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ブラシレスモータの開発をしていた頃

小型ブラシレスモータの開発をしていた頃、定格トルク、回転数、起動時間、環境温度、外形などの目標仕様から、磁石の種類、着磁極数、外形、コイルのスロット数、形状、銅線径、巻数、コアの材質など、具体的に新しい製品を設計するための計算式を導出しようとしていました。

モータの構成部品の形状、寸法が決まっていない状態だと電磁界解析ツールも役に立たないし、沢山の設計パラメータを振って要求スペックにビシッと合わせた設計をするには構想段階で材料、形状、寸法から諸特性を導出できる、中身がブラックボックスでないシンプルな計算式が一番有用だと思ったのです。

競合はそんなことは当然ノウハウとして持っているだろうと思うと、ある意味初歩的とも言えることに長い時間掛けて取り組んでいることを馬鹿馬鹿しく感じたりしながらも、何とかやりあげました。

大きな助けになったのは日本電産の永守重信代表の著書、新ブラシレスモータ。それまでもモータの書籍は沢山あったけど実際の設計に繋げていける内容になっている本当に希少な本でした。この本だけは今も手元に残しています。

学生時代ろくに勉強していなかったので、高校の基礎解析、代数幾何、微分積分まで遡ってやり直す必要があったり、まさか会社で基礎的でいつ結果がでるかもわからないことだけに時間を費やす訳にはいかず、また途中数年出向で全く別の仕事をしたり、すんなりとはいかなかったけど、案外まったく関係ない仕事をすることは無駄じゃなかったかもしれません。モータに戻ってきたときに、視点が少し変わっていて、結果考えを推し進めることができるようになっていたりしました。

永守氏の書籍で、ベーシックなモータモデルについて逆起電力定数を導出するのですが、書店でその1ページに書かれた数式をみつけたときにそれまでモヤっと胃が痛くなるくらいわからなかったことが解決、このときの爽快さ……。ここは時間を掛けたって自力では導出できなかったと思います。買って帰って、それまで考えてきたことがどんどんリンクして、数日くらいでひとつまとまった理解ができました。

自分の中に断片的な知識や技術が広い地図に散らばっていて、それがあるきっかけでババババッとリンクする感じはもう一度体験したい。

今はウェブデザイナーを中心としてカメラマン、最近は映像、音、そこにモータはなかなかリンクしないのですが、繋がることがあれば面白いなと、知識や技術の断片、それぞれをちょこちょこ磨く感じでいます。

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