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VRChatでタイムリープに成功して、失敗した感想、を書いた感想

こんにちは。てーくんです。

この記事は、以下の小説を書いた時の舞台裏や設定を解説するものです。
未読の方は是非読んでいただけますと、作者として嬉しく思います。

自分で書いた小説の解説って、たぶんどんな形式であれ自分語りや自己満足の域を出ないので、どう書くかなぁと悩んだんですが、いろんな項目を作っていろんな角度からあの作品を紐解いてみようかと思います。
なので興味のある方は目次を見て各々気になった項目だけを読むとかがちょうどいいかもしれません。

自分がどんな気持ちで創作したのか忘れないようにするための自分用メモも兼ねてます。


書いたきっかけ

結論から言うと、僕は『地に足付いた未来予測大喜利』みたいなものが好きなんだと思います。
MinecraftとかVRChatのワールド制作でもリアリズムとか写実性を重要視するめんどくさいタイプの人間でした。
ゲームさんぽとか好き。
でも別に現代文の成績はあまり良くなかったです。

あともう1つ言うとすればVRChatで活躍しているクリエイターさんや作品の中でも、VRChatの中に向けた創作、VRChat民に寄り添った内向きの作品が好き、というのも多少はあるかも。
僕がやるVRCお笑い道場のネタも、VRChat民がVRChat民に向けて行うネタみたいなのが強いです。悪く言えば身内ネタですね。

地に足付いた未来予測は、例えば最近で言うとこういうのとか

ファンタジー系で言うとこういうのが好きです。

あとは作品でいうとタテの国の宇宙物理学描写とか、ソードアート・オンラインの「みんなでおんぶして空飛んだらギリギリ天空にある建物のスクショ撮れるんじゃね?」とか「アインクラッド当事者の当時のトラウマ呼び覚ましてディープラーニングしたら娘のAI作れるんじゃね?」みたいなのがすごい現実の延長線って感じで好きです。
もちろん洞窟でちゃんとパラジウムを集めて熱プラズマ反応炉を作ったりビフレストの橋をアインシュタイン・ローゼン・ブリッジと捉えるマーベル・シネマティック・ユニバースも大好きです。

話がだんだん脱線してきちゃった。

そんな感じで僕が2022年10月のStable DiffusionとかNovelAIとかの話題を見てふわっと考えたのがこれです。

VRChatの日本人の生態を見てるとたぶんこうなるだろうと、大喜利みたいな感じですね。
これなんかもう少し昇華できないかな、と思って文章を書き始めてました。

以下が当初書いていた雑なあらすじです。

2022年~2023年くらいで、サーバーサイドかVRサイドかなんかの大学に通って研究してる大学生が主人公(だと後々便利かも)
研究室の金でQuest Pro使ってたらそれっぽいかも

そんな中VRChatがAIブームに乗っかってVirtual diffusionという名前でVRChat民の言動を真似るAIを作成
ランダムでインスタンスに現れるものの、日本サーバー用のAIだけは日本人VRChatterのおもちゃにされて、「遺伝的アルゴリズムでエッチな絵を作る」みたいな現象が起きて、ある程度の基本的なkawaii一般VRChatterの動きが再現できるようになる(でもVRChatterが元になっているので、シンプルな女性じゃなくて中身に男性感が若干出てたりして、いやでもそれが良いとかそういう議論になってる←ありそう)

ある日何かしらのきっかけで主人公がVRChatサーバーのタイムスタンプやら過去ログやらに介入できる方法を発見
それを使ってVRChatに残っている当時のログ、ワールド情報、座標、音声が再現できるようになる(実際の現実だと座標とか音声は残ってないと思いつつそこは創作なので)
でもそこから環境を再現してjoinしても、触ることも反応されることもなく何も出来ない(VR映像を見ているようなもん)

そこに何らかのきっかけでVirtual diffusionが組み合わさって、過去のVRChatを再現してその反応まで生成できるいわば仮想仮想空間の制作に成功する(ここらへんはオーディナル・スケールの悪役がやろうとしてたことにちょっとだけ近い……?)

