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メロンと洋菓子の事
8月22日
会社でヨネヤにまた紙袋を渡された。実家からメロンが送られてきたという。重くて悪いが貰ってくれと言うので、ありがたく受け取る。これと同じ大きさのメロンが家にあと四個あるそうだ。
前にモチヅキにプリンなどを貰ったお礼に、メロンを持って行きがてら、何か買って行きたいと言うので、会社帰りに一緒に寄ることにした。
普段降りない駅で電車を降りる。夏休みの学生らしい若者で賑わう大通りを抜けて、高級ブランドの路面店を横目にしばらく歩いた。そこから一本脇道に入った住宅街の入り口に位置する店がモチヅキの勤める洋菓子店だ。
脇道にあるのに客足が途切れないようで、出てくる客と入れ違いに店内に入る。ショーケースの前に背の高い男性店員が立っていて、ガラスについた曇りを丁寧に拭いていた。
いらっしゃいませと声をかけてきた女性店員にモチヅキの名を告げると、すぐに奥へ引っ込んでモチヅキを連れてきてくれた。
仕事中に迷惑かと思ったが、モチヅキはうちの店はオーナーが人格者だから大丈夫と言って笑っている。後ろで先ほどの女性店員もこっそり笑っていたので、先ほどよりも俯いてショーケースを磨いているのがオーナーなのかも知れない。
ヨネヤがメロンを渡すと、店のみんなでいただきますと言って喜んでいた。
ヨネヤはチカコさんの分と自分の分だと言いながら、プリンを二つとショートケーキ、チョコレートケーキを買っている。
僕は、妹のプリンと自分用にコーヒーゼリー、それからたぶん妹が食べると思うのでモチヅキに任せて見繕ってもらった焼き菓子をいくつか買った。
帰宅すると、昨日のスパゲティナポリタンの残りを妹がグラタンに作り直して、ついでにサラダも用意してくれていた。なかなかおいしくできている。妹も自分で気に入ったようで、わざと作りすぎてもいいかもと呟いていた。
モチヅキの店で買った洋菓子を見せたら、別腹と言いながらプリンを取り出している。焼き菓子の中に、鳥の形をしたクッキーがいくつか入っている。庭によく来るメジロのような色をしていた。
ヨネヤに貰ったメロンは冷やしておいて、明日にでも食べようと思う。
リンは初めて見る丸ごとのメロンが気になるようで、袋から取り出したメロンを見て、しばらく匂いを嗅いだり後ずさりしたりを繰り返していた。