見出し画像

開会前にチェック!令和5年度決算が市民生活に与える影響とは?

さいたま市議会9月議会がまもなく始まります。この議会では、令和5年度決算が主要な議題となり、今後の市政運営に大きな影響を与える重要な議論が行われる予定です。
そこで、議論が本格化する前に、市民の皆さんに向けて決算のポイントをわかりやすく解説したいと思います。さいたま市の財政の特徴や課題を知る一助になればと思います。

 1. 決算の概要と市の現状

さいたま市の令和5年度決算では、一般会計の歳入総額は6,815億3,900万円、歳出総額は6,669億1,900万円で、対前年度比でそれぞれ2.5%と1.7%の増加を示しています。
市は「強靭な都市づくり」や「持続可能な地域づくり」を掲げましたが、これらの政策が市民生活にどれだけ寄与したかについては、さらなる検証が必要です。
都市開発関連の支出が大幅に増加している一方で、教育や福祉といった基本的なサービスへの支出は微増で、そのバランスには疑問が残ります。市の成長が本当に市民一人ひとりの生活を向上させているのか、今一度考える必要があります。

 2.都市開発に偏る投資的経費の増加

令和5年度決算で特に目立つのは、都市開発に関連する投資的経費の大幅な増加です。
具体的には、投資的経費全体が前年度比で約35.5%(約249億5,800万円)も増加しており、都市開発関連のプロジェクトに多くの資金が投入されています。
たとえば、大宮駅西口の再開発プロジェクトには約47億3,800万円、浦和駅東口エリア再開発プロジェクトには約30億7,100万円が充てられています。
これらのプロジェクトは、さいたま市の都市としての魅力を高めるために計画されたものですが、市民生活の質向上にどれだけ寄与するかについては、慎重に考える必要があります。
都市の発展は確かに重要ですが、それが他の重要な分野への投資を圧迫する形で行われていることは課題として捉えなければなりません。
たとえば、教育や福祉、公共サービスなど、市民の生活基盤に直結する分野への予算が削減されていないか、個々の事業をきちんと精査しながら、そのバランスを見ていく必要があります。
さらに、こうした大規模な開発プロジェクトは一部の地域に集中する傾向があり、市内全域の均衡ある発展が実現されているかという視点も重要です。
都市開発がもたらす利益は、一部の地域や層に偏るのではなく、より広範な市民が享受できるものであるべきです。
都市開発への過度な投資が、長期的には市全体の健全な成長を妨げる可能性もあります。そのため、市民生活を支える基礎的なサービスとのバランスの均衡は大きな課題として浮かび上がるのでないでしょうか。

3. 義務的経費の増加と市の対応

令和5年度決算において、義務的経費が増加したことも注目すべきポイントです。義務的経費とは、主に人件費や扶助費、公債費といった、自治体が法律や制度に基づいて支出しなければならない経費のことを指します。令和5年度の義務的経費は、前年度比で約1.4%(約49億5,600万円)増加し、全体の支出の中でも大きな割合を占めています。
具体的には、扶助費が約3.7%増加し、約60億8,400万円の伸びを示しています。これは、少子高齢化の進行に伴う社会保障関連の支出が増えているためです。
また、人件費は減少し、職員数の抑制の成果をあげています。(市から見ればですが…)
市はこれらの義務的経費の増加に対処するため、効率的な財政運営が求めらているとして、様々な予算の支出を抑えることに注力しています。(注力しすぎているかもしれません)
特に、行きすぎた経費削減の影響がもっとも出ていると考えられる人件費の抑制は、職員に少ない人数で業務を効率化することを追求する一方で、人手不足と過重負担を招き、これが結果として住民サービスの低下につながることは考えておかなければなりません。
例えば、近年、行政職員による不適切な行動や不祥事が増加しているのは、こうした背景も一因と考えられます。
市民にとって重要なのは、ただ単に支出を抑えるのではなく、どの分野に優先的に投資するかという判断です。義務的経費の増加を背景に、市は住民のニーズに応えながら、どのように限られた予算を最大限に活用するかを考えなければなりません。
そして、職員の働きやすい環境を整えつつ、市民に対するサービスの質を維持・向上させることが求められています。


4. 住民サービスへの投資不足がもたらすリスク

住民サービスへの投資が不足している現状は、長期的に見て市民生活に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。
令和5年度の決算を見ると、教育や福祉、保健衛生といった基礎的なサービスへの支出が増加しているとはいえ、その増加率は都市開発への投資と比較すると圧倒的に少ないのが現状です。この状況が続けば、さいたま市の住民が必要とするサービスが十分に提供されない恐れがあります。
教育分野では、施設の老朽化やクラスの過密化、断熱化が一向に進まないなどの問題が指摘してきました。これらに対処するための予算が確保されなければ、子どもたちの学習環境が悪化し、将来的な成長に大きな影響を与える可能性があります。
また、福祉分野においては、高齢者や障がい者への支援が不十分であることを指摘してきました。特に、高齢化が進む中で、介護や医療サービスの需要が増大する一方で、これらのサービスが充実しなければ、市民の生活の質は低下してしまいます。
さらに、市が進める都市開発も、すべてが市民から肯定的に受け入れられているわけではありません。大規模な都市開発プロジェクトは、そのコストや地域への影響に対して批判的な意見も数多くあり、住民の意見をもっと聞いたプロジェクトにすべきだという声が高まっています。
さいたま市が持続的に発展するためには、都市開発だけでなく、住民の生活を支える基礎的なサービスにも十分な投資を行う必要があります。これを怠ると、短期的な都市開発の成果が、長期的な市民生活の質の低下を招く結果となりかねません。
「限られた予算の中で、どのようにして住民サービスを充実させるか。このバランスでいいのか」という問題提起を議会でしていかなければなりません。


5. 今後の課題と市議会での議論の焦点

令和5年度決算を踏まえ、今後のさいたま市にとって解決すべき課題は多岐にわたります。特に、都市開発に偏った予算配分を見直し、住民サービスへの投資をどのように増やしていくかが、市議会での主要な議題となるはずです。
また、投資的経費の増加による財政負担が、市の財政健全性にどのような影響を与えるかについても、議論の焦点となるでしょう。
投資的経費が今の水準でいいのか、市民サービス向上のために、支出の量と質を見直す必要があることが市民の皆さんに伝わる議会にしていかなければなりません。
さらに、都市開発に伴う環境への影響や、コミュニティの維持に関する懸念も議論の対象となるでしょう。都市の成長を追求するあまり、既存の住民の生活環境が悪化するようでは、本末転倒です。市議会では、市の未来を見据えた上で、持続可能な都市づくりと市民の生活向上をどのように両立させるかが求められます。
以上のポイントを踏まえながら、本格的に始まる論戦にご期待いただければと思います。

たけこし 連

いいなと思ったら応援しよう!