【芝居台本③】昔も、今もアイシテイナイあなたへ。
カーテンからちらちら見え隠れする月明かりが眩しい。
あなたの額から、体全体から流れ落ちた汗が私の頬に、胸にぽつりぽつりと落ちてくる。
いつの間にか寝てしまっていたようだ。
好き、とか。
好きじゃない、とか。
あなただけ、とか。
わたしだけ、とか。
そんなちっぽけなことで傷つけたし、傷ついたふりもした。
もう随分前から外れなくなってしまった指輪を月明かりに照らしてみる。
違う男との指輪を眺めながら黄昏れているわたしに
あなたは気づいている。
寂しい夜だけの約6時間。
あなたは、わたしといるときだけ煙草を吸わない。
わたしは、あなたといるときだけ嘘を付く。
お互い結ばれないことぐらいとっくに理解しているのに、
アイシテル。スキ。と言い合って、ベッドに入り、
くだらないTVを一緒に爆笑して見ている。
そして次の日、何事もなかったかのように、違う女のもとへ、違う男のもとへ帰っていく。
次の約束なんてしない。
これが最後のバイバイになるかもしれない。
そんな事を思いながら見送る。
お互い、恋がナンダ、愛がドウダなんて話はしない。
そんな話はわたしたちの関係を壊してしまうから。
服についた香りが脳の奥を震わせ、あなたを思い出す。
また会えるだろうか。
次あったらあなたはどんな顔をするのか。
わたしはどんな顔をしたらいいのか。
分からないので今はまだ会えそうな気がしない。
次会える日があるのなら、
お互い、恋がナンダ、愛がドウダなんて話をしたい。