お土産らぁ麺 応用レシピ vol.3.1 洋風濃厚魚介豚骨塩らぁ麺 序章:香味油

どうも、にだいめです。本日の応用レシピは「洋風濃厚魚介豚骨塩らぁ麺」なのですが、その前にまず、序章として香味油へと着眼点を当てたいと思います。

香味油って本当に扱いが難しいのです。というのも、香味油はこうであるべきという考え方は基本的には三種類しかないのですが、その見せ方というのが本当に人それぞれだからこそ、その三種類に中々気づきにくいタチの悪いものだったりします。だからこそ、まずは香味油の味の見せ方について皆様と一緒に考えていこうと思います。

・香味油の三種類の味の見せ方とは?

らぁ麺のそれぞれのパーツを分解しますと、基本的には「スープ」「麺」「トッピング」「香味油」この四つに分けられます。そして新商品を開発する際、料理人は何処から組み立てていくか、何を主軸にするか考えるものです。この時点で様々な考え方が混沌とするもので、例を出すならば「もっちりした麺を堪能して欲しい」という考えを軸にしたり「何処も使っていない食材で出汁を引きつつ、それに合ったトッピングを乗せたい」というコンセプトで攻めたり、と、構想を立てていくのです。そう、大事なのは味の見せ方なのです。正直、私はこれら全てのパーツを強め過ぎてしまうと結局、どっちつかずの面白くない作品が仕上がると考えております。何においてもバランスは大切であり、全てを最強に仕上げたとしても、それがお客様に伝わらなかったら全くもって意味がないものであります。だからこそ「この作品はこういうものなのです」という一つの分かりやすさを料理に落とし込む作業は非常に大切だと私は思っております。

この理論の元で、香味油が一体、どのような立ち位置であるべきかという三種類の方法を考えていきます。

1・香味油が主軸になる

香味油の味をメインにするのが一つ目です。分かりやすい例を出すならば豚骨らーめんの「黒マー油」が良い例でしょう。正直、豚骨らーめんはマー油がないと落ち着きません。それはマー油という香味油がどれだけ優れていて、且つ、人に印象を与えやすいものであるという考え方ができるでしょう。それ程、インパクトがあり、パンチがあり、味として伝えやすい力を持っている。その様な香味油をメインに据えた料理を作る場合、他のパーツは少し弱く設定する必要があるでしょう。そうでなくても、マー油は他のパーツをいい意味でもわるい意味でも食い尽くす香味油だからこそ、敢えてメインを張らせてあげる気概も大切なのではないかと思います。

2・他のパーツを主役にさせるからこそ、香味油は引き気味にさせる

当店のらぁ麺のスタイルは完全にこれだと思っております。香味油が主役を張ってもらう必要はないと考えております。当店の香味油は海老とにんにくを使用しているのですが、正直なところ、このニュアンスは絶妙に分かりにくいところで味の抽出を控えております。なので、よっぽど舌に自信がある方くらいでないと、当店の香味油に海老が入っていることには恐らく気づけれないのではないかと私は思っております。かという、私も自分のところのらぁ麺を何も知らずに食べて「この油には海老を使ってるね」と言える自信は無いです。それ程、使ってるんだか使ってないんだか分からない程度にしか、香味油に海老の味を反映させていません。しかし、それで良いのです。当店は出汁を楽しんでもらいたいが為に、エビ様には控えていただいているのです。これも大切な要素です。

3・全てを平均的に

これは私が担々麺を限定で作った時に思ったことです。この香味油はラー油です。当店は無添加・無化学調味料をポリシーとしております。私、これを肝に命じておりまして、ラー油も市販のものを使用せず、一から作ったのです。その経験がこの論理にたどり着いたのです。この平均的という考えは一つのバランスが崩れてしまっただけで、台無しになるかなりハイリスクな行動とも言えるのですが、裏を返せば、基礎がしっかりしていれば何も怖がる必要はないという考えもできます。その基礎が難しいから結局リスクな行動になるのでは? と思われる方もいらっしゃいますが、とりあえず私の経験談から判断していただけますと幸いです。

担々麺は昨今、複雑に進化している面白い料理だと思っているのですが、私が目指した担々麺は「This is 担々麺」面白みもへったくれもないただ普通の担々麺でした。というのも、私、担々麺を作る為に、沢山の担々麺の名店へと足を運んでみたのですが、結果として美味しかったのは「至って普通の担々麺」であるという結論に達したのです。何処か洒落てたり、何か奇抜なトッピングを添えてたりするのではなく、シンプルなんだけど、それぞれのパーツの完成度が高いから成り立っている担々麺の味は非常に魅力的でした。そこから、全てのパーツを既製品に頼らないというルールを設定した上での開発が始まりました。そうなると二つのパーツはどうしても自身が生み出さなければなりません。それはごまペーストとラー油だったのです。ごまペーストは色々と試行錯誤したのですが、最終的には「バイタミックス」というラーメン屋さんには超ハイスペックミキサーを導入し、ラー油に関しては膨大なレシピを用意して、一つ一つのレシピを全て作り、それぞれの良いところを摘まみ取って、オリジナルのラー油のレシピを完成させました。そう、ここまでしないとシンプルなんだけど、美味しい担々麺なんて作れません。

さて、そこで改めて基礎とは何かと問います。それは「可能性を限りなく1つにさせる」ことだと私は思っております。これが基礎です。可能性がまだ示唆できる状況でレシピを組み立てる行為は誰でも出来ます。そこに対価を発生させる為には「他の可能性を潰し続けて、限りなく1つの答えとさせる」ことが大切なのです。この可能性を潰す速さがいわゆるセンスという考え方ができ、可能性を見出す力が発想力。そして、可能性を愛でる行為が自惚れと言ったところでしょう(笑)

さて、話を戻します。担々麺で商売するには実は上記の内容は「至って当たり前」のことです。それをご家庭でやるのならば「相当、気合いが入ってる」という言葉に変わりますが、これはあくまでも商売上での話なので、少し冷めてるかもしれませんが、普通の話なのです。それは何故か。担々麺は皆様の頭の中に「こういうもんだ」という考え方があるからなのです。だから、奇抜な内容な担々麺が世の中に受け入れられない理由の一つに「自分の思っていたものと違う」(=お客様がそれに対しリスクを感じ、クリシェ(=常套句)に落ち着いてしまう)という考えが、なかなか開拓そのものを拒んでしまう傾向があるのではないかと私は思っております。だからこそ、「プロが基礎として公開してるレシピを一つ一つ間違えなければ美味しい担々麺は完成する」という結論にもなるのです。まぁ、そこに自分自身のエッセンスは多少入るとは思いますが、それでも担々麺そのものの呪縛からは中々逃れることができないのが難しいところです。これがある意味、完成しきってしまっている料理の厳しいところかもしれません……。

まぁ、これでお分かりいただけたかもしれませんが、全てを平均的にする行為はその作品に対しての敬意や尊重の元で成り立つ技であるという考え方ができるでしょう。開拓心が溢れきってる方にはある意味考えにくい方法だと思います。

・では、主題へと入ります……?

これらの考えを踏まえた上で、今回は通販の限定商品として出しました「洋風濃厚魚介豚骨塩らぁ麺」の構造を徹底的に解剖していこうと思うのですが、ここは書き手も読み手も少し小休止を入れないと整理がつかないと判断し、本日はここで解散とします。次回はこのらぁ麺の製作過程をレシピとして公開します。

ということは皆様も頑張れば作れるのです!(笑)

それでは失礼致します。にだいめでした。