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「12球団合同トライアウトから引退試合へ」〜笑顔で引退した野球人生だったから思うこと〜

初めまして。
別の記事を読んでいただいた方は、いつもありがとうございます。

8月21日に、NPBとプロ野球選手会の事務折衝が行われました。

その中の議題で「12球団合同トライアウトは本年をもって終了する」という方向でNPBからの提案がありました。

詳細は以下のサンスポ様の記事をご確認ください。

本当に不要なのか?

上記記事の中でも触れられていましたが、「このトライアウトを見て選手を獲得することはない」というのが一番の理由になります。

しかし選手会としては、「独立リーグや社会人野球のチームへのアピールの場や、引退前の区切りの場としての価値がある」と話し、何らかの形で残すことを希望しています。

大学まで硬式野球部に所属し、引退試合を経験できたからこそ思うことがあります。

今回はそんな私が記事を読んで思ったことを、率直にまとめていきたいと思います。


笑顔で引退できたからこそ感じる必要性

リーグ戦とは別に大学独自に引退試合をすることも
※横浜国立大学硬式野球部ブログ様から引用

とある連盟の二部リーグの大学ではありますが、私は大学まで硬式野球を続けていました。

高校野球は見るけど、大学野球は、、、という方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、大学野球の公式戦は通常日本中にある連盟ごとにリーグ戦を行っています。

春と秋の2シーズンがあり、それぞれ10試合超程度の試合を2か月程度かけて戦います。

詳細に説明するとそれだけで記事が一つ完成してしまいますので省きますが、そのリーグ戦で優勝したり上位に進出すると、甲子園のように大学生が聖地として目指す明治神宮球場の全国大会に進むことができます。

トーナメント形式だと高校野球のように、全国制覇しない限りは負けて終わりますが、リーグ戦では約半分の大学は最終戦に勝利して笑顔で引退することができます。

例え優勝できない順位であっても最終戦は来ますし、勝っても負けても全国大会には繋がらない場合、多くの大学が最上級生や就活や就職試験のため引退予定の選手を多く起用し、「悔いなく終えよう!」「最上級生の力で最後は勝って笑顔で!」と公式戦を戦うことができるのです。

私も自分の選手としての区切りとなった大学4年生の秋のリーグ戦は、幸運なことに格上の私立大学に延長タイブレークの末勝利し、笑顔で引退することができました。


最後と分かって腹を括って打席に立てる幸せ

親にも引退する最終打席を見せることができましたし、終盤に打席が回れば「これが最後の打席だな・・・。」と分かった状態で打席に立つことができます。

ベンチの応援してくれる仲間や観客席から見守る知人を、打席から見る最後の景色を目に焼き付けながら、逆に打席に立つ姿を目に焼き付けてもらいながら、最後の戦いができる。

投手であれば、ベンチにいる時やタイムをかけた際に、監督から「このイニングまでだから、最後に最高のピッチングをしてこい!」と声をかけることで、悔いなくラストイニングを投げることができます。

私は高校生の時には代打だったため、最終打席は最後と分からずに夏の県大会の二回戦で迎えました。

記録はショートの送球エラー。次の試合ではヒットを打つぞ!と意気込み迎えた三回戦では、代打に備えてベンチ裏で準備をしている時にコールドになり、とても悔しい最後となりました。

だからこそ、大学野球の引退は本当に幸せに感じました。


トライアウトがなぜ必要なのか

2001年から始まった合同トライアウトは、最初は解雇された選手の中で目立つ選手が再度契約を勝ち取ることができる場として注目されました。

しかし昨年のトライアウトでは、「解雇されたけどトライアウトには不参加」という選手もいました。

昨年であれば、パリーグ元セーブ王の森唯斗選手(前福岡ソフトバンクホークス)が解雇されるも、トライアウトは受験せずに横浜DeNAベイスターズへ入団しました。

森唯斗選手
※横浜DeNAベイスターズ様から引用

現役時代の成績や年齢を考慮した場合、「そもそも二軍でたくさん活躍を見ているのだから、トライアウトを見なくても君が欲しい!」と内々に声がかかっているわけです。

リーグを優勝する戦力の充実したチームであれば、低迷している選手からしたら支配下で契約したい選手が解雇されることもよくあります。

では果たしてトライアウトは本当に不要なのでしょうか?


