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ローカルな歴史を楽しむデザイン「縄文不動産」の舞台裏👣

愛知県の豊田市博物館にて、2024年10月12日〜12月8日に開催中の開館記念展 「旅するジョウモンさんー5千年前の落とし物ー」にて、「縄文不動産」という企画をお手伝いさせてもらいました。

企画の狙いや実際にやったこと、お客さんの反応をご紹介できたらと思います!
(2024年11月24日時点。随時更新中です!)


「縄文不動産」とは

生活の中で身近な「物件探し」「縄文時代の住まい」を組み合わせて、歴史資料に興味を持ってもらうための仕掛けです。
WEB版「縄文不動産」はこちらからご覧いただけます!

縄文不動産とは:縄文時代を身近に感じてもらう仕掛け

例えば、「石囲炉」という炉や、「貯蔵穴」という食料保存のための穴が発見された竪穴住居跡は「コンロ・冷蔵庫付き一軒家」という感じで、遺跡を現代の物件のように紹介します。

ポイント①:物件探しができる
ポイント②:リアルな物件探しを疑似体験



縄文不動産のきっかけ

きっかけ

きっかけは2つです。
学生時代、博物館の展示を研究テーマにしており、「歴史」や「文化」などの情報をどう解釈するかで、伝わりやすさや面白さが変わるということが関心でした。
社会人を経て、現代の私たちが慣れ親しんでいる「サービス」のフォーマットに当てはめることで、身近に・シュールに当時の生活に親しめるのではないかと思ったことがきっかけの一つです。

もう一つは、大河ドラマの影響で、聖地である史跡を巡る中で、歴史を感じながらその地で暮らす想像をしたことが始まりでした。
もし歴史から住む場所を選べる不動産プラットフォームがあったら面白いのでは?」というアイデアが生まれ、豊田市博物館の学芸員さん達にシェアしてみたところ、実際の展示にしてみようという動きが生まれました。

詳しくは、美術評論家連盟会員の市原尚士さんの素敵な記事で紹介していただいています!

参考にした書籍・コンテンツ

上記のような経緯から、「歴史はただの情報ではなく、人の心に深く関わるものだ」と強く思うようになりました。
そして、これまで触れてきた書籍やコンテンツ、お世話になった方々との対話などから今回のアイデアに至りました。

縄文不動産に込めた思い

  1. 歴史を通じて、現代の価値観を超えた「くだらなさ」を楽しむ
    家賃や効率、駅近といった実用的な基準を一切気にしない、新しい価値観で「ここで暮らすのってちょっと面白いかも?」「そういう見方もあるな、この物件良いのかも」と肩の力を抜いて楽しめるような展示にしようと考えています。
    実在しないものをリアルに錯覚することで、「史実」を身近に感じて楽しんでもらうことを目指しています。

  2. 何と比べるでもなく、地域が素敵に見えるきっかけを作りたい
    なんとなく世間一般の価値観として、出身地や住む地域のことを「何もない」と紹介してしまう風潮があり、それが観光地や産業といった経済的な価値を基準にしていることに、少し寂しさを感じることがあります。
     自分の住む地域が観光地として有名でなくても、経済的な価値にとらわれなくても、「静かで平和な生活」「シュールでおもしろい」「ほっこりする」「クスッと笑える」といった理由で、何と比べるでもなく素敵に見えてくる、そんなきっかけを作りたいという願いを込めた展示でした。

制作プロセス

①企画のすり合わせ

この段階では、プロジェクトの方向性を固めるために、博物館の目的や意図を確認し、展示内容や制作物がその狙いに合致しているかを議論しました。
「縄文時代の竪穴住居」という史実を、「現代人に馴染みのある物件探し」にあてはめることで、興味喚起や、取り組みとしての新しさを感じてもらえるのではないかという点で、目的に合致しているという結論に至り、プロジェクトが始動しました。


