病と私
こんにちは。たけなみ洋と申します。
私が発症した化学物質過敏症について簡単に。
私自身についてはこちらをどうぞ。
私の体験
発症まで
2017年6月に職場で爆発したかのように咳が止まらなくなり、8月に確定診断がおりました。
思い返せば子供の頃から家族に感覚過敏気味の者がおり、またペットを飼っていたこともあって強い香り製品は避ける傾向にありましたが、使用していた洗剤類はごくありふれた合成洗剤で、本人は香水も楽しんでおりました。喫煙可能な飲食店でも、多少喉がいがらっぽく感じる程度。アルコールも嗜んでいました。
しかし2000年代から長く香る柔軟剤が市場へ出ると、不快までいかなくとも「ちょっとニオイがキツイかもな」と感じるようになりました。
その後、職場はずっと都内でもコアタイムを避ける勤務時間で、2016年頃に異動によって満員電車に乗るようになると、まるで別世界に来たかのように電車内に甘い香りが漂っていると感じました。これが長時間香る洗濯洗剤や柔軟剤だと気がつくのは、もっと後になります。
発症の誘因になったのは、オフィスに敷き詰められたカーペットのクリーニング剤や防虫剤と隣席の煙草だったと想像するも、発症機序が科学的に解明されていない病のため、推測の域を出ません。
職場は全館完全分煙でしたが、隣席の同僚は自身も認めるヘビースモーカーでした。ただし現在、飲食店などで喫煙者の近くになってもそれほど反応は強く出ないことを書き留めておきます。
発症時
職場で、ある日突然、発症しました。
化学物質過敏症を発症した患者さんの多くが、自分が発症した日付まで覚えているそうです。それほど爆発的で、衝撃的な体験なのだと思います。
数週間前から周辺の強い香りに反応して、喉に違和感があり、たまに咳が出ていたのですが、その時は爆発したように咳が止まらなくなりました。
息を吸おうとしても喉が締めつけられて空気が入ってこず、その場にいられなくなって、ビルの前庭に出ました。広い外に出てしばらくすると落ち着きます。
しかしオフィス内に戻ると、同じように呼吸ができなくなります。また、早退した電車内で柔軟剤等の強い香りを感じると、同じような感覚とともに咳が出る。以降、毎日その繰り返しになりました。
日増しに反応する対象も増え(後述します)、咳や気管狭窄のみならず、頭痛、めまい、痒み、全身を覆う痛み、記憶力や思考力の低下、光を眩しく感じる、わずかな音を煩く感じるなど、多種多様の不調が出るようになります。
発症後
すぐに坂を転がり落ちるように悪くなり、発症して半年の間は特に酷かった印象です。しばらくは日常生活も困難でした。職場は長期休養となり、復帰できず、約1年後に退職しました。
私を診察した医師によると、一度発症すると(過敏性を獲得すると)原因・誘因となった物質のみならず、ありとあらゆるものに反応するようになるため、大抵は一時的にぐっと悪くなる、ということでした。
たとえば、玄関のドアや窓をほんの少し開けることさえできず、布団に伏せたきり起きられないという日もありました。
しかし諦めず、焦らず、できることから少しずつ行動することで、多くの場合は回復すると聞いています。もしも今つらい状況でこれを読んでいる方がいらしたら、希望を捨てず、前向きに日々を過ごしてほしいと願います。
現在
復調し、職場には復帰できませんでしたが、週に数日であれば外出もできるようになりました。
ただし反応するものがあれば、喉が締めつけられて咳が出たり、呼吸が苦しくなったりすることは変わりませんが、
ドアや窓は開けっぱなしにはできず、外出中は活性炭マスクが手放せず、帰宅後は服や持ち物をすべて洗って、すぐにシャワーを浴びます。
外から持ち込まれたものは、すべて洗ったり干したりする必要があります。
化学物質過敏症について
原因は?
