【TAKEFUのはてな?】ディッシュクロス・キッチンタオル
今回はディッシュクロス・キッチンタオルです。
これまではキッチンクロス(台ふきん)やキッチンクロス(食器洗い)としてTAKEFUお馴染みの製品だったTAKEFU®100%のキッチン用品ですが、昨年リニューアル。
2枚組になり、ディッシュクロス・キッチンタオルとして発売になりました。
今回はこの製品について、相田代表にインタビューしました。
手触りがよく洗っていて気持ちいい、吸水性が高いのですぐに水を拭きとれる、臭くならない、などという利便性の面においてご愛用いただくことの多いこの製品ですが、そもそも本来は何を目標に作られたのか?
一見シンプルなこの布には、TAKEFUの根幹に関わる願い、地球環境を見据えた大きな役割を目指す信念が込められていました。
―今回リニューアルしたディッシュクロス・キッチンタオルについて教えて下さい。―
「キッチンクロス類は、TAKEFUが大切にしていることや、TAKEFUの特長を伝える上でとても重要な製品なんですね。TAKEFUやナファ生活研究所が何を目指して会社をやっているか?ということを知っていただく上で、凄く明確なコンセプトを持つ製品です。特にディッシュクロス。以前はキッチンクロス(食器洗い)という名前だったものですね。」
―ディッシュクロスは、食器洗いの際にスポンジ代わりとして使うものですね。―
「はい。具体的に私がどうやって使っているか、まずお話しますね。ご飯を食べる時、古くなったタオルを小さくカットしたものをあらかじめ食卓に置いておいて、食事が終わったらそれでお皿を拭きます。カレーとか、ドレッシングの油とかマヨネーズとか、そういう汚れをあらかじめ拭き取ってから、流しに持っていく。そしてぬるま湯を流しながら、ディッシュクロスでお皿を洗ってあげる。これで食器はちゃんと綺麗になります。そうすると、食器洗いにおいて洗剤を使わずにすみ、排水溝から川を汚染することがないんですよね。ここに“この製品が大切なコンセプトを持つ”所以があります。」
―川を汚染しない…環境への配慮ということでしょうか?―
「これはびっくりするようなデータなのですが、世界中の水質汚染は70%が生活排水なんです。20%が工業排水。残りは災害時に土砂崩れなどで色々なものが海まで流れ着いてしまうというもの。自然に抗えない分は、わずか10%なんです。工場が環境汚染してるっていう批判が多かったりするけど、それも20%。一番は生活排水なのね。だから自然が分解できないものは可能な限り減らした方が良いんですよね。海に行って薄まっても、何十年って世界中でやっちまったら…やっぱり海は汚れていくよね。」
―生活排水が70%…何故そんなに占めてしまうのでしょうか?―
「食事が終わると食べ残しや調味料や油や…いろんなものがお皿についてますよね。通常キッチンに持っていって、スポンジに洗剤をつけてジャーッと洗って、洗剤や汚れはそのまま流れていくじゃない?そして自然の中に流れていってバクテリアが分解していくわけなんだけれども、分解できないものもたくさんあるわけですよ。自然のものじゃない、石油から作られた合成洗剤とかね。石鹸だって分解するのに時間はかかるし、結局沼や池、湖、川、海が汚染されるわけです。日本のように下水道が完備してる国の場合、食べ残し等の汚れは下水場に流れていって綺麗に処理されるけど、世界中で日本みたいに下水道が完備してる国はそうそうないわけで…。そういった所は食卓から出た汚れが排水溝を伝ってそのまま川に流れ、そして海に流れていく。これは環境に与える影響が大きいなぁと…下水道がないんだから、そうならざるをえないんだけれどもね?つまり、海を汚さないためには排水溝から汚れを流さないのが一番なわけだ。そのためにはどうしたらいいのか?っていうことを考えました。」
―それで先ほどの、タオルで汚れを拭きとるという方法で食器を洗っているんですね。―