上の2つの状況の変化は、シュタインズゲートの「まだガラケー越しに文字しか送信できない」→「CERNに繋がってタイムリープもできるようになりました!」に近いかも

偶然できたその環境で2年前の2020年に遡って主人公は失った大事なものを取り戻す(ここは好きに設定作ったら良い、記憶喪失とか悪役の過去を知れるとか)
2年前のVRChatに入ったらUIとかネームプレートは古い状態だし、コネクトステーションとか昔のFujiyamaとか、日本語クイズがまだない頃の日本人コミュニティにアクセスできる
そこで懐古兼VRChatあるあるみたいなネタをはさみつつ、物語が進行していく ……何も思いつかん……って感じ

出典:僕がフレンドに送ったDiscord

Virtual Diffusion、絶対女の子の名前つけられると思うんだけど、VDちゃんとか名前つけるよりは、「Virtual diffusionがリリース5日目に突如〇〇のアバターのメッシュを〇〇と誤認解釈して通常のユーザーじゃ思いつかない表現をしてきたので〇〇ちゃんと呼ばれるようになりました」みたいな方が現実的な気がする
今の樋口円香のラーメン食べるのとかケーキ化とか、広瀬香美のロマンスの神様がバズる流れを考えると、そっちのほうが現実的な気が

出典:僕がフレンドに送ったDiscord

上のあらすじを見てもらったらわかる通り、世界観の構成がまず先でした。
僕が書きたかったのは「明日VRChatにjoinしたら起きているかもしれないSF」だったので、登場人物や感情描写はあくまでその次って感じですね。

今作のメッセージって「今のVRChatのお気持ちも懐古もわかるけど、今のVRChatも将来誰かにとっての初心者時代だし、初心者の頃を思い出せば道に迷わないんじゃないか」みたいなことなんですけど(たぶん)、このメッセージはあくまで上の構想から書いている途中に見つけた落とし所、という感じです。

人間の感情や感動展開を描くのは小説執筆素人の僕には難しいだろうと思ったので、世界観でカバーしようと思いました。その結果登場人物は主人公、フレンド、狂人という少ない人数でかつ名前もないという状態になっています。
でもとある感想で「登場人物が無色だったおかげで読んでいて感情移入しやすくなった」と言われ、たしかにそういう効果はあったのかも、とも思います。思わぬ副産物ですね。
小説素人の僕が書いたこの作品は、結果的に小説というよりは割と主人公成長モノの映画みたいな雰囲気があるなと我ながら思っています。

あと一応弁明なんですが、主人公の大学での専攻分野とか過去の黒歴史とか思い出のフラッシュバックは僕個人の経験とは極力違うものを書いています。自分の投影はしたくなかったので、VRChatってこんな人いそうだなぁを想像して書きました。

やりたかったこと

下書きのGoogleドキュメントに箇条書きしたやりたいこと一覧のうち、今振り返ってコメントできそうなものをここに書いておきます。
👈が作品公開後に読み返してみて書いたコメントです

  • おしゃれ小説みたいにするならメタルギアみたいに冒頭に格言入れたーい

    • 仮想世界のふりがなダブルミーニングでいいんじゃないの

    • 👈僕が自分で言っちゃうとすごい台無しですけど、仮想世界フィクションノベル仮想世界バーチャルリアリティの言い回しはおしゃれな導入かつ「この漫画はフィクションです。実在の人物や団体~」の機能も果たしていてお気に入りです

  • お砂糖文化

    • 👈これはやってないですね、お砂糖がいない人もいるので、没入感という意味では触れなくてよかったかなと思います、普通に作中の「フレンド」は他にお砂糖作ってそうだなー、狂人はいないだろうなぁーとか匂いがする程度ですかね

