【小説】キズハ🔒@ha×××ki 〈「六十度」#9〉
クレオールコーヒースタンドの小説サークル「六十度」九号に掲載した作品です。
公開にしました。このアカウントはわたしの日記として、フォロワー0の鍵垢でメモのように使ってきました。読み返してみるとこれはわたしの告白そのものでした。
いずれ鍵を開けてこの日記が読まれることを想像しながら、読まれないことを前提に書いていました。無意味なことを長く続けることを目標にしていましたが、こんなに早く結末をむかえるとは想像もしませんでした。
このあとどうなるかはわかりませんが、たぶん更新できなくなります。(2020/06/30)
ハーブが枯れていた。
いつ買ったかわからない食パンにカビが繁殖していた。
やっと雑誌を紐でくくった。(2020/06/25)
なんでこんなこと書いたんだろう。[RT@ha×××ki あなたと舌を絡めるキスをする夢を見ました](2020/06/18)
職場の人に「ちゃんと寝ているの」と聞かれた。(2020/06/17)
あなたは結局クサリに首を巻かれる方を選んだんだよね。(2020/06/13)
あなたと舌を絡めるキスをする夢を見ました。(2020/06/11)
タバコを吸ったらえずいた。もう限界かもしれない。そろそろ鍵を開けようかな。(2020/06/10)
すっかり夏っぽくなってきた。 部屋が荒れてきているから掃除したいけど、ひたすら眠い。押入れを開けるのが怖い(笑) (2020/06/05)
エアコンをつけっぱなしにしているけど、案外電気代は上がらない。(2020/06/01)
今日から通勤が再開した。電車は以前より空いていた。作ったマスクをしていきました。好きな布を口にまとうのは嬉しい。
ファミマのプリンが販売終了していた。代わりに買ったティラミス、味気ない。(2020/05/26)
緊急事態宣言が解除された。
あたりまえだけどあなたから連絡はないです。(2020/05/25)
あの日、あなたに「これで最後。もう会わない方がいい」と言われました。(2020/04/20)
ガーゼハンカチでマスクをつくりました。(2020/04/10)
緊急事態宣言が発令された。テレビはその話題ばかりでつまらないです。
今日から仕事が在宅になった。そして私は眠たい。(2020/04/07)
この秘密をどうしたものかと考えています。しばらくフタをしてやり過ごしたいと思います。(2020/04/04)
彼がうちに来てくれました。彼と会うのは一ヶ月ぶりです。コロナを警戒しているのに。家族には「どうしても外せない仕事がある」と言って来てくれました。とりあえずご飯を作っています。(2020/04/02)
志村けんがコロナで死んじゃった。(2020/03/29)
ずいぶん前に「家族って鎖みたいなもの」とタバコを吸いながら彼が言ってた。なんでそんなことエッチのあとに言うのかわかりませんでした。
わたしも家族になりたいわけではないし、たまに会って彼の好きな仕方でする事しか望んでいません。
彼がはわたしが上位になって首を締めながらすると喜びます。毎回それを強く望むんです。(2020/03/24)
ファミリーマートのプリンパフェが美味しいです。一人で食べるには多い気もするのですが、無性に食べたくなることがあってそういう時は我慢せず食べるようにしています。
ハーブが日に日に育っていきます。(2020/03/13)
早朝にドラッグストアの前を通ったら列ができていました。マスクを購入するために並んでいたそうです。ニュースで言っていましたがトイレットペーパーやカップ麺なども品薄になっているそうです。
わたしは一人なので騒動に巻き込まれていませんが、彼は家族がいるのでもしかしたらドラッグストアの列に並んでいるのかもしれません。身長の高い彼が行列の中にいると思うと、ちょっとかっこ悪いけど、ちょっとかわいいかもと思いました。(2020/03/03)
三日前に彼と久しぶりに待ち合わせしてゴハンを食べました。池袋の北口で待ち合わせて近くの居酒屋で。新型コロナウイルスのせいでお店は暇そうでした。わたしは余り気にしていなかったのですが、彼は気にしているようでした。
わたしがしつこくLINEしたからしぶしぶ付き合ってくれた感じで、会話もそんなになく彼はビールを口につけるとき以外はマスクをしていました。
ゴハンを食べ終わってホテルに行きたかったのに彼はその場で帰ってしましました。セックスはおろか手さえも握らせてもらえませんでした。
彼には家族がいます。この関係でセックスがないというのは何をもって「つきあっている」のかを考えさせられました。
帰りの電車では欲求不満とお酒のせいで気持ち悪くなって、駅のトイレで吐いてしまいました。(2020/02/23)
今年ハーブの種を撒いたのですが芽が出てきました。成長日記にするのも良いかもしれません。(2020/02/10)
ふと思い立って日記を書く事にしました。わたしが自然に出てくる言葉を残すために。ツイッターの鍵垢にしたのは一四〇文字がちょうどいいからです。
フォロワ―0の非公開アカウントなので誰にも気づかれることはありません。サービスがある限りテキストは残ります。
読まれない文字がネットに堆積するの良いです。わたしが地層になるようで。掘ると化石が出るのかしら。
いつか死ぬ時がわかったら鍵を解くかもしれません。今からそんなこと言うと、読まれるために読まれないものを書くことになってしまいますね(笑) (2020/02/09)
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