のどかな川越の街がわたしにくれた贈り物。
お昼の13時。
わたしは、有楽町線直通新木場行きの電車に乗った。
ぽつん、ぽつんとしか乗客がいない少し薄暗い電車に何故か心惹かれたからだ。
別に、あと8分待って急行に乗ってしまえば池袋に早く着くんだけど、
川越はなぜかそんな気分にはさせてくれない。
のどかな街並みと、清々しい空気がいつの間にか、せかせか生きている私をとろとろに溶かしてゆく。
最近訳もなく疲れていたし、その原因も分からなかったが、今のわたしは全てを悟ることが出来る。
普段は、時間に間に合うように出来るだけ早く到着する電車を選択し、満員電車の出来るだけいいポジション取りに奮闘したり、誰かにぶつからないように、舌打ちをされないように出来限りの早足で駅構内を歩く。
常にギリギリ、常に時間、人に追われている。
たまには、ゆったり帰ってもいいじゃないか。
鳥のさえずりと、ホームのアナウンスしか聞こえない静かな空間がわたしを癒してゆく。
あたたかな日差しが差し込み、わたしの影を写し出す。
その自分の影の小ささに、まだまだちっちゃな子供みたいだな~なんて眺めてみたり、
前に座っている人の大きなキャリーバッグを見て行き先を想像してみたり、
いつのまにか気持ちよくなってうたた寝してみたり、
その瞬間、わたしは誰よりも自由だと思った。
誰も、何もワタシを邪魔しない。
思いのままに生きている。
次は新宿~新宿~京王線、小田急線はお乗り換えです~。
都会にはモンスターが建ち並んでいる。空が狭く、あたたかな日差しは私の影を作らない。
わたしはここに存在しているのか分からなくなる。
そして、またせかせかと歩き出す。