
建築士である僕の自邸について
建築士である僕の自邸について書いてみる。
自邸「坂井東の家」は新潟市西区の西川という川沿いに建つ2階リビングの住まい。コロナ禍だった2020年4月に竣工した。思い返すとかなり懐かしい・・・
トップの画像は竣工してすぐに、新潟市にあるフローリング屋さんのand wood遠藤さんに撮影していただいたもの。ミズナラのフローリングの色がキレイなので、僕も気に入っている一枚だ。
家のお気に入りポイントは、西川沿いに広がる景色を見渡せるコーナー窓と造作ソファー。ちょうど上の写真がそうだ。手前にある電信柱が少々気にはなるが、特に春は向かいの公園の桜並木がキレイだし、今は新潟市に伐られてしまったけれど土手の法面に生えていたモクレンの花が超絶美しかった。
一年中、家族みんなこのソファーに座ってくつろぐ。サッシは樹脂製でトリプルガラスにしているため、今の時期でも全然寒さは感じない。子どもたちは出窓の窓台を机がわりにしていたり、そこに座ったりして自由に過ごしている。そんな様子を見ていると、自然素材で作る自由な家に住まわせてあげれて、本当に良かったと感じている。
ガラスはLow-Eガラスなので、日中は光が反射して室内が見えにくい。そのせいか、年に数回「ドン!」と鳥がぶつかってくる。

もちろん、所属する会社ノモトホームズで建てた。設計者は自邸で様々なチャレンジをするものだ。だから僕も例に漏れず、様々なチャレンジをした。
基本設計は建築家の伊藤さんと僕。敷地を見に行ったあと、どこだったか喫茶店でプランを作った気がする。
坪単価も決して安くないエリアだったが、敷地面積34坪のため土地費用を抑えることができた。変形5角形の不整形敷地で、3方が道路になっているというクセ強案件で面白い。最初にGoogleマップで敷地を見てほぼ即決だったけれど、一応不動産屋さんに仮申し込みだけして一週間だけ時間をもらって、間取りが取り切れるか検討した。
建築をやっている人間ではない限り、即決しないだろうなとは思っているし、むしろ建築が好きな設計者なら燃える(俄然やる気が出る)だろうなという敷地だ。
家づくりの総予算を抑えるには、いかに土地を安く仕入れるかが重要だ。自邸づくりを通してそのことを強く実感した。
予算配分は絶対に建物にまわしたほうが良い。「住めば都」とはまさにそうで、例え100点ではない土地で何かしらのマイナス要素があったとしても、建物の設計を頑張れば満足度の高い暮らしが送れることは間違いない。北側に道路があって、南側の庭が十分に取れなくても、建物の設計を頑張れば豊かな暮らしだって実現できる。
自邸は敷地面積34坪でも十分な面積のある間取りが作れたし、大雪や暴風雨でもビルトインガレージは快適だし、子どもたちは室内で走り回っている。猫の額ほどの庭も管理がしやすくて、雑木や景石を置いて楽しんでいる。
元々敷地には40cmの高低差があった。スキップフロアの空間構成とすることで、玄関からリビングまで、一筆書きで螺旋状に空間が連続していき、終点が先述のコーナー窓になる。
場面の移り変わりのことを建築用語でシークエンスと言うが、このシークエンスのバリエーションや変化が大きいと、建築は楽しくなる。ワクワク感が増すからだ。
自邸も玄関からコーナー窓まで空間が連続的につながっていくが、視線は上がったり下がったり、回ったりして最後は西川沿いの景色へと視線が抜け、場面が展開されていく。

キッチンはダイニングよりも床の高さを40cm低くしている。ダイニングに座っている人と、キッチンで作業している人の目線が大体合うので、コミニュケーションが取りやすい。写真右手の食器棚は、天板をオークの無垢板にしているが、料理ができるとここに置いて、それをダイニングにいる人が受け取って配膳する。使い勝手の良いカウンターだ。
キッチンの窓からはお向かいのお宅の庭と、道路が見える。僕は料理が好きなので、料理をしたり洗い物をしたりしながら良くこの窓からお向かいの庭の緑と、道路を散歩する近隣の方々の様子を眺めるのが好きだ。

自邸は31坪の家だが、玄関とそれに付随する客間(和室)がかなり広い。玄関土間には子どもたちの自転車や、メダカの鉢が3つ、靴が何足も出ているくらい、広い。
和室は現状ほとんど使ってなくて、たまに親戚が泊まりに来てくれた時は布団を敷いて寝てもらうくらい。密かにここを僕の書斎にしたいなーとは企んではいるが、畳なのでどうやって机を置こうかと思案しているところだ。
この和室は現状、あまり実用的ではないかもしれないが、これからのライフスタイルの変化にも対応できそうだし、いつかギャラリーにしても良さそうだし、劇場のホワイエやホテルのロビーを想像すると、こういう“ゆとり“の空間が家の中にあると、家全体がおおらかになる気がする。そういう意味では作って良かった。
他にもこだわったところやチャレンジしたところはたくさんあるが、またの機会にご紹介したい。ノモトホームズの施工事例にも竣工写真をアップしているので、ぜひご覧いただければ嬉しいです。