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京サラ2022年募集馬検証その⑥ ~ヴァーチュスターの22編~

皆さんこんにちは!
第6弾も前回に引き続き、京サラゆかりの血統!
デアノヴァの半弟、ヴァーチュスターの22編です!

評価基準は例によって、

①馬体や歩様は見てもわからないので自分では考えない。
②血統面(配合面を主として種牡馬成績・繁殖成績も含めて判断)
③牧場・厩舎についてはライン評価も込みで判断する。
④馬体については各種コメントを踏まえ、血統評価との相関性を重視する。
⑤連産や産次、母年齢、セックスバイアスは最終的に補正する。

としています。
評価はS+~Eまでの12段階評価としました。

Sクラス…GⅠ級
Aクラス…重賞級
Bクラス…OP級
Cクラス…準OP~1000万下級
Dクラス…500万級
Eクラス…未勝利級

5つの評価値の平均を出したのち、以下の2点を補正評価として加えたうえで総合評価と致します。
補正評価は+1でランク1つ分(BならB+に)となります。

[連産リズム補正]
これは高産次・連産についての考察として比較的信頼度の高いものとして、こちらのカミノアナログ氏の理論から拝借しております。

[セックスバイアス補正]
種牡馬の牡牝成績に関連して、補正を行っております。

また、総合評価に対して、募集金額・勝ち上がり率・獲得賞金期待値を勘案したコストパフォーマンス評価も採り入れ、最終的なオススメ度とさせていただいております!

こちらは独自の計算式に基づいておりますが、一口においては重要なファクターだと思っております。

それでは検証スタート!

【⑥ヴァーチュスターの22】
父モーニン×母ヴァーチュスター(母父シンボリクリスエス) 牡・母14歳時・
空胎明け
栗・高橋康厩舎 岡野牧場生産 1000万募集(預託生産馬)

【父馬から見た血統評価】

この馬の評価、正直非常に迷いました。
何といってもまず父モーニンをどう評価するか。

その父ヘニーヒューズは日本では現在ダート種牡馬としての地位を築いていますが、輸入前の本国ではエクリプス賞4度受賞の名牝Beholderを出したぐらいで他に目立った活躍馬はいません。

いや、Beholder出した時点で十分やんけ!とも言えるんですが、母のLeslie's Ladyがこれまた名繁殖で、いまや北米のチャンピオンサイアーに君臨しているInto Mischief(父Harlan's Holiday)やUAEダービーを18.5馬身差で圧勝したMendelssohn(父Scat Daddy)なんかを出していて、割と母のポテンシャルの影響も大きいんですよね。

ただ、ヘニーヒューズ自身の持つ血統表は結構オーソドックスで、父Hennessyが持つStorm CatやTom Foolと言った軟質な血を、母方のEight Thirty≒War RelicやNothirdchance≒Teo Pepiで支えるといった構成で、まあ確かにNorthern Dancer1本しか持ってなくてMr. Prospectorも持ってなくて、しかもHail to Reasonだらけの日本ならなんやかんや相手選ばなさそうだよね~みたいなところはあります。(Hail to Reasonの母はNothirdchance)

ヘニーヒューズ自身がアウト色強いうえに主導する血がStorm Catなので、どちらかと言えば柔らかいダート馬に出がちで、相手にフレンチデピュティやフジキセキ持ってきてWar Relic≒Eight Thirty≒Good Exampleにしたり、SpecialやDanzigやらで固めるみたいなのがもはやド定番みたいになってますね。

で、孫の代になってどうなのかというと、まずアジアエクスプレスが産駒デビューしてるんですがとにかく硬い。

アジアエクスプレス自身がヘニーヒューズの王道みたいな配合で、Cozzeneの母Ride the TrailsでSecretariatを刺激しつつ、Relic6×7やPortage6×7、なんかもあるんですが極めつけはおそらくアイアンリージ(ストロングエイトの父)とNew Providence、Meadowを経由したBull Leaのクロスで、「ああ、なるほど。このBull Leaでお前はあのパワーバイアスだった中山芝1600mをムーアを背にまくり勝ったのね…」と合点がいきました。

ちなみにこのBull Leaという馬、前にも出てきたと思いますがこれからも良く出てくると思うのでここで解説しておくと、種牡馬としても大成功はしたんですが直系は案外惟伸びず、代わりに母方に入ってアメリカで猛威を奮った名血です。
その血は例えばAlydarやRobertoなんかに受け継がれているといえばそこそこ特徴が伝わるんじゃないでしょうか。


