【CL Review】19-20 2節 リバプール対ザルツブルク(後半)
前半はこちらをご覧下さい。https://note.mu/takedai1017/n/nb8f980746390
リバプールのビルドアップに対し、ザルツブルクの選手それぞれのタスクが明確化したことで、ザルツブルクが勢いを取り戻す。
そんな展開の中、迎えた後半。前半終了時に走ってロッカールームに戻るクロップが印象的だった。ザルツブルクの反撃に危険を感じたのだろう。このクロップの危機感は現実のものとなる。
南野の献身性
後半開始もザルツブルクの戦い方は変わらない。中盤ダイヤモンドで、CBからの球出しはSBに限定。SBにパスが来たところをインサイドハーフがプレスするという流れだ。
インサイドハーフが飛び出すということは、その背後にはスペースが生まれる。そこをアンカーのユヌゾビッチがスライドして埋める訳だが、DFラインの目の前、いわゆるバイタルエリアを一瞬でも空けるのは少々怖い。逆サイのムベプがスライドに一瞬でも遅れると、そこには怖い怖いフィルミーノがいるのだ。
よって、ユヌゾビッチが思い切ってスライドできないシーンが何度かあった。その困った状況を助けたのが南野である。
ファビーニョを見ている南野がプレスバックしてバイタルを埋める。危険なエリアに蓋をしてくれたのだ。こうすることで、スライドが間に合わなくて、危険な場面を招くシーンはほぼ見られなかった。また、ファビーニョにいくかプレスバックするかの判断の良さも素晴らしかった。
しかもプレスバックでチームがボールを奪えた後はショートカウンターに転じる。スラムダンクの桜木じゃないが、チームのためにプレスバックした後にすぐに速攻で走れるあのタフさは本当にすばらしいと感じた。
牙をむくザルツブルク
ザルツブルクが見せたプレスになかなか解決策が出ないリバプール。そして彼らは、更なる窮地に追い込まれる。54min、59minと立て続けにゴールを許し、なんと3-3の同点に追いつかれてしまうのだ。
ここでも輝いたのは南野だ。再三に渡りチームのために走った男に、その報いが来たのだ。
54min、ファビーニョのパスをカットした南野。そこからザルツブルクはショートカウンターを発動。後ろの攻守の切り替えも速くなっており、全体を押し上げて攻撃に厚みをもたらす。
最初のショートカウンターは失敗に終わり、リバプールにロングカウンターを喰らうも、それをしのいだ後にリバプール陣営には広大なスペースが。H・チャンのクロスに南野がボレーで合わせて3-2とする。
さらに59minもリバプール陣営でザルツブルクがボールを奪って、南野のアシストからホランドがゴールした。
この立て続けのゴールからザルツブルクのメンタル面での優位が見られた。プレスが定まらず、ズルズルと下がって3失点喰らった時と比べ、ボールの取りどころが決まり、タスクが明確化したとこで前で戦う意識がついたのだ。
これは明らかにフォーメーションを的確に修正したマシュー監督のおかげだろう。確かな戦術眼でチームを立て直した。そればかりでなく、監督はハーフタイムに選手に檄を飛ばし、選手を勇気づけていた。(このシーンはYouTubeとかに動画があるので見てみて下さい)モチベータ―として優れているのだろう。
動くクロップ
3失点目を喰らったプロップがとうとう動いた。61minにヘンダーソンOUT ミルナーIN、さらに63minにワイナルドゥムOUT オリギINでフォーメーションも下図のような4-2-3-1とした。
こうなってくるとザルツブルクのプレスは今まで通りのままではいかない。ファビーニョの横に繋ぎもできるミルナーが入り、的を一本に絞れなくなった。
ただでさえ、フィルミーノの横に立つだけでも厄介なのに、さらにワイナルドゥムが見せていたSB、CB間落ちなども見せ、ポジション変化を活性化した。よって、この選手交代からようやくリバプールは高い位置でボールを持てるようになった。
一瞬の輝き
上記の変更でザルツブルクを押し込み出しだリバプール。
世界最高峰の選手たちは少しの時間と少しのスペースだけで得点ができる。リバプールの4点目は、それを世界に思い知らせるゴールだったと思う。
リバプールが押し込んだ状態でサラーのクロスはザルツブルクがヘッドで跳ね返す。ボールはショボスライの足元に。これをショボスライは少しトラップミスする。それを詰めたファビーニョ。浮いたボールが向かった先にはフィルミーノがいた。フィルミーノへボールが向かったことを確認したサラーは咄嗟に裏へ走り出す。そしてフィルミーノからはそこへきちんとヘディングパスが。
ファビーニョが詰めてイーブンのボールになったあの一瞬で、フィルミーノとサラーは通じ合ったのだろう。ザルツブルクが後悔するとしたらショボスライのトラミくらいか。(トラミという程でもなかったが)
即興で得点の演出ができるリバプールの個の力が出た瞬間だったと思う。
試合はその後、大きな変化点を迎えることなくタイムアップ。
総括
本当に面白い試合だった。前半のリバプールの工夫されたビルドアップ。そして、それに配置変更で対抗し、盛り返すザルツブルク。サッカーの見どころがたくさん詰まったハイレベルな試合だったと思う。そして南野が世界のサッカーファン強烈なインパクトを与える試合だった。
ザルツブルクのMVPにはもちろん南野。リバプールからはビルドアップから得点シーンの演出まで色んな場面でザルツブルクを苦しめたフィルミーノ。