「推しに願いを」(ゲムマ2024秋発売)デザイナーズノート

明けましておめでとうございます&はじめまして、たけと言います。
ボードゲームで、遊んだり、時々作ったりしています。

ゲームマーケットで拙作「推しに願いを」を購入していただいた方、ありがとうございます。お届け出来なかった方、準備が足りず申し訳ありません。

ゲームマーケット2024秋が終わって、作者がデザイナーズノートを書いているのを見て、自分も折角なんで覚えているうちにメモを残しておこうと思いノートを始めました。


「推しに願いを」の紹介

最初に少し、作成したゲームの紹介をします。
「推しに願いを」は自分が作成した2作目のゲームになります

ゲームの見た目

ゼンマイを回すと歯車(フィールド)とコマが動くギミックがメインで、そのフィールドで資源を集めて、中央に持っていき得点にする。というピック&デリバリーのゲームとなっています

作成スタート

このゲームは自分の2作品目のゲームになります。
1作目「トリテ人狼」を作ったあと、何か新しいゲームを作りたいなと思いながらも、いいアイデアが出ずボツにしたりを繰り返していました。

これは、円形のフィールドをモンスターに追いかけられながら逃げて点数を稼ぐゲームでした。
テストすると、プレイヤーとモンスターが同じ方向にグルグルするだけで単調で、まぁ正直微妙でした。
それでもこれを良くできないかと考えていると、、、

  • 一方向に回るのが微妙なら、モンスターをワープさせたら良くなるんじゃないか?

  • 単純にワープさせるんじゃなくて、遊星歯車にモンスターコマをのせてワープさせたら面白いのでは?

と、歯車を使うアイデアに発展していきました。

ちなみに、歯車にコマを乗せたら面白そうというアイデアは「ルパン三世 カリオストロの城」の終盤、時計塔でルパンと伯爵が戦うシーンの影響が大きいですね。
ルパンと伯爵が両方とも巨大な歯車に乗って戦うのですが、歯車のサイズが違うので2回目の殴り合いのタイミングがずれるというちょっとしたシーンですが、この歯車の大きさでタイミングがずれるというのは面白いと感じたんですね。
合わせて自分がスチームパンク的世界観が好物なのも影響していると思います。

この「歯車にコマを乗せて動かすゲームを作る」というテーマがこのゲームのスタート地点にでコアになっています。

コンポーネント

歯車を探して

歯車をフィールドにするという方針は決めたものの、ゲームにちょうどいい歯車なんて無いし、そもそも遊星歯車を設計とかできるのか?という疑問が当然のように出てくるわけです。
で、最初は厚紙を切って歯車を手作りする事を考えたわけですが、不器用な自分には無理だったのでだと思い早々に断念。
色々検索した結果レーザーカッターで歯車を作っている人を見つけたのでレーザーカッターを使うことに決めました。
自分では機材を持っていないですが、機材を借りれるファブリックスペースで試作した結果、、、

適当に作った歯車でもなんとなく回ることが判明!最初に作った歯車はアプリの星形作成ツール作ってサイズを適当に決めて作ったものですが、それでも位置を合わせるとそこそこ動くんですね。
ちなみに、「そこそこ動く」と、「遊べるレベルで動く」の間に大きな壁があるのにこの時は気が付いていませんでした。

なにはともあれ、そこそこ動くのでこれはイケるとなったわけです。
しかし、歯車にロマンを感じる人がどれくらいいるかは少し不安がありまし。

需要の確認

歯車ロマンに需要があるか今一自信が持てなかったので、ゲムマで反応を見てみることにしました。
自分のブースで歯車を試作品Ver0.1として飾って、興味を持ってくれた人にアンケートするという行き当たりばったりな方法です。

ゲムマ2024春ブース反応

反応は想像以上に良かったです。(右の売り物よりも良かったです・・・)
最初は、試作品にもなっていないような物をゲムマで置くことに抵抗がありましたが、需要があるというのが確認できるという安心感はすごくて、やって良かったと思います。