②「史実」を現代に近づけるワークショップ

実際の不動産広告と遺跡情報を比較しながら、遺跡情報を「現代風の物件情報」に変換するワークショップを実施しました。

  1. 不動産メディアの収集
    実際の不動産広告やフリーペーパー、旅行誌などを集め、現代の不動産情報にどのような要素が含まれているかを分析しました。

  2. 遺跡情報の翻訳
    縄文時代の遺跡の特性を、「駅からの距離」「周辺環境」「住んでみた感想」といった現代の不動産の観点に置き換えることで、斬新かつ親しみやすい形にしました。この翻訳作業を通じて、縄文時代の特徴を楽しめる展示物の基礎を作り上げました。

ワークショップのタイムスケジュール
ワークショップの構成
実際の様子(SUUMOの地元特化のフリーペーパーや、ポスティングされていたマンションのチラシ、縄文を特集した旅行誌などを参考に)
最終的に「竪穴住居」の情報を「現代不動産風」に整理した情報


③クリエイティブの制作

  1. 遺跡情報のピックアップ
    学芸員さんと話し合い、展示テーマに合う「縄文時代中期」かつ、資料が豊富で、現代でも多くの人が暮らしている街中の遺跡を中心に20件を選定しました。

2.遺跡情報のデータ化・現代の不動産情報への置き換え
書籍にしか記録がない情報をデジタルデータとして整備し、扱いやすい形式に加工しました。
また、実際の不動産サイトの情報構成を参考に、遺跡の魅力を「住んだらどんな体験ができるのか?」という視点で具体化しました。(工夫した点はこちらで詳しく紹介しています)

ピックアップした20件の物件情報

3.キービジュアルの作成
プロジェクトの中心となるイラストやビジュアルは、パターン出しやラフにはAIツールを使用し、最終稿では手描きイラストを22点制作しました。
遺跡の特徴と、現代のランドマークを組み合わせて制作しています。(工夫した点はこちらで詳しく紹介しています)


4.不動産チラシとWEBサイトの制作
不動産屋さんに掲示されている不動産チラシや、不動産を探すサイトを参考に、ワークショップで読み替えをした「竪穴住居を現代風に紹介する観点」で、リアルな物件探しをしてもらえるような不動産チラシとWEBページを制作しました。
実際に作成したチラシやWEBサイトを博物館の皆さんで見てもらい、改善点を収集してブラッシュアップしていきました。

試作段階のチラシデザイン

WEBページはFigmaでデザインを作成し、Claudeで画面遷移のドラフトを作成し、Reactで最終実装を行い、GithubPagesにて公開しました。
ドメインはお名前.comにて取得して、GithubPagesから設定しています。

WEBページのサイトマップ

④WEB版・展示・来館後の体験接続

最後に、展示会場とオンラインコンテンツをつなぐ導線の調整を行いました。

  1. 展示とWEBの連携・投票体験の調整
    展示では投票シートを用意して、「自分の住みたい物件」を表現してもらうことで主体的に楽しんでもらえるようにしました。
    館内の体験で完結できるようにしつつも、もっと詳しい情報を展示後も楽しめるよう、WEBサイトを用意して、住んだ人のコメントや、Google Map情報などニッチな情報をWEBに集約しました。
    またWEBサイトからはSNSやLINEでシェアできる仕組みとすることで、友人やインターネット上で紹介してもらう機会を作りやすくしました。

投票シートやSNSシェアの仕組み
全体の展示イメージをBlenderで検討

2.図録やミュージアムショップ展開の検討
関連グッズも制作し、来館者が展示体験を持ち帰って、楽しんでいただけるようにしました。


お客さんの反応

(2024年11月24日時点)

満足度

平均:4.8(約40人回答)

来館者数・参加者数

  • 来館者数:※集計中

  • 投票参加者数:約9000人(推計)

2024年11月24日時点の投票シート

WEBでの反響

縄文不動産WEBページの来訪者数
  • 総閲覧数:2315回

  • ユーザー数:775名

  • 1日平均20-30名が閲覧

SNSシェア

  • X(旧Twitter):15回

  • その他SNS:未計測

コメント(一部抜粋)