  • VRChatを起動する時の描写をリンクスタートくらい細かくする

    • 👈これもあんまりやってないですね、ヘッドセットの機種とか人にもよるし、その代わりアバターやギミックの描写に力を入れました

  • 昔のVRChatあるある

    • ネームプレートが古い

    • 日本語クイズがまだない

    • メニューUIも古い

    • Udonがない

    • メタバースやNFTという単語が普及していない

    • ファンタジー集会場が消える瞬間に立ち会う

    • コネクトステーションに入る

    • MEROOMの色んなバージョンに触れる

    • cameraが古い

    • Udonがない

    • SDK3じゃない

    • 👈可能な限り入れつつ、特にコネクトステーションは中盤の描写のために詳細に書かせていただきました

  • VRChatで遊んでいると使うツールはどんどん取り入れたい

    • Discord

    • BOOTH

    • Twitter

    • 👈極力入れました、ただ2022年の僕はまさかTwitterがXになるなんて思ってませんでした

  • 自分のアカウント/アバター/ワールドを削除して自己犠牲平和END

    • 👈VRChat再放送局とももちゃんに置き換わりました

  • Pixivやカクヨムに小説として出すより、note記事で実際に起きたこと風に書いたほうが楽しいかも

    • 👈これは下で細かく書きます

もっとnote記事っぽい書き方で画像や偽ツイートも交えて、実際にVirtual Diffusion事件が発生した風にしようかな、とも思ったんですが、試しに書いてみると下みたいな感じで三秋縋さんのスターティング・オーヴァーの出来損ないっぽくなっちゃいました。

何でこのVirtual Diffusionが今はももちゃんって呼ばれてるかって、うーんこれは話すとちょっと長いんだけど……
Virtual Diffusionは、全世界で1つっていうわけじゃなくて、各Region――VRChatでインスタンスを選ぶときに出てくる国や地域で学習データを分けられていたんだ。
だってせっかく日本語で学習させても次の日アメリカ人に英語で学習させられたら意味がないだろ?
だから、日本人向けに日本Region版のVirtual Diffusionっていうのが分けられていた。
それでVirtual Diffusionがリリースされて1週間経ったくらいのときかな、とある日本人ワールドにVirtual Diffusionが現れたんだけど、運が良いのか悪いのか、それがアバターテストをしている人がいるインスタンスだったんだ。

出典:下書きにあった、三秋縋かぶれバージョンの一節

これだとちょっと読者が読み進めづらいかと思い、今の一人称小説形式になりました。ただ、それでも完全に商業文学のような文体にするのではなく、ある程度note記事っぽい口語調にしているつもりです。

(ちなみにかつて三秋縋さんの三日間の幸福の二次創作を書いたりもしていました……。)


イースターエッグ

小説には僕の思いつきでいくつかイースターエッグもどきを入れました。
自分で発表しちゃうのすごい恥ずかしいんですが、一応一部の方が気づいてくれたのと、僕の作品は別にそんな隠し事するほど高尚なものではないと思うので、自分から言っちゃいます。

気になった人は下を読まずに自力で探してみてください。
もう1回読んで見つけてくれたりしたら嬉しいなぁ。







タイトル

上述の通り僕は三秋縋さんが好きなので、どこかに取り入れたいと思い、スターティング・オーヴァーの原典十年巻き戻って、十歳からやり直した感想のタイトルにリスペクトを込めてタイトルに「感想」の文字を入れました。
当時上記5chスレッドがあくまで実体験の体で進行していたのと同じ感じで、実体験風noteになったら嬉しいなぁという気持ちもありました。

僕がこれからする話は、多分、君が想像しているのとは正反対の話になるんだと思う。
(中略)
これは、二十歳の誕生日を迎えた僕が、十歳まで時を巻き戻されて、再び二十歳になるまでの話だ。

三秋 縋. スターティング・オーヴァー (メディアワークス文庫). 株式会社KADOKAWA.

僕がこれからする話は仮想世界フィクションノベルの話だけど、きっとこれを読んでるみんなは仮想世界バーチャルリアリティの話なんて慣れっこだと思う。

これは僕がVRChatでタイムリープに成功して、失敗した話。

VRChatでタイムリープに成功して、失敗した感想

章のタイトル

章のタイトルは遊びとかっこつけの余白があったので、いろいろ試してました。

『3. Untrusted User』
これは作中の狂人とVRChatのTrusted Userをかけ合わせたダジャレです。それだけです。
Nuisanceも考えたんですが、こっちのほうがかっこいいと思って採用しました。
ちなみに狂人のキャラについては、特に元ネタがあるつもりではなかったんですが、今思い返してみると執筆時に見ていたエッジランナーズがきっかけで始めたCyberpunk 2077の、「ジャッキー・ウェルズ」から無意識に影響を受けたのかなと思っています。