なお、アンケートでは、歯車+ボードゲームでツォルキンを想像する人が多かったです。

この時ゲーム内容は全く決まっていなかったのですが、ツォルキンとは別のゲームにはしたいと思っていました。
ツォルキンはいいゲームですけど、それと同じではダメだという感覚はありました。同じなら「それツォルキンでいいじゃん」ってなるわけですし。

ツォルキンの歯車は資源の補充を楽にするツールで、極論を言えば歯車でなくてもプレイヤーコマとトークンに置き換えることが可能なものと思っています(もちろん、ツォルキンは歯車コンポーネントとテーマとルールがマッチしたからこその名作だとは思います)。
このゲームは歯車を別の何かに置き換えることができないゲームを目指しました。

安定性との闘い

ゲーム内容については、決まっていないものの、歯車を直接手で回すのではなく、ハンドルやゼンマイのようなもので回す機構にしたいと思い色々試作を作成していました

当時の試作品

で、試行錯誤しながら半球の最終形に近い形になっていました。また、そこそこ動くだけではゲームにならない(大体1週くらい回すと歯車が噛んで動かなくなる)状態で、これを解消するのに苦労していました。

歯車の試作を始めたのが4月頃、サークルカットを出した8月の時点でも、歯車が噛む問題は全く解決していませんでした
ただ、歯車の種類を調整すれば解決するだろうと、まだ楽観的に考えてました。
なお、結論からいうと歯車の種類は安定性にそれほど関係なかったです。

9月になっても、歯車が噛む原因がわからなかったのですが、内側の歯車を置くのが面倒で、外輪の歯車のみ置いて何気なく回していると、内側の歯車が無いにもかかわらず歯車が噛む現象が発生しました。
つまり、噛む原因は内側の歯車ではなく外側だったのです。
この外側の歯車、サイズの問題で4分割したパーツを組み立てる仕組みになっていたのですが、組み立ての部分がゆるくて引っ張ると少し変形する状態でした。
試しに歯車をボンドでしっかり固定すると、内側の歯車を置いても全然噛まなくなりました。つまり噛む原因は「外歯車の変形」でした。
つまり、全く関係ないところで試行錯誤して時間を使っていたわけです。
思い込みじゃなくて、原因をつかんでから対策するって大切ですね。

ただ、外輪を変形しないようにしても、コマを置くと歯車が噛んで動かなくなる現象が発生してはいました。コマを歯車を置かない場合は安定して動くのですが、コマを置くと噛むようになる状態です。
コマの置き方に原因があるのかと思い、偏るようにコマを置いたパターンと均等に置いたパターンで検証したところ、偏りのあるパターンで歯車が噛んで動かなくなることがわかりました。
ということで、歯車の片側に重さが偏るのが問題っぽいと感じたので、歯車を重い素材(アクリル)に変更し、コマを一回小さくしてみたところ、コマを偏らせても安定して回るようになりました。
歯車が噛むもう一つの原因は「重心の偏り」でした。

対策の結果、外輪の変形と重心の偏りを対策した最終Verはゲムマの展示時間の噛むことなく安定して回すことができました。

教訓

思い込みは危険。仮説と検証で原因を掴むの超大事。

ゲームルール

ゲームシステム

コンポーネントで歯車を回してコマを動かすのは決めていたのですが、ゲームのルールは決まっていない状態でした。
で、歯車の動作を安定させるために、いろいろ考えていたときに出てきたアイデアが・・・

  1. 軸が作れないので、重りを置いて少しでも安定できないか?

  2. とはいえ、MDF(素材)は軽いのであまり重りにならない

  3. 重りはゲーム側で準備できないからプレイヤーに準備してもらえば良いのでは?

  4. コンポーネントもステージっぽいし、プレイヤーにフィギュアとか置いてもらえばいいのでは?

