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CGTNから見る中国

ニュースを疑い、自分の頭で考えよう。

CGTNというテレビ放送局を知っているだろうか?「CHINA GLOBAL TELEVISION NETWORK」の事だが、見たことのある人はすぐにわかるが、中国の「世界戦略」がはっきりと見て取れる。

知らない人も多いと思うが、中国に興味があるなしにかかわらず、これは絶対に見た方がいい。CNNと同じテイストで(中味は全く違うが)、放送は全て英語。
中国の国営放送局であるが、政府主導のもと産業、経済、政治、宇宙、文化、娯楽、スポーツ、広範囲を網羅している。

CHINAがいかに素晴らしい国で、世界の為に貢献しているかを、全世界に見せる、中国政府主導の新秩序と価値観、枠組みを作りあげる為の、「国の一大宣伝広告放送局」である。

平等、平和をイメージ基軸にし、世界各国の違いを繋げて中継、放送する。
北京、上海、香港、台北、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、ワシントン、ニューヨーク、モスクワ、シンガポール、マニラ、クアラルンプール、カルカッタ、イスラマバード、ドバイ、ケープタウン、ナイロビ、バンクーバー、サンパウロ、メキシコ、などなど、まさに世界各国を網羅し、中継しながら討論をしてみせている。

もしかして北京のスタジオの後ろに、全部各国のセットがあって、そこで隣の部屋同士で中継してるんじゃないか?と最初疑ったが、どうやらそうではなさそうだ。

中国人、アフリカ人、ヨーロッパ人、インド人、中東人、ロシア人、アメリカ人、南米人、日本人、韓国人、アジア各国人、世界中の人種を、キャスター、取材陣に起用し、喋らせ「討論」させているところが素晴らしい。勿論内容全てはアンダーコントロールであり、都合の悪い事は決して流さないところも一貫している。

世界各国に拠点を置いていてネットワークを駆使し、とにかく新しい流れを作ろうという動きは、凄いの一言に尽きる。プロバカンダという武器を最大限に駆使した、世界情勢を自国に有利に導く、天晴れな戦法であると思う。突っ込みどころは満載だが、もはや「稚拙」「ハリボテ」などと侮れるレベルではない。

アメリカも今までそうして世界をコントロールして来たわけだし、そもそもメディアとは、そうやって使うものだったんだ、ということをはっきりと思い出させてくれる。

例えば、一帯一路政策によって、いかに世界中の皆が幸せになっているか、レベルの高い映像でイメージさせるように作られている。また最近のアメリカとの貿易戦争も、キャスターの背景に中国とアメリカの国旗が映っているのだが、中国の国旗は左上から画面全体を60%程を占め、アメリカの国旗は中国の右斜め下に置かれ、40%くらいの大きさで斜めに上からカットされている。中国に押されて弱く見えるような配置に設定されているのだろう。細部まで気を使ってうまく作っている。

またスーツ姿の世界各国のジャーナリストやキャスター達が、非常に見事な「パフォーマンス」をしている。アメリカ人のキャスターを使い、トランプのやり方に疑問と異論を唱えさせ、中国人が、素晴らしい英語で、一貫して非常に冷静な分析、かつ動じない態度でスマートに論じて行く。

しかも何と、敵の本丸、ホワイトハウスの傍に現地の拠点があるというから驚きだ。今の日本人には全く思いもつかない発想である。昔の豊臣秀吉みたいだ。

世界はみんなのものだ、みんなでアジアについて語ろう、みんなでアフリカについて一緒に話し合おう、もっと美しい我々の未来のために一緒に頑張ろう!中国はその為に全力を尽くす!とやる。各国の首相や国王が習近平氏と笑顔で握手し、中国のおかげで共に発展している平和な画像を流す。

アフリカの中国系工場労働者が、楽しそうに働いている場面、中国のおかげで生活が良くなったと若者がインタビューに笑顔で答える。貧しい世界の子供達、アフリカの子供達が喜び戯れる場面、中国人の赤ちゃんが生まれる場面、各国の若者が笑顔で帽子を空に投げ上げる大学の卒業シーン、などを流す。次の世代も皆仲良くしていこうというメッセージまでを込める。

色んな国の人々が笑顔で写っている裏側には、全てではないが、実質中国の借金漬けにされ、コントロールされている状況もある。借金を返せない時は、おたくの国の土地や港湾、主要産業などの権利をいただく、という条件がつきつけられている。建前は言うまでもなく平和、共存、発展、一帯一路、と言った美しい言葉である。その「良いイメージ」の発信をCGTNが担っているわけだ。

良く時代劇に出てくる、お代官と結託している金貸し屋、あれと全く同じパターンを思い出してしまう。言葉巧みに若旦那に近づき、甘い誘惑を餌に、いつのまにか借金漬けにする。膨らんだ借金の形に、店の看板、嫁入り前の娘、商売の利権、などを根こそぎ持って行き、娘が「嗚呼お父っつぁーん」と泣く、あのシーンである。

中国人の金への執念の強さと、利権獲得のパワーは、多分殆どの日本人は、はっきり認識、もしくは想像さえ出来ていないと思う。それは国民一人一人の欲求でありパワーであり、それが国のパワーであるという事だ。