『4. Partially Offline』
『5. Passing Through』
これもし自力で気づいた人が居てくれたら嬉しいですね。一番嬉しいかもしれません。
歴代のVRChatのワールドロード画面のBGMです。
僕はPartially Offline世代じゃないんですけどね。

『8. 過去を壊せ。思い出を壊せ。世界を前に進めるために。』
これはヨツミフレームさんの「PROJECT: SUMMER FLARE」の引用です。

『9. Dystopia&Fantasy』
これは1619Hzのワールド情報に書かれていた文章です。
ワールド作者がどういう意味で書いたのか、僕には知る由もありませんが、9章はももちゃんの若干ディストピア地味た思想と、それに対峙する小説展開があったので意味もそんなに外れてないかと思い、入れました。

1619Hz#

ちょっと余談ですが、1619Hzは以下のインタビュー記事によると1619kHzという曲から構想されたようです。作中の主人公と同じく僕はこの時代の知見がないのであまりわかったようなことは言えませんが、純粋に曲が素敵なので紹介しておきます。

あとは章のタイトルで『アンドロイドはVR睡眠で夢を見るか?』とか考えたんですけど、なんか「そういうのを言いたいだけでしょ」感がすごかったのと、別に彩麗ももちゃんが自我に目覚めるのが軸の話ではないので、除外しました。
彩麗もも視点のスピンオフをもし書くことがあったらそのタイトルとかにしようかな。

ポピ横の狂人

小説を書いてしばらくしてから教えてもらったんですが、てれかすさんの曲にポピ横の狂人という曲があります。小説の中で、「ポピー横丁に入り浸る狂人」というキャラが出てきますが、これは完全に偶然です。知った時はびっくりしました。
後述のエイプリルフール映像に採用させていただきました。
素晴らしい曲なので紹介させていただきます。



演出について

VRChat小説として解像度を上げるために書いた描写の中で、特に自分が気に入ってるものを書こうと思います。この項目に関しては完全な自画自賛ですね。

でもjoinするとそこには知り合いがいなかった。Socialを見ても誰もいない。
よくあるSocialのラグか、たまたまみんながどこかに移動した直後だったのか。誰もいないインスタンスに数本のQvPenと他愛のない文章が空中に散乱しているだけだった。

せっかくならVRChat小説でしかできない風景描写をとことん行いたかったので、画になるような「あるある」を突き詰めました。
現実世界と違って雨とか昼とか夜とかそういう演出ができない分、QvPenや書き置きを使ったらそういう演出の代用ができるかなぁと思いました。

新作アバター、イベント告知、ハンドトラッキングあるある、診断メーカー、ロマンスの神様、テレビ出演告知、彩麗もも予報bot、お砂糖報告、VCC導入手順、おすすめシェーダー設定、VRC漫画……平日の昼にも関わらず、いろんな情報が下から上に流れていく。

読んでいる人と主人公が同じ目線に立てるように、VRChat内だけではなく現実世界での描写にも気を遣いました。現実描写が長くなると読んでて飽きちゃいそうだったので、VRChatと現実をつなげるためにTwitterを挟んでいます。
2023年だったらTwitterのタイムラインはどんな風になっているだろうと思いながら、執筆当時出たばかりのハンドトラッキングやVCCを書いてみたりして妄想してました。今読み返してみたら僕ここでお砂糖に一応言及してたんですね。

【2024/05/31追記】上のシーンの直後、主人公のTwitterで動画が流れてくるシーンが以下なんですが、

『昔のVRChatの録画見つけたんだけどクソ懐かしいwww』
そんな文章とともにその動画は自動再生された。
画面に表示されたのは、どこかのイベントの集合写真撮影風景。VRChat撮影動画特有の揺れる視界の中で、楽しそうに横に並ぶ参加者。今ではあまり見かけないアバターがたくさん見える。参加者の頭上に浮かぶネームプレートはいろんな色でカラフルに重なり、視界の端から伸びた手が、古いデザインのカメラを手に取って集合写真を撮影した。

ちょうど似たようなツイートが流れてきたので貼っておきます。
昔のVRChatを映像で見たことない人はこの動画を見ると主人公の気持ちに感情移入できるんじゃないでしょうか。

