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超電導を用いた送電網の構築に関する話題

送電損失ゼロ 実用へ:日本経済新聞

先日、鉄道総研により超電導送電技術が実用化に大きく近づいたという記事が日経新聞に掲載された。送電ロス対策としての超電導技術の開発が進んでおり、その実装に向けて現在の国内事情を調べてみた。

1.送電ロスについて

送電ロスとは、発電所で電力が作られてから送配電網によって各家庭まで行き渡るまでの間に素材の抵抗などによって発生する電力損失のことであり、記事内では4%程度と紹介されている。東京電力のデータ(図-1)でも1995年以降4~5%くらいの数値で横ばい。

図-1 東電管内の送電ロス率( TEPCO HPより)

ちなみに電気料金にも反映されているようで、なかなか他人事にはできない話題でもある。詳しくはこちら→約款上の送電ロスの取扱いについて

2.超電導技術について

超電導は「特定の金属や化合物などの物質を非常に低い温度へ冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象(wikipediaより)」であり、この現象を生じる物質を超電動物質と呼ぶ。当初この技術は絶対零度に近い状態でしか発現できなかったため、実社会に適用させるためにはコスト面で難しいと考えられていたようだが、近年の技術の進展により高温状態(-196℃)で超電導状態を生じさせることが可能となった。

国内で高温超電導材料として研究されているものは主に以下の2つ。
・ビスマス(Bi)系
・イットリウム(Y)系
それぞれの性質の違いについてはリサーチをかけたが、難解すぎて断念。それでも端的に述べるとすれば次のようになる。

Bi系は住友電工がDI-BSCCO®超電導線を2015年から既に商品化していることからも、ある程度社会実装されているとの感覚がある。鉄道総研が採用したのもBi系であり、鉄道レベルの電線ケーブル(1,500V)だと現実味がありそうだ。

Y系は昭和電線ケーブルシステム古河電工および新エネルギー・産業技術総合開発機構などが研究している。Bi系と比べて高電圧帯の電力ケーブルであり、実際の高圧電線等への活用が見込まれ、こちらは超電導2.0として取り扱えそうだ。断面積あたりの電流を多く流すことができるため、敷設コストが低い。また性質上、熱によるエネルギー損失がほぼ無い。また材料として使用する銀の量がBi系と比べて少ないことから低コストを期待できる(NEDO広報資料より)。

3.日本の送配電網について

送配電の仕組み。めっちゃわかりやすい。

電気事業連合会HPより

電気事業連合会のデータベースから国内の主要電力会社の送電網と配電網を集計したところ、以下のようになった(表-1,表-2)。送電網の架空線と地中埋設管を合計しておよそ18万km、配電網に至っては412万km。気の遠くなるような数値である。

表-1 国内の主な送電線
表-2 国内の主な配電線

高経年化設備更新ガイドライン(試行版)ほかについて(P.21)によると、近年の更新ペースは架空電線で年間1,200㎞。同じペースだと全て更新するために120年かかるとのこと。
ただ古河電工㈱の試算によると、4,000km(2050年までに可能な数値かと思われる)を更新するだけでも「260万人が1年間に生活で使う電力量に相当し、発電のために排出するCO2を106万トン削減する効果」があるようで、いずれにしてもこの取組みは進めていく必要はあると考えられる。

4.まとめ

・日本の送電ロス率は4%である
・超電導技術はBi系とY系があり、Bi系は実用化されているものの、それよりも高規格化・低コスト化が期待できるY系を開発中である
・国内の送配電網の総量は莫大な数字であるが、そのうちの一部でも超電導ケーブルに更新できると大きな効果が見込める

今回の日経の記事では、お!これで送電ロス対策に1歩近づいたか!との感想を抱いたが、実態は今すぐにというわけにもいかなそうだ。しかし一切夢の技術というほどでもなく、今後のスタンダードとなっていくべきものだろう。

ちなみに経産省の次世代ネットワーク検討においては、超電導材料の採用については言及がない模様。現在溢れかえっている再エネを送電するためのスキームを検討している。技術開発には出資しているみたいだから、目途がついたら政策にも含めていくものと予想している。

もうひとつ筆者の感想としては、2.超電導技術についての中でも述べたように、この話題を論ずるための知識がなさ過ぎて資料収集にはかなり手を焼いた。今回の反省を糧に、後学に励んでいきたい。

【参考】
電気事業連合会HP
古河電工株式会社HP
昭和電線ケーブルシステム株式会社HP
新エネルギー・産業技術総合開発機構HP
経済産業省「電力ネットワークの次世代化に向けた中間とりまとめ(案)」
電力広域的運営機関「高経年化設備更新ガイドライン(試行版)ほか について」
昭和電線レビュー「三相同軸超電導ケーブルの開発 北村佑ほか」


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