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vol.2『サラリーマンの手取り給料が減り続ける理由』

■今回の課題図書

『はじめての社会保障~福祉を学ぶ人へ~』 / 椋野美智子・田中耕太郎 (著) 

■「はじめての社会保障~福祉を学ぶ人へ~ 」を読んで得た学び・感想

日本という国は国民皆保険と言われ原則的に日本国民である以上なにかしらの保険に加入することが義務付けられている。このことは、実は世界でみると当たり前ではないことを知った。アメリカなんかはそうではないので、万が一大きなケガなんかすると大金が必要になるらしい。現代日本に暮らしていると、この先の日本は「オワコン」だとか「貧困になっていく」だとか言われるが、世界と比較すると、例えば日本の医療制度は優れていると言われていたりもする。高度経済成長期後の日本があまりに豊かすぎたせいで忘れてしまっているが、現代の世界各国と比較するとこんなに平和に暮らせて、こんなに豊かである国はそうそうないことにも気づく。少子高齢化になっていく国での課題もたくさんあることはわかったけど、将来を悲観するだけでなく、今ある豊かさも忘れないでおこうとも思った。

個人の感想

■今回の「問い」

今回検証したい問いとしては以下。

【問い】
サラリーマンの手取り給料が減っているのは本当なのか?また、それは何が原因なのか?

問い

■はじめに

この問いが生まれる背景として、最近スマホを何気なくみてると、「サラリーマンの手取り給料が減っている!」とか「日本が貧しくなっている!」とかいうネット記事に追いかけられてまして(笑)。
「こんなあおり記事なんか鵜呑みにしまい!」と思いながらも、やっぱり気になるんで実際に調べてみよう、っていうことです。

■サラリーマンの平均給与の推移

早速事実確認のため、平成30年間の平均給与の推移が厚生労働省が発表していたのでみてみます。

令和2年版「厚生労働白書」より

たしかに平均給与自体減ってますね。ここ30年で一番高かった平成6年の465.3万円と平成30年の433.3万円を比較しても、30万円以上(約7%減)減ってますね・・・ショックですね。

■平均所得の推移

でも、まだあきらめません。
メディアは我々に嘘ついて不安にさせたいに違いない。給与(収入)は下がってるかもしれないけど、実は手取り給料は減ってないというカラクリなのでは?
というのも・・・

給与(収入)=所得+給与所得控除(社会保険料控除・配偶者控除など)

給与の内訳

だから。

というわけで、平均所得(手取り額)の平成30年間の推移をみてみます。

令和2年版「厚生労働白書」より

やっぱり、所得も減ってますやん。1世帯あたりの所得なんで多少前提は違うものの、もっとも高かった平成6年の641.1万円と平成30年の514.1万円だと約70万円も下がっている(約20%の減)
・・・ネット記事はどうやら本当みたいですね。信じざるをえない。

■平均給与と平均所得の下がり幅の謎

ちょっと待ってください。おかしくないですか。
平均給与と平均所得を比較すると下がり幅が違うじゃないですか。

【平成6年と平成30年の比較】
└平均給与:465.3万円→433.3万円(約7%減)
└平均所得:641.1万円→514.1万円(約20%減)

給与と所得の比較

手取り額のほうが13%も下がってるじゃないですか!
手取りのほうが減ってるということは「給与所得控除」、こいつが悪さをしてますね。

まさかと思って、財務省から毎年発表されている「国民負担率」をみてみます。国民負担率は、簡単にいうと所得に占める税金と社会保険料の割合のことで以下のように計算します。

国民負担率=(租税負担+社会保障負担)÷国民所得

国民負担率の計算式

上記のように、平成30年と平成6年を比較するとこんな感じ。

【平成6年】
国民負担率:34.9%
└国税(消費税など):14.5%
└地方税(市民税など):8.7%
└社会保障(健康保険、年金など):11.7%

【平成30年】
国民負担率:44.3%
└国税(消費税など):16.0%
└地方税(市民税など):10.1%
└社会保障(健康保険、年金など):18.2%

財務省「国民負担率」

気になる方はこちらが元データになります。

イメージ的には、安部政権下で消費税が10%になったりと、そのインパクトが強いですが、実は2%ほどしか影響していないんですね。実はもっとも上がり幅が大きいのが社会保障費で、約7.5%上昇してます。

この国民負担率を実際の例で当てはめてみると。
例えば、年間所得500万円のAさんがいたとする。それに国民負担率をかけて国に納める金額を算出すると、

【平成6年のAさん】500万円×34.9%=174万5千円
【平成30年のAさん】500万円×44.3%=221万5千円
└差額:47万円

国民負担額の計算

つまり、単純計算ですけど、平成6年のサラリーマンと平成30年のサラリーマンは同じ所得を稼いでも、50万円ほど国に払うお金が増えている(=手取りが減っている)ことになりますね・・・それはお金が貯まらないわけですね。

このように、サラリーマンの手取り額が減っていることは本当のようです。そのなかでも、社会保険料の支払額が増えていることがもっとも大きな要因ことがわかりました。悲しいですが受け入れるしかないですね。

■そもそも「社会保障」とは?

そもそも「社会保障」とは何か。厚生労働省によると、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティネットであり、子どもからお年寄りまで全ての人々の生活を生涯にわたって支えるためのものと定義されます。
また、社会保障は以下のような構造に分かれてます。

◎社会保障の構成内訳
└(A)社会保険(①医療保険、②介護保険、③年金、④雇用保険、⑤労災保険)
└(B)社会福祉(①児童福祉、②障害者福祉、③児童手当、④児童扶養手当、⑤特別児童扶養手当など)
└(C)公的扶助(生活保護)
└(D)保険医療・公衆衛生

厚生労働省さんの図を拝借させていただきます。

厚生労働省HPより

このうち、(B)社会福祉、(C)公的扶助、(D)保険医療・公衆衛生に関しては、保険料などの負担があるわけではないので、上記の国民負担としての社会保障負担は(A)社会保険の部分を指します。

■社会保険料が増え続ける理由

(A)社会保険の何が上がっているのか気なりますね。そこが、サラリーマンの手取りを減らしている根本原因となるわけですね。
厚生労働省さんがわかりやすいデータをだしてくれてました。

厚生労働省HPより:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21509.html

これをみるかぎり、主には「年金」「医療」が特に増え続けてますね。これには、厚生労働省さんも発表しているとおり高齢化の影響が大きいというのが通説です。

また、「保険」というのは、「共通のリスクにさらされる多数の人間が集まって、各々が一定のルールに従ってお金を出し合う仕組み」のことを言います。

現実にリスクが発生する件数が増えていけば(社会保険の場合、一般的には、65歳になることや病気による年金や医療費の支払いのこと)、プールするお金が増えていかないと財源が枯渇することになります。

つまり、高齢者が増えるほど、それに比例して給付額(みんなで貯めたお金から個人に支払われるお金)が増えていくので、みんなで貯めるお金を増やさないといけないよね・・って話です。しかも、今後出し合う人たちは減っていくのです。なので、今後、社会保障負担が減るっていうことは考えづらいでしょうね。

■まとめ

最後にまとめです。問いとしての「サラリーマンの手取り金額が減っている」ということは事実として正しそうであることがわかりました。

また、その要因としてあるのが、高齢化に伴う「年金」「医療」の保険料が上がっているということもわかりました。しかも、高齢者の平均寿命は延び続けてますし、今後もこの傾向に歯止めがかかることはまずなさそうです。
このあたり含めて高齢化に起因する社会課題なんかは、今後もう少し深堀りしたいですね。

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