社会人野球・独立リーグの緊急補強

通年では11月に戦力外となり、希望者が12月に寒空の下合同トライアウトに参加します。

その時には当然10月下旬のドラフト会議は終了しているため、社会人野球のチームや独立リーグにとっても、戦力低下が決定している時期になります。

もちろん本人の人生を考えれば若手選手がドラフト指名されると大変喜ばしいのですが、エースや4番など主力選手がNPBに引き抜かれるため、その穴を埋めないと大幅な戦力ダウンとなってしまいます。

そこで12球団合同トライアウトは、正にショーケースとしての役目を果たすのです。

今年都市対抗野球本戦にてチーム初勝利を挙げた小山市・栃木市代表のエイジェック硬式野球部は、元東北楽天ゴールデンイーグルスの内田選手が4番打者として活躍しています。

トライアウトに挑む内田靖人選手
※スポニチ様から引用

NPBで戦力外になったとはいえ、社会人野球や独立リーグではまだまだ戦力になります。

ここで、「元NPBの選手はぶっちぎりで活躍するわけではない」というのがアマチュア野球のレベルの高さを物語っています。

戦力外になった選手が家族を養うため、プロ野球に拘らないのであれば、十分に裕福な生活ができる一流企業への転職が叶うわけです。

この点においては、トライアウトは間違いなくその役目を果たしています。


引退前最後の晴れ舞台

12球団合同トライアウトからNPBへ復帰するのは、育成契約を含めても全体の10%にも満たない狭き門になります。

正直多くの選手が、「これで最後になるな、、、」と感じながら、トライアウトの戦いに挑みます。

それは家族も一緒です。

思い描いた時期より早く別れを告げる、
実質の引退試合となることも。
※TBS様放送「プロ野球戦力外通告2022」から引用

野球をやっている姿がカッコよかったお父さんが、プロ野球選手で無くなる日が来たのです。

その最後の勇姿を目に焼き付けるため、たとえ負け戦と分かっていても、笑顔で送り出すのです。

12球団合同トライアウトが無くなってしまうと、こういう「野球を引退するけじめをつける場所」が無くなってしまいます。

大学野球の時に、高校野球とは違う幸せな引退をしたからこそ、NPBという国内トップカテゴリーで野球をした選手の最後は幸せであって欲しいのです。


現実的なトライアウトの残し方

とはいえ12球団側としての意見は、「もうNPBでお金を出してトライアウトを行うことはない」ということで大筋決定しています。

だとすれば、開催にかかる費用の問題が出てきます。

球場の使用料やNPBの審判手配、お客様を呼ぶのであればその整理・誘導。

トライアウトを受験する人数にもよりますが、相応の金額はかかってきますよね。

アマチュア野球のためとなると、選手会もあまり金銭的メリットが無い

NPBに復帰できないことが前提となると、選手会が今までのNPBの代わりに金銭を払ってトライアウトを行うメリットがあまりありません。

社会人野球のチームを持つ企業や独立リーグなど、トライアウトを見学したい企業にスポンサー契約を持ち掛けることも可能かもしれません。

しかし「この目で見たい選手だけをチーム独自のトライアウトに呼び、認めたら入社させる」というのがほとんどでしょう。

その方が圧倒的に安く済みますし、契約もスムーズに進むと思います。


引退試合そのものを興行化する

これが一番現実的なプランかなと思います。

引退試合という名前にして、有料チケットを販売してお客様を呼び込む。

昨年であれば59人がトライアウトに参加しているため、2チームを作ることは十分可能です。

通常の試合とは違って多少のルール変更(一度ベンチに下がった選手が出場するなど)もありだと思います。

とにかく引退したベンチ入り選手全員に出番を与える。

ウグイスから一言選手紹介のアナウンスなどがあってもいいかなと思います。

とにかくNPBという最高の舞台へ辿り着いた選手なのだから、最後の別れの場は残して欲しいと思います。

そして引退試合がきっかけで社会人や独立リーグのチームからオファーがあっても、それはいい意味でのサプライズであり、

「引退しようと思ったけど必要と言われたから引退を撤回した」となるため、その選手もファンもどちらも嬉しい演出になるかと思います。

形は違えど、一度戦力外になった読売ジャイアンツドラフト1位の桜井俊貴選手が1年のスカウト活動を経て、「もう一度戦いたい!」とミキハウス硬式野球部に入団したのは、本当に嬉しいサプライズでした。

そして1年目から本戦出場を果たし、東京ドームのマウンドに再び上がったのは、この上ない結果だと思います。

↓桜井選手について詳しくはこちら

地上波放送は難しくても、ネット配信などでいいため映像を残せば、家族にとっても永久保存版として記録が残ると思います。

育成契約の選手にとっては、映像が残る試合に出る機会が限られている選手もいますので。


いかがでしたでしょうか?

プロ野球選手の最後の輝きを放つ舞台は残されるのか。

今後も注目して見守りたいと思います。

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それではまた別の記事でお会いしましょう。
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