あの娘僕がフレッドペリー着てたらどんな顔するだろう。
3.14に誕生日を迎え無事何事も無く、それはそれは何事も無く35歳になった。
35。恐ろしい。気持ちも考え方も何もかもティーンネイジャーのままである。
ああ、あの時こうだったなぁって思って思い返すことも既に10年以上前のことがザラである。
10代の頃にパンクが好きになって、そこからモッズなんかも好きになって音楽より先にファッションに目が行った。
ジャムやフーを聴く前にモッズコートやモッズスーツに目が行った。
細いインディゴのデニムに合わせて着るロンズデールのポロシャツはサスペンダーを合わせたかったし、
ベンシャーマンにはマーチンを合わせたかった。
男っぽくて無骨な感じが格好良かったそれらも欲しかったが、
ナードな雰囲気のモデルが着ていたフレッドペリーはそれそれは10代のタケイ少年の心を魅了したのを覚えてる。
ボディのカラーは勿論、リブのカラーはこれが良いあれが良いと夢想した。
専門店は近くに無かった。今ほど古着屋も乱立しておらず、今以上に満足に金も使えない僕はそれを手に入れる前に他のものに目が行って、気付けばこの年代になるまでフレッドペリーを持つことがなかった。
しかし今年、僕の誕生日を祝ってくれるというありがたいほど奇特な先輩方に呼ばれ行った食事の席で、うしろシティのアスワさんからフレッドペリーのニットをプレゼントされた。
めちゃくちゃ嬉しかった。
欲しくて焦がれたものをこうして好きな人から貰えるのは、自分の金で手に入れるものとは違う価値がある、と思った。
受け取る際にアスワさんは
「これを着てネタを書いている姿がとても格好良いと思った。だからこれにした」
とおっしゃった。
僕みたいに側で何もかも選ぶような人間はそういったのがとても嬉しいし、それだけで愛着が数倍にも数十倍にもなる。
早速これを着てネタを書こう。喫茶店に入ってコーヒーを飲もう。そうして満足に1日を終えよう。
見合う男になりたい。
何か良いものが出来た後、これを着てた時に出来たと言いたい。
そうして今、汚したくなくて中々袖を通せずにいる僕を10代の頃の僕は笑うだろうか。
夢の一つに自分の書く文章でお金を稼げたら、 自分の書く文章がお金になったらというのがあります。