これはBull Leaの肖像画ですが、Bull Leaはこの曲飛をよく伝える血で、あんまり馬体の見れない僕でも確かにアジエクはモロ曲飛だなあなんて当時から思ってました。


そんなわけで元々主張の薄いヘニーヒューズの柔らかさや軽さは母方のパワーに隅に追いやられてしまい、なんかどうもヘニーヒューズらしくない産駒が多くなってるのはそのせいじゃないかと推測しています。

メディーヴァルが今のところ勝ち頭ですが、母父ディープでもダ短に出てますからね(汗)


で、当のモーニンはというと、実はアジアエクスプレスと血統構成が結構似ているんですが(Cozzene、Tom Rolfe、Bull Leaが共通)、ただモーニンの場合は母がMr. Prospectorのクロスを持っていることやBull Lea自体もだいぶ奥に収まっていることからアジエクほどパワーに寄っているような印象はありません。
事実、モーニン自身も東京を得意にしてましたし。

なので、パワーとは言ってもBull Lea的なものではなく、フォーティナイナー的、Fappiano的な突進スプリンターの血がONになりやすいんじゃないかなあと推察しています。

なので地方でバンバカ勝ち上がりが出てるのに現状中央でまだ勝ち馬が出ていないのも何となく納得で、地方だとフォーティナイナーとFappianoの突進力で押し切れちゃうけど中央だとそうはいかんのよね…ということなんだと思います。

なので原則地方>中央の種牡馬だということを前提に置いたうえで、じゃあ中央で活躍馬を出すにはどうすりゃいいのよ!という部分を考えてみたいと思います。

まず、絶対サンデーは入れましょう。もうこれが手っ取り早いです(笑)
本当はサンデー経由しないHaloがベストだと思うんですけどね。
でもまあサンデーの方がお手軽なので。

そしてもう一点、モーニンの中のかた~い血はなるべく触らずに、やわらか~い血をなるべく継続してみましょう。

かた~い血…Bull Lea、Chop Chop、Blue Moon、Relic
やわらか~い血…Secretariat、Tom Fool、Sir Gaylord、Irish Castle

ザックリ言うとこんな感じでしょうか。

ではその観点からヴァーチュスターの22の配合を見てみます。

あああああ~!!
忘れてた…この馬Doff the Derbyだった……。

Doff the Derbyは母としてジェネラス(英ダービー)、Imagine(英オークス)などを出した名牝。
日本では武幸四郎の初勝利初重賞制覇となったオースミタイクーンなども活躍しました。

しかしその本領は牝系になってからで、日本に遺したマチカネベニザクラやシンコウエルメスの枝は脈々と受け継がれ、さらにImagineもコンスタントに活躍馬を出しつつ、なんと20歳の高齢でアメリカンファラオとの間にヴァンゴッホ(クリテリウムアンテルナシオナル)を出すという快挙を成し遂げました。

2013年、そのシンコウエルメスの子孫であるディーマジェスティが、父ディープインパクトが種牡馬としてまだ獲得していなかった皐月賞を8番人気で快勝し、その血の健在っぷりを示しました。

その年はディープ産駒3頭で牡馬クラシックを分け合ったのですが、ダービーを勝ったのがマカヒキ、菊花賞がサトノダイヤモンド。

どちらもHaloのクロスを持っていたのに対し、ディーマジェスティはブライアンズタイム×Sadler's Wells×Doff the Derbyという血統で、まさに母方のパワーでもぎ取った皐月賞だったと思います。

そんなDoff the Derbyの特徴はまさに今述べた通りで、Fighting Fox≒Margueryから来る米パワーと、母父Tulyarから来る欧ステイヤーの血を強烈に伝えています。

シンコウエルメスはそんな母に当時の欧チャンピオンサイアーSadler's Wellsですから、マジで日本で走らせたのが疑問なぐらいの超名血なんですが、如何せん日本の芝は合わなさ過ぎた。

そこにサンデーが配されて産まれたのがエルノヴァで、ここでもDoff the Derbyの影響は強く牝馬ながらステイヤーズSで2着に入るなど中長距離で活躍しました。

ヴァーチュスターは、そこに軟系Robertoのシンボリクリスエスですから、大まかなベクトルとしては間違ってはないものの、単純なスピードが足りなかったのか現役時代はダートで1勝したにとどまっています。


そして肝心のモーニンとの相性ですが、、、

まず目につくのはDame Mysterieuse≒Doff the Derbyです。
薄くはありますが、Eight Thirty、Tulyar、Fighting Fox、Bold Ruler、Blenheim、Bull Dogなど重要な血が共通でニアリーと言ってよい関係です。

