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祖母の帰宅の事
7月15日
朝は、昨日と同じく祖母と一緒にリンの散歩に行った。
公園でカンダさんに会ったので、双方に紹介した。祖母はカンダさんのお爺さんのことを知っていて、ああ、カンちゃんのお孫さんと頷いている。当のカンちゃんはすでに鬼籍の人だそうだ。少し雑談をして別れる。
祖母は、夕方には帰ると言う。今度は祖父と二人でおいでよと言うと、嬉しそうに頷いた。
あたしたちの目に狂いはなかった。引き続き家のことは頼んだよと言うので、努力しますと答えた。祖母は二度ほど頷いていた。
今日は一時間ほど残業をした。言った通り祖母の姿はなく、台所のテーブルの上に祖母の筆跡で「冷蔵庫」とだけ書かれたメモが乗っていた。冷蔵庫を開けてみると煮物が入っている。帰る前に作っていってくれたらしい。
リンと散歩に行き、夕飯を済ませた後で祖父母の家に電話を掛けた。予想通り祖父が出た。この家は、在宅していれば必ず祖父が最初に電話を取る。
祖母はちゃんと帰宅しているという。
祖母は照れ屋な傾向があって、面と向かって礼を言うと必ずはぐらかされるので祖父にそれとなく伝えてくれるように頼んだ。
祖母の作った煮物を久しぶりに食べた。祖母の料理の腕前はかなりのものなのだ。
そのうち顔を見に行くよと言って電話は切れた。
座敷で本を読んでいると、キスミから電話が来る。土曜の夕方にこちらに来ると言う。
今度は一人で来るのかと尋ねると、馬鹿言え前も一人だったじゃないかと言われた。まあ、ともかく今度も一人だと、キスミは言う。
開いた窓から少し冷たい風が吹き抜けて、風鈴を鳴らした。