「外食してても思うんですよね。食べ残しや油が流れていくのを見ながらどうにかできないもんかなって。本当は業務用のものも作りたいなぁと…。排水溝にフィルターみたいな、油汚れを吸着できるようなものを装着できればと思ったりもするけど、まぁ設備費がかかるし普及しないなと思うわけです。だから僕は外食時でもやったりします。ナプキンとか濡れティッシュで最後お皿を拭いて綺麗にして、せめて自分のやつだけは流れていかないように。60億人のうちの1だから…。『せめて1人だけでも』って、みんなが思えば劇的に環境は変わりますよね?この活動が“TAKEFUのディッシュクロスプロジェクト”、っていうわけですよ。」
―生活排水が水質汚染の大きな原因であることを考えると、個々の意識が左右するものの大きさを感じます。―
「発売した2003年から2024年の今まで、この活動を含めてキッチンクロスを長きに渡って会社のコンセプト製品としてきました。だからつい最近まで、値段も変えずにやってきたんですよ。これは中国で生産しているんだけれども、20年前の中国と今の中国はまるで違います。コストだって変わらないわけないじゃない!ものすごく原価が上がってる。でもやっぱりとても大事なことで、1人でも多くの人に使ってもらわなきゃいけないから…まぁ赤字ですよね。 赤字だけど、ずっとそれで続けてきました。」
―売れば売るほど赤字、という状態ですか?―
「そう。それで3年ぐらい前、副社長から『そろそろキッチンクロスのコスト計算を、原価計算からした方がいいんじゃないでしょうか?』と提案されました。当然ですよね。これはTAKEFUの中で一番数が売れる商品。だからコスト計算すると、1点につき何円が赤字で、何円×何万個っていう…結構な金額が現実問題として押し迫ってくるわけよね?これまでは会社全体の利益を見て、社員や関わっている人たちの生活が守れればいいかなと思っていたけど、具体的に知っちゃうと…ちょっと辛いですよね(笑)見ないふりはできなくなりますよ。だからその時は副社長に、『コスト計算しないでください』って言っちゃったんです。ただそこから3年、たしかに考えねばな…という自覚もずっとありました。もっと世界に向けて発信できるようにするためにも考え方を変えなければいけないと思って、まずは色々仕様を変更しました。」
―どういった変更をしたのでしょうか?―
「まず、以前は四方をポリエステルやナイロンの糸で縫製をしていたのですが、分解力が高くゴミにならないものにしたいという思いがずっとあって、全て無漂白の綿の糸に変えました。そして包装する袋も大きく変わりました。以前はポリプロピレンのポリ袋だったんですが、製品自体は縫製の糸まで変えて全て分解するものにしたのに、袋はゴミになっていいのか?と考えて。コンセプトを持つ製品だからこそ、そこも大切にしたい。じゃあリサイクルできる紙にしようということになって、どうせ紙にするんだったら竹紙にしよう!と、竹紙から作ったわけです。以前の袋に比べると20倍ぐらいコストがかかってしまって…『社長、本当にやるんですか?』と、ここでも副社長は登場するんですけど。(笑)」
―活動を成立させ続けるためにも、現実的なコスト面を守る意見も必要ですよね。ー
「もちろんです。そこをきちんと考えてくれる人がいないと成り立つわけがないですよね。ただこの時は、『そこはもう仕方ないんじゃないですかね』と、私が言ってしまうんですよ。この製品を土の中に埋めると、2ヶ月もしないうちに影も形もなくなるんですね。自然から生まれたものが分解されて自然に帰る。ポリの袋に入れてしまったら、そのコンセプトが中途半端になってしまう。これは20倍かかってもやらなきゃいけないことで、やる時はやるんですよ。そうしないと伝わらないんじゃないかな?と思ったんです。コンセプト製品だからこそ、それをやる必要があったわけですね。」
―メッセージを伝える目的がある製品だからこそ、パッケージも重要なんですね。―
