代表質問から見えた、さいたま市のコロナ対策の課題
9月6日、さいたま市議会9月議会で代表質問が行われ、日本共産党さいたま市議団からは鳥海敏行議員(浦和区)が質問を行いました。前回の投稿では質問概要を紹介しましたが、今回は実際に行った質問と市の答弁をお伝えします。
1.市長の政治姿勢について
Q.安倍・菅政権のこれまでのコロナ対策について、市長はどのような評価をされているか。
日野副市長 国は水際対策、まん延防止、医療提供などコロナ対策に総力を挙げている。該当する都道府県に「緊急事態宣言」や「まん延防止重点措置」を発出し、人流の抑制、医療提供体制の確保、ワクチン接種など様々な取組みを適宜、行っている。
(ちょっと一言、いいですか)
質問では、市長に対して見解を問いましたが、市長が答弁に立つことはありませんでした。答弁自体は国の施策を羅列するのみで直接的な評価についての言及を避けています。
ただ、これまで政府が行なってきた感染対策にさいたま市も随分と振り回されてきたことは周知の事実。それが「適宜適切」と言わずに、あえて「適宜」と答弁したことからも伺えます。
Q.これまでの市のコロナ対策は施策も財源ももっぱら国頼みで、本市独自の感染症対策が少なすぎるのではないか。
日野副市長 市はこれまで様々な対策を行ってきた。(施策の)実施については国等の財政的支援措置を最大限に活用し、その隙間を埋める市独自の支援等を展開してきた。令和2年度の新型コロナ対策費の総額は1632億円となっている。
(ちょっと一言、いいですか)
この答弁は質疑の本質を逸らした回答となっています。質問では市独自の施策の少なさを問題としているのに、そこへの回答はありませんでした。
「新型コロナ対策費に1632億円も使っているんだ!」と言われても、その財源内訳は国が約1452億円で89%、県が約11億円で0.7%、その他諸収入等が約155億円で9.5%、市の一般財源(独自財源)は約13億円で0.8%に留まっており、本市の独自施策の少なさが金額からもわかります。
市はコロナ禍でも77億円の黒字(令和2年度決算より)がでたことをアピールしていますが、言い換えれば市民への支援が不十分だったことを示しているのではないでしょうか。
2.さいたま市のコロナ対策
Q.自宅療養者に対する『緊急搬送困難事案』が増加しており、戸田市では入院待機ステーションを設置した。本市でも導入すべきでは。また、臨時医療施設(いわゆる野戦病院)についても本市独自で設置すべきではないか。
高橋副市長 自宅療養者の健康管理は保健所からの電話と国の患者管理システム「HER-SYS(ハーシス)」を使い分けながら、適切に行っている。
入院待機ステーションや臨時医療施設については、埼玉県の設置した施設の状況を踏まえ検討していく。
Q.入院病床の確保とともに、在宅医療を支える体制を抜本的に強化する必要があると考えるが見解は。
高橋副市長 入院病床の確保に協力してくれた医療機関には、埼玉県の支援に加え本市独自でも補助制度(1床あたり1日8000円の支援)を設けてきた。
在宅医療では、自宅療養者に対する外来受診やオンライン診療の調整、パルスオキシメーターの全世帯配布の支援をしてきた。引き続き、自宅療養者が安心して療養生活を送れることができるよう取り組む。
(ちょっと一言、いいですか)
本市の医療体制の強化や自宅療養者への対応強化を求めた質問。市の答弁を聞く限り、求めた項目については「現状維持」で抜本的強化の方向性は見えません。
全国的な医療資源の不足で困難があることは理解できますが、現状維持が市民にとって適切とは思えません。
党市議団にも自宅療養者の方から「市からの連絡が来ない」という意見がたくさん寄せられています。この状況の改善は図るためには、国や県の施策を超えた本市独自の抜本的な医療体制強化に取り組む必要があります。
3.PCR検査とワクチン接種の現状と今後
Q.これまで市はPCR検査の対象を狭めてきたが、拡大すべきだ。党市議団は『いつでも、どこでも、何度でも』検査を受けられる体制を構築すべきと考えるが見解を。
高橋副市長 PCR検査については、今後も、クラスター拡大を防ぐべく、症状のある方や、患者の濃厚接触者といった『検査が必要な方』が検査を受けることができる体制を確保していく。
(ちょっと一言、いいですか)
国がこれまで示してきた「クラスター対策」にあくまで固執している市の姿勢が鮮明になりました。世界中でクラスター対策をいまだに行なっているのは日本だけで、世界各国は広範な検査体制を確立しています。対象を絞ったPCR検査では感染伝播の波を断ち切ることができないことは世界の共通認識になっています。
今、必要なのは市が言うところの「検査が必要な方」に加えて「無症状者を広く捉える広範な検査」です。
WHOは「陽性率が5%未満を2週間以上継続すること」を感染がコントロールできているひとつの指針としていますが、本市の陽性率は21.3%(9月10日現在)と高い水準を維持しています。陽性率を下げるために必要不可欠なことを質疑では提案しました。
Q.今後のワクチン接種についての計画は。合わせて若年層への接種の展望は。
高橋副市長 ワクチン接種については、集団接種会場の増設などにより、予約枠を拡大し、迅速な接種を進めていく。また、会場の受付時間を夜間まで延長するなど、若年層に合わせた接種体制を構築し、11月末までに接種希望者全員の接種完了を目指していく。
(ちょっと一言、いいですか)
今後のワクチン接種について、市が初めて明確な目標を議会で表明しました。曰く「11月末までに接種希望者全員の接種完了を目指す」ということです。
これまで本市では、集団接種会場を開設しても国からのワクチン供給が突然削減され、開設した会場を休止するなど、政府に振り回され続け、混乱がしてきたワクチン接種でしたが、ようやく見通しがついたということではないでしょうか。
一方で、市内では9月3日から全ての世代のワクチン予約が始まりましたが、ワクチン争奪戦が続いおり、予約が取ることができない市民からは怨嗟の声も届いています。
国政では臨時国会を開かずコロナ対策の議論を停滞させている上に、総裁選にシフトして大騒ぎしている与党には「ふざけるな」と強い怒りを覚えますが、止まらなくなりそうなのでここで筆を置きたいと思います。(了)