かつて自分が実際にフレンドから初心者案内を受けた、あの時と同じ状況。
まだ黄色ではない緑色のディスプレイネームが彼の頭上に浮かんでいた。
(中略)
中に入って、白い板にカラフルなボタンがついたプラスチックのおもちゃのようなカメラを起動して、黄色いボタンを2回Useする。
(中略)
フレンドは振り向き、フルトラの足の動きを止めて首を傾げた。
Dynamic Boneが設定された金髪が曲線を描いて揺れる。

2019年の初心者案内にダイブするシーンは、特別な時間が流れるような印象深い場面にしたかったので特に描写を濃くしようと思いました。
そして2019年ならではの描写も出来たら良いなと思い、ディスプレイネームがまだカラフルだった、そして黄色ではないということはフレンドではない、カメラは当たり判定がシビアな黄色い部分を押さないと固定できない、当時はPhys BoneじゃなくてDynamic Boneの時代……という風に情報量もりもりにしていきました。ここは書いててかなり楽しかったです。(アバターではなくワールドギミックが揺れているのでどのみちDynamic Boneではあるだろ、というツッコミはさておき……)

2019年11月、[JP] Tutorial World。

ロード画面が0%から100%になり、ワールドが読み込まれた。
joinしてあたりを見渡す。スポーン地点に日本語クイズは存在していない。
まだ紫色の割合が大きかった頃の壁がこの世界を囲んでいた。
オレンジに光る星の空を見上げて懐かしんでいると、急に横から声が聞こえてきた。
(中略)
僕が追いかけながら階段を登ると、フレンドは紫の柵の上に立ち、フルトラの足を器用に動かしてバランスを取っている風の動きをした。

僕はそれを下からしばらく眺めながら、この初心者案内が終わってしまうことに寂しさを感じた。

このあたりは2019年当時の[JP] Tutorial Worldを再現して描写しています。
オレンジの星?紫の柵?と疑問に思った人はこちらのワールドに行くと追体験が出来るかもしれません。


彩麗もも

彩麗ももことVirtualDiffusionJPですが、登場させるにあたって単純に名前をつけて無機質なAIキャラとして出すよりは、VRChatで実際にありそうな現象にしたかったので、「マテリアルエラーきっかけの事故の産物」「VRChat民全体の集合意識に影響されてアバターが日々変わっていく」という展開を作りました。
これは本編で言及されている通り遺伝的アルゴリズムで最高にエッチな画像を作ろう!にかなり近いです。髪色が偶然近かったことも大いに助かりました。

あとは「VRChat内で広く知られているピンク髪のキャラクター」として、バーチャルマーケットのVketちゃんが先行して知られていたのも影響は少なくないのかなと思います。

余談ですが、僕は2023年の3月に周りから勧められて、遅ればせながらアスタリスクの花言葉をクリアしました。
僕は制作者のヨツミフレームさんが大好きなものの、アスタリスクの花言葉だけは適したタイミングが作れず中々行けなかったんですが、私立VRC学園のクラスメイトと良いタイミングで行くことが出来ました。
周りの人から「ももちゃんって、てっきり『***ちゃん』からインスピレーションを受けたと思っていた」と言われるほど、本作と親和性の高いものが待ち受けていました。未クリアの方はぜひ行ってみてください。

作中の年である2023年に実際になってみると、Stable  DiffusionよりもChatGPTの方がよく目にするし、Stable Diffusionはそもそも画像生成AIだし、『VirtualDiffusionJP』というのは良くも悪くもかなり「2022年」っぽい名前だなと思います。Diffusionって言ってるけど全然拡散モデルと関係なさそうだし。ただ、「VRChatGPTJP」にするとそれはそれで逆に収まりが良すぎて違和感もあります。
ChatGPT前夜の2022年に書かれたからこその、荒い未来予測の「歪み」みたいなのが案外良いのかも知れません。

あと2023年の3月に突然VRChat日本語公式のTwitterアカウントが誕生して、テンションの高い敬語調でももちゃんの面影あって可愛いなぁと勝手に思っています。
おはぶいちゃ!