「ということで、竹紙を作ることになりました。今一般的にある竹紙って竹が数%入ってるくらいなんですけど、これは竹100%の紙。デザインは、売り場に出ている時に中身が見えた方が良いんじゃないかと思い、でも埃が入らないように、四つ角だけ落として製品を出す形にしました。」
―竹100%の紙……、これだけでもひとつの開発ですね。―
「工場の方々と、試行錯誤しましたよ。しょうがないよね、僕らは最初に竹の繊維っていうものを扱って、今まで二十数年パイオニアとしてやり続けてきているから…やることなすこといつも最初のことばっかり。紙屋さんじゃないから竹紙を販売する予定はありませんが、味のある紙だよね。価値観がわかってもらえるんじゃないかと思っています。」
―TAKEFUをあまり知らない方に伝える時にこそ、このパッケージが力を発揮しそうですね。―
「そしてこの紙ができたことで、中身も含め全て自然に還るものが作れました。そしていよいよプロジェクトを届けよう!ということになりますが、この考え方は、下水道やゴミ処理が完備してる日本よりも、むしろ発展途上国であるとか、アメリカやヨーロッパ、東南アジアの下水道が完備していない環境の場所にこそ理解してもらわなきゃいけない。ということで、名前を“キッチンクロス(食器洗い)”から“ディッシュクロス”に変えました。 食器を洗う布のことを“キッチンクロス”と名称しても世界には伝わらないので、伝わるものに。そして今までキッチンクロス(台ふきん)と呼んでいたものは、“キッチンタオル”という名称の方が伝わりやすいということで、そうなりました。 で、3年前から抱えていたコスト問題も考え、洗い替えを購入する方がとても多いという意見もあったので、2枚セットにして新たに価格をつけました。ディッシュクロスは1000円(税抜)、キッチンタオルは1200円(税抜)です。」
―そうやって今回のリニューアルが完成したんですね。キッチンクロス自体は2003年から発売しているということですが、TAKEFUの初期にできたのですか?―
「最初にボディタオルのノーマルができて、ベビーソフトができて、その次ですね。実はTAKEFUを始める前、この前身となるものを僕はコンサルしていた会社で企画していたんです。商品企画の仕事をやっていた時、同じようなコンセプトの構想があって、木から作る再生繊維の素材で食器を洗う布を企画して、東急ハンズとかロフトとかに置かれていましたよ。パッケージでゴミを出したくないという思いもその時からあって、ポリプロピレンの袋でも2分の1の質量にすればゴミも半分になる!っていう風に考えて、一般的なものの半分くらい薄い袋にしました。これはもう1990年代にやってるんです。ただその商品、袋を薄くした結果シュワシュワになっちゃって。新商品なのになんか古ぼけた印象になっちゃってね。コンセプトは通せるけど、購入する側は嫌だよね。やりすぎたかなと反省しました。そうやって30代の私は勉強しましたね。」
―それから竹の繊維を発想し、製作に至るんですね。―
「ベビーソフトができたら、自然とすぐにキッチンクロスを作ろう!と思いましたね。最初の頃なのでなかなか、1回でうまくいく製品なんてほとんどなかったけれどもなんとか工場さんと話し合いながら…。もうひとつ製作過程の裏話をすると、実は布ナプキンはこのキッチンクロスからできたんですよ。素材は全く同じで、布ナプキンは片面にベビーソフトを一枚乗っけているんです。キッチンクロスを散々使ったお客様が、ある時それをナプキンに使ってみたっていう報告をしてくれて、『これ以上のものはありません!最高なんですよ!』と。じゃあそのまま布ナプキンにしようとなってできたのが今あるものです。キッチンクロスを使い込んでいくと、摩擦でどんどんどんどん糸が細くなっていって、より柔らかくなっていくわけですよ。その状態でご使用いただいたみたいですね。」
―布ナプキンも凄く柔らかくて気持ちいいですもんね。触り心地の気持ちよさが似ているので納得です。このキッチンクロスシリーズは先ほどの環境面以外にも、単純に使用感が気持ちいいという良さもありますよね。―
