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100の目標 出来ないのは決めないから 〜情熱中国大陸〜

昔、あるお客さんが出張で弊社に訪問して下さった時の事。
車で移動中に、電話で私が別の顧客と話をしている内容を聞いていて、Y社長は、電話の後私にこう言った。

「竹居さんの貴重な時間を、こう言っては失礼だが、今の電話のような人に割くのは会社にとっては罪悪ですよ」

電話の客に会った事も無いのに、Y社長は随分乱暴な事を言うなあと思って、どうしてですかと聞いた。

「商売は平等な関係で、お互いの条件が成り立ってはじめて進めるべきものであるのに、電話の話を聞いていると、彼は納期も金額も、支払い条件までも自分の都合ばかりを押し付けている。竹居さんが困っているのがわかっていながら、無理を通そうとしている。こう言う場合は、いくら仲が良いからと言っても、受けてはいけない」
とハッキリ言い切られた。

「相手を助けてあげたい気持ちと、おそらく会社にとってマイナスになるような事とを、ビジネスとして混同しては絶対いけない。経営者は、大切な時間や社員を、そんなことに使うべきではない。その仕事を受けなかったとしても、竹居さんは全く困らないばかりか、他のもっと良い仕事が入って来るから安心して全部断りなさい。また断ったから彼との今後の付き合いに悪影響が出る、などというのは幻想に過ぎないし、もし万が一そういう事になるような客なら、尚更付き合いをやめたほうがいい」
と言うのだ。

私は何となく困っている友達を助けてあげない罪悪感のようなものがあったが、素直にY社長の言う事に従った。すると何と後日、三つの良いことが起きた。

①私は本当に全く困らなかったし、気が楽になった。

②その客自身もその案件から降り、胸を撫で下ろしていたらしく、「ハッキリ断ってくれてありがとう」と逆に感謝された。

③10年ぶりの別のお客さんから、大変良い仕事の依頼が入った。

有難い事に、断った方の客とも、10年ぶりのお客とも、未だに大変良い関係が続いている。

Y社長と夕食会の時に「100の目標」って知っていますか?と聞かれた。知らなかったので教えを請うと、とても簡単と言って教えてくれた。

①紙でもExcelの表でもいいので、左側にNo.1〜No.100まで番号をつける。

②No.1から順番に、自分のやりたい事を上から順に書き込んで行く。

③No.100まで埋める。

これだけである。皆さんも是非やってみて欲しい。
仕事に限らず、趣味、家庭、自分の生活、彼女の事、ペットの事、生活の中で、どんな些細なことでもいい、自分が「やりたい事」を片っ端から書き込んで行く。それだけ。単純で簡単だ。

ところがである。やってみてすぐに気がつく事がある。
普通なら、100まですぐに埋める事が出来る人はそうはいないのではないだろうか。私の場合、30個くらい埋めたあたりで、突然止まってしまった。そこでまず、

え?俺のやりたい事って、実はそんなにたくさんあるわけじゃないのか?!

という事に気付かされ、愕然としたのだ。

書けない事は出来るわけがない

という当たり前の事に気がついた。

書けないという事は考えてもいないという事で、考えてもいないという事は、やろうと思ってもいないわけで、やろうと思ってもいない事がそもそも出来るわけがない、という自明の理だからだ。

すぐY社長に電話をして、「50個でもいいですか?」と聞いたら、「ダメ。100個埋める事に意味がある、とにかくちょっと頑張れば出来るような、小さなやりたい事でもいいから、片っ端から書き込んで100個埋めてみて。別に私に見せなくていいし、人に見せる物ではないので、恥ずかしいことでも人に言えないような事でもなんでも、やりたい事を書いて、とにかく先ずは全部埋めてみてください。」と言われた。

そして一週間以上もかけて、とにかく100個何とか埋めた。すると不思議な事に、100個全部埋めた時点で、まだ何もしてないのに、何か大きな心地よい達成感に包まれた。子供時代、自分の秘密基地を完成させたような感じ、とでも言おうか。この時点から私の生活はちょっと変わった。

リストに書いた事は、たまに見るだけでいいのだが、知らず知らずのうち意識しているからか、結構達成されて行くのだ。前向きのベクトルに意識と行動が自然と誘導されて、スーッと押されていくような感じである。

人が見ると、くだらない小さな事であっても、「達成した」という、その達成感だけで嬉しく、明るく前向きな気持ちになる。実はその小さな達成感と前向きな姿勢の積み重ねこそが、この「100の目標」のポイントだという事に気づいた。

ただなんとなく生きているよりも、楽しみを探しながら達成して生きていく方が断然楽しい。随分前に書いたリストだが、「くだらない小さな事」は、ほとんど達成されている。「ハーゲンダッツのアイスの新しい味は必ず食べる」「明るい色の靴を買う」「1日一回必ず幸せだなぁと口に出して言う」「困ったなあ、と人の前で言わない」「一週間に一度必ずスタッフと食事する」などなど。今はこれらは全て自然とそうなっているし、「会社の売り上げを倍にする」なんてちょっと当時大きめに書いた目標も、いつのまにか本当に達成されてしまっている。昨年は香港にもう一つ会社を立ち上げる事も出来た。

達成した項目は消して新しい内容を入れてもいいし、そのままにしておいてもいい。書いたけど今は別にやりたくなくなった場合、消して他のやりたい事に入れ替えたっていい。リストはあなただけのものだし、何をしたいか決めるのもあなたの自由だ。ちょっと大げさかもしれないが、

リスト=自分の人生 と言える。


昔見た映画を思い出した。ジャック・ニコルソンと、モーガン・フリーマン共演の『最高の人生の見つけ方』だ。末期がん余命3カ月と宣告された二人の死を待つ老人が、たまたま同じ病室になる。全く対照的な人生を送ってきた二人が、「死ぬ前にやり残した事を全部一緒にやろうぜ!」と意気投合し、リストを作り、それを達成すべく病院を脱出し冒険の旅に出る。

リストの実行の順番で揉めたり、喧嘩したり、ドタバタ劇を繰り返しながらも、リストの項目をほぼ達成して、最後の海辺に座って二人のシーン。大富豪ジャック・ニコルソンが、整備士だったモーガン・フリーマンの横で、パタッと突然死ぬ。良く人生を見つめた、何とも味わい深い、とても良い映画だ。

「100の目標」も、最高の人生を見つける方法の一つではないかと思う。人は決めればやるし、出来ないのは決めないからだ。この当たり前の真理を、改めて教えて下さったY社長に感謝すると同時に、若い人達に、私も教えてあげたくなるのである。

人生を一冊100ページの本に例えるとする。最初のページと最後のページは人間皆等しく埋まっている。

最初の1ページ目は生まれた事。

最後の100ページ目は死ぬ事。

2ページから99ページまでは、何を書くか自分で決めて、自分で好きなように書いて行けばいい。本の中身は作者のあなたの自由。何事もやって見なければわからないし、挑戦して見なければ、出来るか出来ないかもわからない。

自分の最後の100ページ目が、30年後なのか、3年後なのか、3日後なのか、いつやって来るのかがわからない、という事が大変厄介な問題であるが、しかしそれよりももっと大きな問題で恐ろしい事がある。それは、

何を書けばいいのか自分で決められない事

だ。せっかくなんだから、いろんな事を自分自身で決めて、それに自分から挑戦して、楽しく幸せな本を書いた方がいいよなあ、と私は思うのである。


つづく

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