母父シンボリクリスエスはPrincequillo的な柔らかさやTom Fool的な器用さも伝える種牡馬ではありますが、それ以上に鈍重さも伝える(というかスピードに値する血が少ない)ので、全体的にそれに値する血が母方からあまり補完できていないのが気がかりです。

速力の面を完全にフォーティナイナーとFappiano、そしてサンデーサイレンスに託すような形で、どちらかと言えば地方で走らせた方がいいよね…という配合であると言わざるを得ません。

中央だと、中山ダ1800とか東京2100でなんとかというところで、もしかしたら北海道の芝2600とかの方がチャンスあるかもしれません。

名牝Doff the Derbyを弄った部分は興味深いのですが、今後硬さがどんどん出てくるのではという懸念からこの評価に留めておきます。


[10.18 追記]
中央では未だに勝ち上がりが出ていないのですが、地方ではバンバカ勝ち上がっているとのことで、実際にモーニン産駒のレースをいくつか見てみました。

いやこれは、、、めちゃくちゃフォーティナイナーですね笑
ゲートも速いけど二の脚も速くて、そのまま逃げ切って圧勝みたいなのばかりです。

フォーティナイナーはMr. Prospectorですが、母Fileが突進型RibotのTom Rolfeなので、こういうテンに速い一本調子な馬が多くなります。
直仔も逃げ馬が多かったですよね?クーリンガーとか。

この馬の場合、更にDanzigが入ったDistorted Humor経由ですかさらにパワーに振れてそうです。

なので、テンからガーっと行ってそのまま押し切れる地方はいいけど、地方に比べて砂が薄い上に広い中央だとなかなか勝ちきれん状況になっているのかと思います。

ただ、ダートで前に行けるというのは何よりの武器ですし、最も不安だったスピード面の担保がされているというのは大きなプラス要因と見て、評価をD→Cに変更させて頂きます!

父視点の血統評価[C]


【母馬から見た血統評価】

母ヴァーチュスターについては父の項で語ってしまったので詳細は割愛。
母視点で見た場合、モーニン自身はMr. Prospectorのクロスを持っていたり、Storm Catを持っていたり、あながち悪い相手でもないように思います。

あと、デアノヴァはホッコータルマエ産駒でしたが、その場合もBold Forbes≒Doff the Derbyって形になるんですよね。

これを見ると「あれ?案外悪くないのかな?」と思うんですが、ホッコータルマエとの配合の場合はRed God≒Drone≒Boldnesian≒Haloの脈絡になってて、これが母方から見た場合一見地味だけどとてつもなく大きな差に感じます。

可能性は感じますが、デアノヴァと違って牡馬であることからも高い点数は付けづらいですね…。


母視点の血統評価[D+]


【配合総評】
たぶん1勝は出来ます。
なぜかというと、パワーを伝えるという意味でそれぐらいDoff the Derbyの血は優秀で、スピードが足りない懸念はあるにせよ、一芸に秀でているのは間違いないので未勝利レベルだとどこかで勝てるんじゃないかと思います。
というか最悪交流でどうにでもなるでしょう。

問題はそこからで、なかなか2勝目が遠くなるとは思うんですが、とはいえ何度も言ってる通り尖った性質ではあるので、どこかで条件ハマればスコーンと勝っちゃう可能性もあります。
札幌芝2600m不良とかだと、500万下なら多分圧勝ですよ(笑)

どっちかというと一口というより馬券で追っかけたいタイプですね。

[10.18 追記]
父の評価訂正にともなって、こちらも訂正になります。
長い目で見たら2勝ぐらいは固いんじゃないでしょうか!

血統総評[C]


【牧場評価】

生産は岡野牧場。デアノヴァの村上進治牧場から変わっています。
移動の理由を邪推してみたんですが、調べてみたら岡野牧場さんって今は年間2~3頭しか生産してないんですね。

僕の中で岡野牧場と言えば辻牧場、稲原牧場あたりに次ぐ永井さん(スズカの人)の御用牧場みたいなイメージで、特にスリー冠とかサンレイ冠でよく走っているイメージでした。

知らない間にえらく規模縮小したんだなあ…ケイティブレイブとかの活躍馬もいたので気づきませんでした。

生産馬のラインナップを見ていると、おそらく今は預託生産もかなり絞ってるみたいですね。
スターリーオレンジ(ステラートの母)が1歳世代の生産無いのでもしかしたらここと入れ替わっただけかもしれません。

