Vol.5 主体とか自律とか③

 教師が自ら教授材料を選定し、教授の目的方針を定め、詳細な教授経路を予想した教授案をもって、児童に臨み、教師先ず教授し、教師から規範を与え、教師が真偽・善悪・美醜を判断して、其の結果を児童生徒に承認させていく。教師は自己の意志を以て児童生徒を支配し、児童生徒に対してはいっこうに教師の意志に忠順であることを要求している。訓育においても体育においても大体同様の態度で児童に臨み教育の目的に到達しようとしている。これが他律的教育だ。

木下竹次(1972),学習原論 P15

今の自分の現在地

 今日まであれこれ試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ前に進んでいるような感覚があります。毎日やすみなく考えること、これからも続けていきたいと思います。

 内発的か外発的かという区別は,このように「目的ー手段」という枠組みによる分類だといえる。…
 「自律ー他律」という枠組み,すなわち,「自ら進んでやるか,やらされているか」という違いによって内発的,外発的が区別されている。
 ただ,やっかいなことに,「宿題自体に興味はないが,やらなければならないことを自覚して進んで取り組む」という場合のように,目的として取り組んでいるわけではないが自ら進んで行為するという場合もありうる。…このような「自律的な外発的動機づけ」が描き出されている。

鹿毛雅治(2013),学習意欲の理論ー動機づけの教育心理学 P186

  自分が考える「主体」と「自律」について、一旦今日でまとめておこうと思います。今から書く内容が今の自分の現在地です。忘れたり、迷ったりしたときにはここに戻ってこられるようにしておきます。

主体とは

 これには、自分の「意志がある」「意志がない」ということが関係していて、なにをするのか、どのようにするのか操作するハンドルを握っていることだと思っています。
 
 やっぱり、学びのハンドルを握っているのは子どもです。教師が握ってしまうと主体が子どもから教師に変わってしまいます。

 ただ、「意志がある」「意志がない」ということについて、何事にも「意志をもって」取り組むのは難しいことだと思っています。自分の「意志がない」ときだってあります。
 学校では教科があったり、教科書があったりと決められた学習材が用意されています。自分の意志だけでは進めません。

 外発的動機づけが学習や成長にプラスの効果をもたらす可能性にも目を向ける必要があるだろう。外発的動機づけシステムの導入によって,まずは行動が現実化するという点がポイントである。つまり,学習者にとってあまり(あるいは全く)興味のない行動を実際に体験する機会を提供することになるというメリットは着目に値する。この観点から少なくとも以下の三つの効用が指摘できる。第一に,「習慣化」である。外発的動機づけによる行動が自動化されることによって,意識や意図を媒介せずに特定の行動が生起するようになる。その際,当該行動が学習者当人の学習や成長にとって望ましいと判断できれば,この習慣化は外発的動機づけの教育効果といえる。第二に,「内発的動機づけへの転化」である。機能的自律のように,当該行動を体験することを通して興味が芽生えるなど,内発的動機づけへと転換する契機になれば,結果として学習や成長に寄与する可能性がある。第三に,「意義や価値の理解による自律化」である。

鹿毛雅治(2013),学習意欲の理論ー動機づけの教育心理学 P191

国語科「たずねびと」を読みたいと思って読むわけではありません。でもきっと読んでいるうちにあるいは、読んだ感想を友達と交流しているうちに「もっと知りたい」「もっと深く考えながら読みたい」と主体的に取り組むようになるのだと思います。

自律とは

 これには、うまく「コントロールしている」「コントロールしていない」ということが関係していて、主体がハンドルを操作し、「ここに向かおう」「一旦ここで立ち止まって考えよう」などと進み方を試行錯誤しながら取り組んでいることだと思っています。

 ここにも、「もっと知りたい」「できるようになりたい」と願う気持ちが関係しています。

 教師としては、とにかく走り出すことができるように支えられるといいのかなとか、このあたりはまだモヤモヤしています。
 
 走り出してみると道に迷うことはあるかもしれませんが、「こんなおもしろいところがあったんだ!」と発見したり、「ん?なんだろう?」と立ち止まってみたり、何かしらの出会いが生まれると思っています。
 
 もちろん、走り出してからの教師の支えも必要ですが。

 内発的に動機づけられた行為の性質として,熟達指向性(認識を深めたり技能を高めたりする方向性)と自律性(外的に強いられているのではなく,自ら進んで取り組んでいるという心理状態)の二つを指摘している。

鹿毛雅治(2013),学習意欲の理論ー動機づけの教育心理学 P196

 今日まで、あれこれ試行錯誤してきたことがいろいろとつながったような気がします。こうやってなにかについてじっくり立ち止まって考え続けることが大切だなとあらためて実感しました。

 まだまだ

  • 没頭とは

  • 探究とは

  • 追究とは

  • 見取りとは

  • 仕掛けとは  などなど

自分の中であいまいにしていることがたくさんあります。これからもじっくり立ち止まって考えてみます。

自己決定の体験を構成する要素として,自己原因性の知覚(その行為が環境によってではなく自己によって引き起こされ,調整可能であるという感覚),意志(volition:プレッシャーなしに進んでやっているという自由な感覚),選択の感覚(意思決定の柔軟性と何をするかを選ぶ機会があったという認識から生じる感覚)の三つを挙げている。

鹿毛雅治(2013),学習意欲の理論ー動機づけの教育心理学 P200

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