キッチンつきとか、担当者とか、笑えて、snsでシェアしました。

愛知県(豊田市以外) / 女性 / 50代

入居者特典とコンロの有無に注目して選べるところが面白かったです

愛知県(豊田市以外) / 女性 / 10代

トヨタスタジアムや冷蔵庫など、縄文と現代を掛け合わせたところ。間取りや設備も良かった。

愛知県(豊田市以外) / 男性 / 40代

遺跡の魅力がわかりやすく紹介されていて楽しかった。

豊田市 / 男性 / 60代以上

豊田市と周辺にこんなに遺跡があるとは知りませんでしたので、知れてよかったです。それぞれ個性的なのも面白かったです!

豊田市 / 女性 / 50代

全国へのアピール

来館者だけでなく、WEBページでは関西や関東など全国からのアクセスが確認されました。規模は小さいものの、全国へのアピールにつながる結果となりました。

主なアクセス地域

  • 大阪:70件

  • 新宿区:29件

  • 渋谷区:27件

  • 千代田区:9件

  • 京都:9件

  • 埼玉:8件

まとめ

 「縄文不動産」を通じて、多くの方から「楽しい」「おもしろい」「笑えた」といったコメントをいただきました。どの地域にも存在する歴史を、少しでも親しみやすく楽しむ切り口として捉えてもらえたことが嬉しく思いました。

 なんとなく世間一般の価値観として、出身地や住む地域のことを「何もない」と紹介してしまう風潮があり、それが観光地や産業といった経済的な価値を基準にしていることに、少し寂しさを感じることがあります。
 自分の住む地域が観光地として有名でなくても、経済的な価値にとらわれなくても、「静かで平和な生活」「おもしろい」「ほっこりする」「クスッと笑える」といった理由で、その地域を好きになってもらえる、そんなきっかけを作りたいという願いを込めた展示でした。
 この展示が、地域の方の目に触れ、地域への愛着や日常の楽しさを感じるきっかけになっていれば嬉しいなと思っております。

この展示を通じて得られた反響にとても励まされ、今後もこのような活動を続けていこうと強く思いました!

最後に

縄文不動産の企画を一緒に広めていただける方を募集しています!

豊田市博物館での展示をきっかけに、全国の竪穴住居を地域の皆さまに楽しんでいただける展示コンテンツとして展開していきたいと考えています。ご興味をお持ちいただける博物館様や自治体様がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください!(💌:mositake@gmail.com

制作物イメージ

制作物イメージ

各館のご状況に応じて、制作物をすり合わせできたらと思います。お気軽にご連絡ください。

  • 竪穴住居を不動産風に紹介するチラシ・パネル

  • (要相談)竪穴住居を使ったグッズ展開

  • (要相談)竪穴住居を紹介するWEBサイト

進め方

以下のように、各館の皆様のご状況に応じて、適宜ご相談できたらと思います。
①お任せパターン:歴史資料をご提供いただき、こちらで制作させていただきます。
②ご自由パターン:縄文不動産を制作するフォーマットをご提供してご自由に制作いただきます。(この場合、今後の「縄文不動産プロジェクト」での展示や冊子制作への掲載を打診させていただきます。)
③一緒にパターン:企画や制作のバランスを相談しながら進めます。

ご用意いただきたいもの

  • 市史などの竪穴住居の図面・周囲の環境が分かる資料

  • 展示資料やグッズ制作の費用

おまけ:縄文不動産に限らず「ローカルな歴史を魅力に変換する」展示企画をしています

その他の制作実績はこちら


この「縄文不動産」の企画をさらに育てて、さまざまな地域で展開し、その土地ならではの愛着を感じられる展示にしていきたいと考えています。
地域ごとの歴史や文化をユニークな形で発信し、訪れる人々がその場所に新たな魅力を発見できるようなプロジェクトを目指しています!

引き続き、この取り組みを楽しみながら続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

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