勝手に作った設定資料集。

コンピレーション・アルバム

ももちゃんロスで寂しくなった時に聴くために、勝手ながら本作に合う既存の曲を選んでプレイリストを作成しました。
VRChatで居場所がないと感じたときによく聴いてます。

軽く選曲理由も書いておきます。

■米津玄師『砂の惑星』
ハチが卒業して米津玄師となり、当時のニコニコ動画に対して冷笑や諦め、期待を混ぜて作られた楽曲です。
VRChatに飽きたと言いつつも、ついVRChatに入ってしまい、何かを期待して待ってしまう冒頭の主人公に近いかなと思っています。

■くちばし『私の時間+16.0』
黎明期のニコニコ動画で、リリース直後の初音ミクを等身大のバーチャルシンガーとして歌わせた曲の2023年リメイク。
バーチャルシンガーが今後どうなっていくのか期待がこもった雰囲気は、「彩麗もも」として誕生したVirtual Diffusion JPを見守る日本人VRChat界隈に近いかなと思っています。

■ユナ『Ubiquitous dB』
ソードアート・オンラインの作中でARゲーム「オーディナル・スケール」のバーチャルアイドルとして人気になり、SAOサバイバーの記憶をビッグデータとして学習していくために開発された人工知能、ユナの代表曲。
日本人ユーザーの手によって「彩麗もも」として誕生し、アイドルのように一躍脚光を浴びつつも、AIとして集団知能の暴走に巻き込まれる姿が似ているなぁと思っています。

■てれかす『ポピ横の狂人』
VRChatでも屈指の人気を誇るてれかすさんの楽曲。当時のVRChatの哀愁やあるあるを語った歌詞が、「ポピー横丁」が持つ独特の雰囲気と相まって心に沁みる曲です。
新しい波に嫌気が差していた主人公の前に現れたのも、古き良きVRChatの雰囲気を漂わせる古参ユーザー、「狂人」でした。

■Creepy Nuts『二度寝』
昭和への懐古をテーマに制作された、ドラマ「不適切にも程がある」のテーマソング。昔話をモチーフにした歌詞が散りばめられています。
「過去のVRChatに浸りたい」、「タイムマシンがあればいいのに」、主人公のそんな思いが、VRC再放送局を作り出しました。

■不可思議/wonderboy『Pellicule』
故人となった不可思議/wonderboyさんが、当時サッカー選手になるために海外に行った友だちに向けて、久しぶりに会った想定で話しかける楽曲です。
選んだダイブ先で主人公を待っていたのは、かつて自分を初心者案内してくれた「フレンド」でした。

■MOROHA『革命』
居心地の良いぬるま湯で現実逃避をしている自分と決別し、辛いながらも外の世界に向かう曲です。
ダイブ先でフレンドに諭された主人公は、今のVRChatと向き合わない自分自身と決別し、VRC再放送局を削除して彩麗ももに会いに行くことになります。

■Chouchou『1619kHz』
かつてセカンドライフで人気を博したアーティストが書いた楽曲。昔VRChatで隆盛を極めていた「1619Hz」のインスピレーション元となりました。
主人公はかつて賑わっていた牧歌的なワールドにたどり着き、降り注ぐパーティクルの下で彩麗ももと言葉を交わしていきます。

■神田沙也加『地球最後の告白を』
故人となってしまった神田沙也加のボカロカバー追悼盤アルバム。
恋を自覚できないまま、全てを失った後で今更想いを告白する楽曲です。
主人公は、彩麗ももとの別れ、自分自身のVRChatへの想い、会えなかったフレンドとの再会を経て、ようやく「VRChat始めました」と言えるようになります。

■shimtone『輝き』
Omnipresent virtual worlds.
どうか2人が安らかでありますように。


頂いたご感想

反応が想定の何倍も多く、そして濃かったので、代表的なものをここにまとめて、たまに読み返してにやにやしようと思います。

『感動』『泣いた』
ありがたいことに、一番多かったです。
僕は構想段階こそ自分でも感動していたんですが、書いてる最後の方は無限に修正したくなる気持ちと、公開後の反応が怖い気持ちで押しつぶされていたので、もはや客観的にあの内容で感動するかどうかは判別つきませんでした。読んだ方の感情を明るい方向に動かせたのであれば本当に光栄です。

