているのは生産者だけで、仲介会社と飲食店は悲惨な状況』であると申しておきます。
冷静に考えてみてください──例えば500円の価値だった煮干しが、現在1000円で売られている状況であることを。基本、煮干しは現在市場価格はほぼ2倍ほど値上がっているのです。さらには『入札』のシステムが拍車をかけている状態です。そういった現状を冷静に考えると、仲介会社だってそこまで儲かっているわけではないのです──彼らだって商品を確保するために必死になって血を流していることを決して忘れてはなりません。
では今年の6月に煮干しの供給量が増えるのか──この考えを膨らませる方々は多いでしょう。これに関してひとつ不穏なニュースが流れております。
マイワシの大量発生です。
なんだか30年に生じるイベントみたいです。
マイワシは出世魚で、シラス、ヒラゴ。チュウバ、オオバと成長してきます。
このマイワシの大量発生がカタクチイワシの不漁に繋がる可能性が高いと示唆されているそうです。
ということはこれからの煮干しは下手したらヒラゴへと変わっていく可能性が多いにあります。
それらも含めて、料理人の皆様はこれからの時代を見据えたアイデアを構築すべきではないのか、と思う次第です。
最後にここまで読んでくださった皆様に添えておきます。
これからの煮干しラーメン屋さんの販売価格は急激に上昇する可能性があります。
ですがこれは私は敢えて『一時的な凌ぎ』がゆえの価格上昇だと信じております。
ある業者さんは言いました……
「日本の飲食店は今まで安くて美味しいものを提供してきた罰が下った」
そのとき私は思いました──
馬鹿か、そういう先人たちの苦労と努力と並々たる知恵があったからここまでラーメンという文化が一般認知されるまでに昇華したんだろ! と。
文化というのは継承していくことでどんどんと深みを増していきます。これは値段なんてとてもじゃないですが簡単につけることのできないものです。これらの『文化』を守るために、私たちは活動を続けているわけです。
ですが活動を続けるためには現在の社会的システムでは、どうしても『お金』というのは切っても切り離せないものでありまして、がゆえにサービスという概念が産まれているわけです。
これらを無視してラーメンの価格が高くなったことを『単純に嘆く』心ない消費者には敢えて喝を入れますし、更には『適当な理由をつけて無駄に価格を値上げする同業者』にも私は𠮟咤します。
ラーメンは民衆の文化だからこそ、誰でも手軽に美味しく食べれる状態を作ることが、私の信念です。
それにはブランド的な『高級志向』なんて入りません。
ですが文化を継続させるためには、これらの長文のなかで説明した状況をご理解いただきたいのも現状──私たちも近々、値が上がるかもしれません。
ですが私は二代目として皆様に約束します──煮干しの価格上昇が落ち着いたときには必ず値段は下げるということを。
そしてそのような心意気のラーメン屋が増えることを私は信じたい。
大切なのは『文化』だ、と私は何度も叫び続けます。