『天国と地獄』感想
・刑事と犯罪者(=天国と地獄)が入れ替わるというライトな取っ掛かりから、双子の環境格差(=天国と地獄)という本題への転換がダブルミーニングになっていて秀逸。
・たぶん森下氏のいちばん言いたかったのは取り調べでの河原の台詞。
この殺人は、お兄ちゃんの“声”じゃないのか?立場の弱い人間がいかにたやすく奪われ続けるか…そして立場の強いやつらも最後はこういう風に自らが奪われることにもなる…そんなことが言いたかったんじゃないのか!?
やってることは人殺しだ。それでも! 声は声だ…お前にその声を奪う正義はあんのか?
この「立場の弱い人間の声は簡単に奪われる」という訴えは決して無視してはいけないと思う。
・誰も悪者がいない。序盤であれだけ日高をサイコパスの殺人者に見せておきながら、実際は兄を庇うために演技をしていたという口実、ここまで矛盾なく作れるのはさすが森下氏。
・全10話をかけて1つの事件を描く構成のなか、中だるみが一切なかった。基本的には望月、日高、河原の3人がそれぞれの思惑があって行動していくのだが、それをここまで矛盾なく構成できるのはさすが森下氏。特に最終回の取り調べシーンは、河原、望月、日高、それぞれの思惑が交錯する心理戦になるかと思いきや、誰もが最善の結末と言えるハッピーエンドに着地したのはさすが森下氏。