きっと真なべ屋に行ってみたくなります
かつて笠岡には多くの旅宿があった。 あったというのは、その大半がすでに廃業し、いまだ旅宿をやっているのは、志鶴のいる真なべ屋をはじめとして、ほんの数軒になっていたからだ。 これらの旅宿は総称して「潮待ち宿」と呼ばれた。 (『潮待ちの宿』触書の男より)
『潮待ちの宿』は江戸末期から明治初期にかけての
岡山県の笠岡港を舞台にした、志鶴という女性が主人公の物語。
旅宿「真なべ屋」にやってくる、様々な人々との交流を経て少女から一人前の女性になっていく過程を感情豊かに描いています。
第一話『触書の男』 (志鶴13歳)
第二話『追跡者』 (14歳)
第三話『石切りの島』(16歳)
第四話『迎え船』(18歳)
第五話『切り放ち』(24歳)
第六話『紅色の折り鶴』(35歳)
伊東潤作品を一度でも読んだ方はわかると思うのですが、質実剛健で男!な作品が多い中で、この作品は新鮮な光を放っています。
伊東潤が本作で描いたことは以下。
上記詳細をお聞きした作品についてのインタビューは、先週配信した伊東潤のメルマガバックナンバーでも読むことができます。
幕末〜明治の激動の時代、志鶴のような女性の一生は歴史には残らないかもしれないけれど、そんな志鶴の目から見える物事はとても魅力的に映ります。一編ずつにライトミステリーや恋愛物、歴史解釈物など、飽きさせない工夫がされているのも伊東潤ならではの世話物スタイルです。
同時に全編を通じ、真なべ屋での働きや、旅人たち・街の人たちとの交流など、しっかりと物事に向き合って丁寧に暮らしていることが伝わってきます。志鶴の人柄に、ある人は助けられ、ある人は惹かれ、と、志鶴も様々な人との出会いで成長していくと共に、少なからず相手にも影響を与えていきます。
志鶴を取り巻く人々が実に生き生きとしていることも魅力のひとつ。『潮待ちの宿』をテーマにした「伊東潤の読書会」では、自然とキャラクター人気投票に近いものが行われていました(笑)かなり盛り上がったパートでした。
実はその読書会時の皆の意見を取り入れて、伊東さんが登場場面を増やしたキャラクターがいるのですが、読めば「ああこの人か・・!」とわかると思いますので是非予想しながら読んでみてください。また歴史上の人物も登場します。それはまたお楽しみということで。
読んだ後は必ず、笠岡諸島に行って、真なべ屋を探したくなります!(いつかオフ会もやりたい・・・)
伊東潤ファンにも、世話物ファンにもオススメの一作は、明日発売です。
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