『一気に読んだ』
結構この言い方をしてくださる人が多くて、途中で飽きたり離席しない展開を一応書けたのかな、と自信に繋がりました。
あの小説30000文字あって、走れメロスが10000文字なのでメロス3往復分ですよね、あの長い文章をみなさんよく読んでくださったなぁと思っています。

『解像度が高い』
作中でVRChatのワールドを登場させるときや、アバターのふとした所作を書くときに「VRChat小説ならではみたいなことしてぇ!」と思って意図的に細かく描写していたので、この感想を見たときは「計算通り」って感じのドヤ顔になりました。上述の通り、僕の執筆の本来の動機で言うと感動よりも解像度に着眼していただくほうが想定内という感じですかね。嬉しいです。

『いま書かれるべき小説。そしていま読まれるべき小説だった。』
僕が2023年を舞台にしたのは、すぐ先の未来を描きたかったからです。
2022年後半の今だからこそ、読むことで没入感が上がるだろうなぁとは思っています。

『最近ずっとVRC行けてなかったけど、勇気をもらいました』
『自分も最近joinできてないのがあったので...またVRchat始めてみようかなって思えました』
『とてもとても良い読み物でした。ありがとう。なんだか親友に会いに行きたくなる話でした。』
これは僕が想定していなかった反応でした。
たぶん主人公がフレンドに初心者案内されるのを追体験してるシーンで自分自身の過去を思い出してくれたのかな、と思います。
ある意味1番届くべき相手に届いたというか、もしVRChatになんとなく行けなかった方々が僕の小説をきっかけに入ってくれたのであれば、同じVRChatterとして本当になによりです。

以下は長文でいただいた感想です。

『一気に読んでしまった。昔のVRChatと現在のVRChatそしてちょっと先の未来にありそうなVRChatが混在する不思議な世界観が癖になる。』
『フィクションノベルとは思えないほどーーー本当に思えないくらいどこまでもリアリティに溢れていた。自分も20年4月開始組でまだメタバース云々言われる前からこの世界を見ているのもあって共感できる部分が多かった。』
『あったかもしれないもしもの世界、どこか聞き覚えのあるワールド、いつの日か会ったことがあるような気がする登場人物。これを読んだ貴方は何を思うのか。 全てのVRChatterに読んで欲しい作品です。』
『ペイル・ブルー・ドットみたいな物語だった』
『間違いなく傑作だった。長谷敏司のMy humanityなんかを思わせる、テクノロジーの発展、つまりはある種の「現代の」プロメテウスを媒介にヒトの在り方、心や魂を描く硬派なSF作品。 2009年に彼岸に渡った伊藤計劃が帰ってきたかと思った。 ぼくはいつのまにか泣いていた。』
『VRChat版『モレルの発明』みたいな話でおもろかった。VRCとノスタルジーって親和性ありますよね。』
『小説やフィクションノベルじゃない、これはVRChatの歴史書だよ』
『丁寧で面白い感想だった。記憶を追体験すると付随する負の感情が想起される描写が真に迫っていて良い。VRCの録画を見返していた時期があったので、同じ場面を繰り返す事への救いや苦しみを知っていたので臨場感を持って読めた。』
『マクロ的に見るvrchatterは懐古こそすれ、過去に対して徹底的に薄情であるという皮肉的な主題だ。かつて消えていったコンテンツを惜しむ間もなく、過去というコンテンツに昇華し、忘れ、その過程で人間関係を構築していく。かつてあったコネステやファンタジー集会所、名前を言ってはいけない某Shrineも消える瞬間は皆に惜しまれつつも消えていったけど、すぐに模倣されてコンテンツとして消化され、人間関係だけ残った。昔は良かった、ちゅってるけど結局過去へのリスペクトってあんま無いし、結局コンテンツは人間だよね。』
『他作品があくまで人間の本意とは違う偏ったラーニングが問題であってAIを悪として書いた面があるのに対し、この作品ではラーニング元が完全に人間の思考からであり、暴走した人工物と言うより暴走した集団知能のイメージを強く受け取った。しかもそれが的をしっかり射ているような。そういう面でももちゃんは明るい光のVRChatterやお気持ち全開の闇VRChatterの二面性を持って、この世界におけるVRChat観を教えてくれる。すげぇ!』

