【歴史本の山を崩せ#028】『王安石』小林義廣
《頑固一徹に己を貫こうとした改革者》
王安石は中国北宋時代の宰相。
山川世界史リブレット人の一冊です。
とにかく頑固一徹で我が強い。
自分が正しいと思えば相手が誰であろうと決して譲らない。
その性格が故に、数々の批判を受けながらも新法と呼ばれる革新的な諸政策を断固として推進できたといえるでしょう。
同時に多くの政敵を作ってしまったのもまた事実。
徐々に求心力を失い、政治の中枢から離れると彼が心血を注いだ新法は、旧法派によって次々と廃止されていくことになります。
そんな彼の生涯と新法の代表的な政策をピックアップしてコンパクトにまとめています。
彼が生きた北宋時代は中国の歴史上一大転機と見做される時代です。
科挙が整備され、理想に燃える儒教官僚たちが活躍しました。
体制教学化して、経書の解釈ばかりに終始し、思想として完全にゾンビ化していた儒教を、もう一度蘇らせようとした儒者たち。
王安石もまたそのひとりです。
彼の政策を支持した新法派も、反対した旧法派もそんな儒教官僚です。
命がけで政策論争を闘わせた両派ですが、政策に対する立場こそ違えど皇帝権力の強化と帝国の富国強兵という目標は共有していたという点は面白いです。
これもまた、当時の儒教官僚の特徴といえるでしょう。
政敵の多かった王安石は死後、長い間、その短所ばかりが批判されてきました。
清代になってようやく彼の功績を改めて評価する機運が生まれてきます。
彼は果たして、独善的な政治家だったのか、それとも早すぎた改革者だったのか。
時代によって、社会情勢によって、ひとの功績に対する評価は揺れ動く。
王安石に対する後世の評価はそんな歴史の揺れを見せてくれることでしょう。
『王安石』
著者:小林義廣
出版:山川出版社(山川世界史リブレット人)
初版:2013年
定価:800円+税