生産馬はケイティブレイブの他は半妹のディアノイアがオープンまで行ったぐらいで目立った活躍馬はいません。

そもそもあんまり中央に卸してないですね、、、。

ただ、預託生産ですしそんなに気にしなくてもいいかなと。

山上さんもわざわざ移動させてるぐらいだから一定の信頼はあるんじゃないでしょうか。

グランデ育成との相性どうなのかなあ…。
こういうのこそ加藤さんとこの方がいい気もするけど。

牧場総評[D]


【厩舎評価】
みんな大好き!高橋康先生の登場です!!
今年は既に13勝で昨年の9勝を大幅に更新。
開業以来初の100位以内も視野に入っています。

京サラー高橋康は過去3頭でバブルアップハートが勝ち上がり。
個人時代は預託ありませんでしたので、着実に信頼関係を築けているように映ります。

起用騎手は断トツで永島。
あとはベテランなら酒井、若手なら斎藤新ってところで、この辺の順位の厩舎の中では結構悪くない起用方針だと思います。

勝ち上がり率が23%というのがいささか心許ないですが、成績上がってきてるのでこれから改善の余地もあるでしょう。

あと、何といっても見逃せないのが出走数の多さ。
1頭あたりの年間平均が5.3走で、6歳末まで走れば大体22戦程度という数字。
オープン馬や未勝利馬も含まれてると思うので、下級条件馬なら30戦ぐらいは見込めるでしょう。

ちなみにバブルアップハートは2歳11月のデビューで現時点で9戦。
ちょっと頓挫があったので年内はあと1戦出来るかどうかですが、それでも6歳末で30戦を優に超えるペースです。

30戦すると出走手当てだけでも1400万近くペイできる計算ですから、1000万募集の馬と考えればかなりのプラス要因なのではないでしょうか。

厩舎評価[C+]


【馬体相関評価】
測尺時馬体重…432㎏
デビュー時予測馬体重…474㎏

以下山上コメントから抜粋。

「モーニン産駒はダートでのスピードを生かす馬が多くなりそうですが、本馬もそのタイプになりそう」
「姉(デアノヴァ)に比べるとすでにしっかりした筋肉を持っている」

この馬の場合は、むしろ今の時点では緩いぐらいの方がいいのではと思っていたので、今の時点で筋肉がついているというコメントはどっちかというとマイナス方面の評価をしたい。

僕は馬体のことは詳しくないですが、常識的に考えて調教や年齢を経るにつれて馬体が硬くなっていくことはあっても柔らかくなることは確立として低いと考えているからです。

今後、軟らかさや軽さ、運動神経の良さが見受けられるようなら上方修正もありますが、現時点では悪い意味で血統通りの馬体に出ているように思います。

[10.18 追記]
ここは良くも悪くも変更なしとさせていただきました。
やはり現状ではむしろ緩さが勝っているぐらいの方がプラスだなあと思います。

馬体相関評価[D]


【補正要素】
連産リズム補正…+2(低産次・空胎明け牡馬)
セックスバイアス補正…±0

補正評価[+2]


【総合評価】
父血統評価[C]
母血統評価[D]
牧場評価[D]
厩舎評価[C+]
馬体相関評価[D]
補正[+2]

総合評価[C]

全体的な評価はD+級だが、3空胎明けの牡馬というのがかなり高ポイント。
コツコツと稼ぎながら2勝クラスまでは行ってくれるのではないでしょうか?

【コストパフォーマンス評価】
募集額…1000万
6歳末まで走った場合の必要経費…1000+60×5=4600万
総合評価に相応する予想生涯獲得賞金(手当や奨励金も含む)…[C]7000万(1000万下級)
未勝利の場合の最大損失額(3歳9月抹消時)…1949万

総合評価に相応する勝ち上がり率期待値…[C]40%(両親補正無し)

一口当たりの損益期待値…△¥4,188

出資オススメ度[C]


配合面などでオススメできる要素は薄いものの、空胎明け牡馬という点や、本馬と厩舎との相性を考えれば、最終的に損になる確率が相対的に低そう。

安いからと言って500万とかの馬に行くよりも、結果的には低リスクになる典型的な馬だと思います!

タフに走ってはくれそうなので、「とにかく出資馬が走ってくれないと週末が退屈で死にそう…」という一口中毒の方には特におすすめしたい1頭です!



検証は以上となります!!
参考になるかどうかはわかりませんが、面白かった!というかたはいいねや拡散して下さるとうれしいです!!

長文読んでいただきありがとうございました!!

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