爆買いが下品だとか、ODA円借款をやめたら日本企業の買収が始まった、とか、全く違う次元で日本人は騒いでいる感じを私は受ける。日本のODAが、どれほど中国の発展を助けたかは明白である。しかし今は時代も変わり状況も昔とは全く変わった。中国の方が沢山の金を持っているし、ODAをやめたところで中国は、痛くも痒くもない。逆に少しでも貢ぎ物を渡しておかないと、こっちを向いてくれなくなるんじゃないか、と日本が心配している感じさえする。「無償支援」「無償技術協力」等という意味不明なものが形式的に残っている事が、まさにそれをよく表していると思う。

日本企業の買収にしても、中国は欲しいから金を出して買っているだけの話だ。日本企業も将来も不安だし時代を先取りしてガンガン行く自信も元気もなく、金が欲しいから売る。日本企業をたくさん買えば、将来日本の良さや日本のブランドイメージ全部がスライドして来て、近い将来それが自分たちのものになる。しかも有能な日本人はどんどん採用し共に発展する。とても理にかなっている戦略であるし、先を見ている。

MADE IN JAPAN、PRODUCE OF JAPAN、そこに良いものが安く沢山あるのだから、買える物は買い、吸い取れる物は最大限に吸い取ろう、と思うのは当然のことだ。

因みに日本の事はニュースになる事はあまり多くはない。日産ゴーン氏のニュース、「アニメ」のニュースくらいだ。「Anime」が大きな影響力と経済効果を生んでいる事を、中国人が、各国のコスプレイヤーにインタビューし、分析、真面目な顔で、説明している。まだまだ世界の多くの人々は、JAPANという国が具体的にどこにあるかもよく知らず、中国の一部の地域と思っている人も多いそうだ。

また、10秒に一回は必ずCHINAという単語が連発され、常に地球の外側を光がぐるぐる回るシーンで地球全体、人類を意識させた上で、それを伝えているのがCGTN、そしてチャイナが世界の真ん中のイメージを与える画像が、常にフラッシュで使われる。サブリミナル効果の利用が、余りにもあからさま過ぎて、最初は唖然とする。毎日見ていると逆に爽やかで、感心してしまうほどだ。内容はさておき、自国の宣伝をこれだけの規模で人とお金を使い、世界中の人々の脳みそに「情報」「方向性」を強制的に流し込むイメージ戦略、方法を考え、それを実行するChinaは本当に凄い。

コマーシャル代わりの休憩時間に流れるのは、同じテーマイメージ曲をバックにしたイメージ動画だ。この曲を作り、編曲している人もすごいと思う。映像と音楽が素晴らしくマッチしている。先端技術、農民の笑顔、宇宙開発、スポーツ、被災地救援、などを格好良く、美しく、そして親しみやすく流す。

そして各国の子供たちと青年、アフリカのビジネスウーマンなどを、上手に使い、将来の夢に向かう、現在進行形の前向きなイメージに仕上げる。これだけでもまるで短編の映画を見ているようで、間違いなく強烈なメッセージである。何事も百回言い続ければ、嘘でも本当になる。イメージというのはとても重要だ。

戦争、紛争地域のニュースで、人が血を流している場面のあと、関連性があってもなくても、アメリカのトランプ氏をくっつけて流す。
その後中国が仲良くしている(させている)国の紹介、宣伝をし、フレンドリーな民間交流もしっかりと撮って流す。こうして素晴らしい番組が進んで行く。そして、休憩時間の時に、CGTN、「SEE THE DIFFERENCE 」と言う言葉を毎回見せる。

「情報」を最大限に利用・演出し、イメージをしっかり作り、強力なメッセージとして映像に乗せて発信し、世界中の人に有無を言わせず全面的圧倒的に刷り込む。戦わずして城を落とす技に似ている。

そもそも世界中の人誰もが「自分の国」があるわけだから、世界情勢を公平に見る事などは不可能である。だが、情報が不足している国や地域の人、又は反アメリカの人々がこの番組を見ると、中国は素晴らしい、仲良くしたい、アメリカは横暴だ、と言う印象を受けるだろう。

私は英語はそんなに上手くはないし、テレビで喋っていることも、半分くらいしか分かっていないが、CGTNがやろうとしている事は理解出来る。何の疑問も持たず、何気なく素直に見続けていると、間違いなくブレインウオッシュされてしまう気がする。全体的にワザとらしくは感じるが、日本よりもよっぽど明確に問題提起もし、それをしっかり議論して見せており、素晴らしい部分もたくさんある。(そもそもの問題提起の内容の是非に関しては、別問題であるが、番組の趣旨、目的がはっきりしているので、わかりやすいという話である。)また、自分自身も、もっと世界への視野を広げ、感受性を磨かないと「やばい」と感じる事が良くある。ただテレビのニュースを見て鵜呑みにするのでなく、このような事を考えたり、想像してみたりするのは、とても大切な事ではないだろうか?

私が言いたい事は二つ。

①ニュースを疑い、自分の頭で考える。

②自分の感性で本質を見て情報を消化し、それを自分の実際の行動に役立てる。

これが大切だ、という事である。

※上記文章は、2019年に投稿し理由があって非公開にしていたものです。

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