こういった書籍の講評や帯コメントみたいな感想にすごい憧れてたので、とても嬉しいです。

そのほかの感想はこちらの引用RTにたくさんいただきました。皆さんありがとうございます。

あと感想とはちょっと違うんですが、小説のツイートをいいねしてから30分後くらいにRTしてくれる方が結構いて、所要時間的にちゃんとその時間で読んだ上で広めてくれてるんだなと嬉しい気持ちになりました。

以下はファンアート、ファンムービーなど。

11月6日にファンイベントを行った際には、たくさんの人から感想と考察をいただきました、ありがとうございます。

【2024/11/16】追記
第1回バーチャルシナリオ大賞【短編部門】の最優秀作品を受賞いたしました!ありがとうございます!

朗読会のアーカイブです。


追いついてくる現実世界ノンフィクションたち

作中に登場した彩麗ももちゃんですが、もしかすると割と近い未来なのかもしれません。
VRChat内でAIを動かそうという試みが結構あるみたいです。

【2023/09/06 追記】
ML集会さんの「P-AMI<Q>」というAIお披露目イベントで、自立してVirtualDiffusionのような挙動をするAIに会ってきました。
1人で勝手に感動して手を振ってたら、野良の人から「えなんかこんな小説あったよね?最後初心者案内するやつ」と言われて、涙出そうなくらい嬉しかったです。

【2024/05/24 追記】
侵食してくる桃色。

【2024/06/12 追記】
PublicをさまようAIプレイヤーが。
周りの人に未熟さをいじられながら学習していく感じ……偶発的なおもしろ展開がネットで話題になる感じ……まさに思ってた通り……良い……。

【2024/06/29追記】
VRChatのインスタンスデータを3Dで保存する技術もちらほら聞こえ始めています。

VRChatここから始めました

作中でVirtual Diffusionがリリースされた頃である2023年1月7日に、「VRChatここから始めました」というワールドをVRChatにアップロードしました。

結果的に作中のVRC再放送局に近いようなコンセプトで作っていて、本作「VRChatでタイムリープに成功して、失敗した感想」を全編読める小説ギミックや、実物大のももちゃんペンダントも置いてあります。
ももちゃんの慰霊碑的な目的で参拝することが可能です。

詳細については以下の記事をご覧ください。

エイプリルフール

2023年の4月1日から、小説の最後の部分に以下の動画を添付するようにしました。

これは同日のエイプリルフールネタとして以下のツイートを行うためでした。

よくあるエイプリルフールの偽映画予告ネタみたいな感じで出したかったんですが、技術的に作成できるのは本編や予告ではなくエンドロールだったので、小説の最後に〆として見れるようにしました。

動画の内容は、小説のラストの部分からほんの少しだけCパートが広がればいいなという思いで作成しています。
視点は主人公、曲名は狂人、映像はフレンド、声は彩麗もも、と少ない登場人物を我ながらうまく分業できたかなと思っています。

動画の最後の部分は、撮影時には特に何も決めず適当に撮った映像を使用したのですが、「あの後主人公がフレンドに何があったのかを話して、それを聞いてもらっている風景」にも見えるな、とか思っています。
フレンドの性格の良さが出てて良いなぁ。

「エンドロール付きの小説」ってどういう体験を生むか想像がつかないので、今後新しく読んでくださる人の感想が楽しみです。

謝辞

今回の小説では作品の取り扱うテーマや演出上、さまざまなVRChatコンテンツの実名を使用させていただきました。
こちらの記事を参考に、実名使用は原則問題ないと判断したんですが、もし不都合などありましたらご連絡ください。

FUJIYAMA

MEROOM

Exhibition˸ 1٪ of Virtuality

ポピー横丁-Poppy Street-

[JP] USiOPORT ウシヲポート

[JP] Tutorial world

1619Hz

VRC放送局

『カリン』-Karin-

#VRChat始めました

以上です。
なんか小説と比べて気を張らずに書けたのですごいのびのびできました。文化の日にこの文章を書けたことが誇りです(?)。
感想や考察はいつでも大歓迎です。

最後に、僕の小説を読んでいただいて、改めてありがとうございます。


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