発症のメカニズムはまだ解明されていないそうです。
そのため、いまだに「香りの好き嫌い」や「気のせい」など、個人の問題に落とし込まれがちです。
国際疾病分類(ICD10)ではT65.9、中毒の項目に分類されていますが、中毒症状を引き起こす原因物質の量はミリグラムの単位であるのに対して、化学物質過敏症の場合は、一度でも過敏性を獲得してしまう(「感作する」という)と、ナノグラムやピコグラムという、日常的な使用状況では考えられないほど微量な単位で発症してしまうといわれています。
最近では中枢神経炎症、視床下部炎症が関係していると認められつつあるそうで、今後さらなる研究が待たれます。
反応するものは?
発症に先立って、数年前から、たとえば電車に乗り込むときなどに「甘い匂いが漂っているな」と感じることや、合成洗剤・柔軟剤・芳香剤などの強く、長く香る人工的な香りに違和感を覚えることはありました。
発症の数週間前からは特に、職場で周辺の席にいる人たちが強い香りつきの洗剤を使用していたり、喫煙者であったりしたことで、ニオイが強いと感じたり、喉に違和感を覚えたり、あるいは多少咳き込むこともありました。
完全分煙で、喫煙所は別のフロアにありましたが、喫煙から戻った同僚の髪や服や呼気からは煙のにおいがします。
また彼らもそれを気にして消臭剤や香水などをよく使用していました。これらが引き金になったと想像していますが、しかし直接的にどこまで関与しているかは科学的にわからないようです。
発症後、反応する対象は次々と増えていきました。
思いつく順にざっと羅列します。
これらのものは今でも近くにあったり使われたりすると、程度の差はありますが、喉が焼けつくように痛んだり苦しくなったりします。
今はそれほど反応しないものの、重篤化していたときに反応したものも思いつく限り書き出します。
一番重篤化していたときには、ヒノキの木そのものにも反応しました。
考えてみれば、ヒノキは天然の防虫剤なので当たり前かもしれません。
これらの反応物は、多かれ少なかれ、発症者に共通するようです。
どんな症状が?
症状は発症者によって様々あり、それがこの病を難しくしている一端に思えます。
「化学物質過敏症ならこれ」という症状がひとつに絞れないため、たとえば頭痛を感じれば頭痛薬を飲み、下痢をすれば内科を受診し、うつ状態が続けば精神科へ、というように、なかなか病名にたどり着けなかったという当事者の経験も聞きます。
個人差が大きく、広範囲にわたる症状が現れるのが化学物質過敏症といえるようです。
参考までに、以下に症状を並べます。
良くなるためにしたこと
主治医からの指示は以下の通りでした。
発症の機序が解明されていないことや反応する物質とその症状の現れ方に個人差があることと同様、回復状況も人それぞれあるそうです。
同じように主治医の指示に従っていても、ある人は順調に回復し、別の人はなかなか思うように調子が良くならない、ということもあります。
あせらず、あきらめず、誰かと比べたりせず、ご自身の状況や周囲の環境に合わせて取り組まれることをお勧めします。
どうぞお大事に。少しでも楽に呼吸できますように。
書籍
■化学物質過敏症関係の書籍で参考になったもの
『化学物質過敏症とは何か』集英社新書
『プロブレムQ&A 化学物質過敏症対策』緑風社
『化学物質過敏症BOOK』AEHF JAPAN
『おそい・はやい・ひくい・たかい 79号
香り、化学物質で苦しむお友だち』ジャパンマシニスト社
『マイクロカプセル香害』ジャパンマシニスト社
『アルカリと酸で洗う本』せせらぎ出版
■作協力
『「香害」パンフ』ジャパンマシニスト 社
『転校生はかがくぶっしつかびんしょう』ジャパンマシニスト 社
『「ただの空気」が吸えなくなりました。〜化学物質過敏症で無職になった話〜』ぶんか社
読んでいただけたら嬉しいです。
おわりに
1記事にまとめるため、ざっとした内容になりました。
興味のある方は、ぜひ上記の書籍をお求めください。
(2024年10月15日編集)
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