
キスミの来た話
7月17日
約束通り、夕方になるとキスミが瓶ビールと、何かがごちゃごちゃと詰まったビニール袋を手土産にやって来た。
例によって、リンは初対面の相手でも嬉しそうに出迎えている。
キスミは居間に入ってもサカエダさんには気がつかなかった。サカエダさんはやはり気にしていないようで、僕と目が合うとにこにこと笑っている。
夕方になって出てきた風が、しきりと風鈴を鳴らしていた。これのおかげで、暑いながらも随分と気分良く過ごしている気がする。
キスミにそのことを言ったら、風鈴なんて持ってきたっけ? と言って不思議そうな顔をした。忘れっぽい友人だと思う。
適当に作ったつまみを肴に、くだらない話で盛り上がる。
リンは、キスミに小さな犬用のビーフジャーキーを貰って真剣に格闘していた。キスミは犬用のビーフジャーキーをふざけて囓り、薄味だけど意外と旨いなどと呟いている。
そのうちに眠くなったと言い出すので、風呂を勧めその間に座敷に布団を敷いた。
風呂から出てきたキスミは、半分目を閉じたまま昨日は全然寝ていないのだと言った。そういうことは、先に言っておいてほしい。
キスミが寝てしまってから、リンと少し遅い散歩をした。