「TAKEFU100%なので、物凄く気持ちいいですよね。先に汚れを拭きとれば洗剤をあまり使わないからすすぐ水も少なくて済むし、水に触れる時間が短くなるから手荒れも少なくなるし、いいことがたくさんあります。」
―洗剤をつけるのが常習化しているので、使わないと食器に菌が繁殖したりしないのかな…と抵抗感がありますが…。ー
「食器が雑菌で汚染されることは全然ないですよ。もし油が取れなくてぬるぬるする感じがあったら、そういう時には石鹸をつければいいですよね。むしろ汚れたままの食器を重ねたり、流し場でまとめて水に浸けたりすることで、本来は油汚れがないものまで油まみれになったりもしてるんです。先に拭いちゃえば、お皿洗い自体が最小限で済むわけだ。」
―たしかに、習慣を変えるのは一見面倒にも感じますが、結果的に食器洗いという家事の負担を和らげることにもなりえるんですね。―
「ディッシュクロスの一番いいところがあってね。ぬるま湯で洗ってる時、特に冬場とか。使っている方は感じたことがあるかな?僕はこのキッチンクロスを発売する前に、3ヶ月間毎日夕食後の食器を洗ってたんです。その頃はTAKEFUの初動で帰りも終電になったりしていたので散々疲れてて、家族も全員寝静まってる。その中でキッチンの明かりだけ付けて食器を洗ってるとね、最初は疲れたな…っていう感じだったんですけど、徐々に変わっていったんですよ。気持ちが落ち着いて考えが整理されてきて、職場で言わなくていいことを言ってしまった人に対して明日最初に謝ろうかな、と思ったりしてくる。この生地ってぬるま湯で洗ってるとどんどん柔らかく気持ちよくなっていくじゃない!気持ちいいものに触れると筋肉は緩んでいくよね。その緩みや気持ちよさが食器洗いをしながらじんわり全身に伝わっていく。これはTAKEFUの他の製品でもよくあることだけど、体が緩むと今度は心がゆるんでいくんですよね。」
―これはなかなか想像しがたい感覚だと思いますが、たしかに使っているとほっとするような気持ちになったりもしますね。―
「会社や家庭でストレスがあってイライラしたり、多忙で気持ちが落ち着かなったり、それで仲間や家族と衝突してしまうこともありますよね。リラックスしたいと思ってマッサージに行ったら1回6000円くらいはかかるわけで…。ディッシュクロスで食器を洗いながら落ち着いて自分を見つめなおす時間があることで、日々の生活を反省しながら少しでも人との交わりが上手く回っていけばな、リラックスできればな、と願っています。」
ディッシュクロス/キッチンタオルについて、相田社長へのインタビューでした。
私自身、吸水性や臭くならない点、触り心地の良さなど実用面が好きで使ってきた製品ですが、今回は込められたコンセプトを聞き、この小さな布にそんなに大きな願いが込められていたのか…と驚きました。
「TAKEFUのディッシュクロスプロジェクト」
“プロジェクト”と聞くとなんだか壮大で、自分の手には負えない大きな流れのようにも感じてしまいますが、実際は身近な、ひとりひとりのキッチンでできることのようです。
自分の日常が世界を救う一端になるかもしれないという希望を持って、まずは気になる時だけでも、少しでも参加していきたいと感じます。
そしてこの製品は、TAKEFUのコンセプト製品です。
TAKEFUは肌が繊細な方や緊張しやすい方など、人に優しい製品がたくさんあると感じていましたが、その目は自然にも向いているんだと知ることができました。
また後半の話からは、結果的に使う自分にとっても優しい製品だとも思えます。
使い方はもちろん強制ではないので、ご自身が使いやすいように、自分のためにまずは使っていただき、この製品に込められた願いを心の隅に置いていただけますと幸いです。
インタビュアー・みー
1992年生まれ。ナファ生活研究所直営店 Shop of TAKEFU "eau" 勤務。趣味は宝塚観劇、旅行、食事、ラジオなど。 寒がりなので、冬はソフトフィットインナーに癒布を重ねて温まっています。