  5. 中央にフィギュアを置くなら、そこにアイテムを収めるようなゲームが良さそう

という感じで「中央のフィギュアに、アイテムを届けて点数を得る」ゲームのコンセプトが決まりました。
実際フィギュアを置いて回すと絵になるのでオブジェにもなると思います
▼フィギュア置いたら楽しくて飾り付けまでしてしまったの図▼

フィギュアを置いてかれはイケると感じたのでゲムマカタログのカットもフィギュア付にしています。初めてねんどろいど買いました。最初からフィギュアを置くつもりではなかったけど、ちょうどいいサイズ感。

ゲムマ2024秋サークルカット

歯車の利用

歯車を回すルールをゲームの華にしたかったので、歯車を回す価値を考えました。
最初は、コマを1アクションで1歩動かすルールだったので、「歯車を回すことで一気に移動ができる(でも別のコマは遠くなるかも)」という意味を持たせて各プレイヤー毎ターン1回歯車を回せるアクショとしました。ただ、無制限に歯車を回せるというのはやりすぎで何かの制限をかける必要があると考えました。
ただ、歯車を動かすことに制限を加えるにしても、アナログなのが問題で次のような難しさがありました

  • 動かせる歯車の歯数を制限する(3歯分までとか)
    ⇒アナログなのでどこまで回すことができるか判断ができない

  • 何らかのギミックで回る量を制限する
    ⇒クラッチか何かを使えば回せる量は判断できるかもしれないが、
     コンポーネントが作れるか?

つまりギミックは複雑にならず、明確な制限を付けたいということです。
それで、たどり着いた結論が「手首が回るだけ」という制限でした。
個人的にはアナログゲーム的でお気に入りの要素ですがどうでしょうか?

最終的には、移動を1歩ではなく無制限にし、歯車上に障害物のコマを置くことで、移動しやすいコースを見つけるゲームに変わったため、歯車を回す意味合いは「歯車を回すことでコースを組み替えて効率よく移動できるようにする」というものになりました。
変更後でも、ゲームの華になるアクションとして残せたので満足してます

プレイ時間

このゲームのプレイ時間90~120分は、最近のゲームとしてはかなり長めとなります。
実際にテストプレイ時でもプレイ時間が長めなのは気が付いていました。
しかし、プレイ時間が長い理由を考えた結果、「プレイ時間」と、「歯車を回すアクションの魅力」がトレードオフになっていたので、プレイ時間の方を受け入れる判断をしました
このゲームで時間が延びる原因は主に下記の2つでした

  • 自分のターンにならないと計画が立たない
    ⇒他プレイヤーが歯車を回すことでフィールド全体が動き
     それまでに計画していた内容が台無しになる

  • 歯車を回すアクションで時間がかかる
    ⇒実際に回してみないと結果が想像し難いため、
     回しながらや、回した後でアクションを考えることになりがち

歯車を回すアクションがフィールドに与える影響が大きく、プレイヤーが悩む原因になっていました。
おそらく、歯車を回すアクションを、結果が想像できるレベルに控え目な効果にすればプレイ時間が短縮できそうとは考えました(毎ターン1歯分動くとか)。
ただ、歯車アクションはこのゲームの特徴であり魅力だと思っているので、ゲームとしての魅力を優先することにしました。

とはいえ、2時間は長いので、短縮ルール(運要素強め、1時間くらい)を試遊用に準備しています。

コスト・金銭

制作コスト

「推しに願いを」のゲムマ販売価格は5000円となっています。
安すぎ?って意見をもらうことが多かったですが、きちんと赤字にならないような金額なので心配しなくても大丈夫です。
12月末の現時点で、製造コスト+ゲムマ出展料+交通費+その他コスト(委託料、送料とか) くらい出してお釣りが帰ってくるくらいにはなっています。
なお、作業工賃については考えないものとします
(1個あたり、組み立てや丁合で1.5時間くらいかかります)

今作は少量生産なのが確定しているので少量生産でもやっていけるように工夫をしています。
ゲームの製造コストとしては、製造個数に影響を受けないコスト(固定料金、基本料金)と製造個数で決まるコスト(従量料金)により決まります。

  • 製造コスト=固定費用(イラスト費とか)+外注基本料金+従量料金×製造個数
    ⇒ 製造単価=(固定費用+基本料金)/製造個数 + 従量料金

少量生産の場合、(固定費用+基本料金)/製造個数 の部分が重いが、製造数が増えれば無視できるほど小さくなり安くできる構造となっています。

今回は少数生産が確定しているので、この固定費を減らすようにしています。このゲームでは、ロゴ&イラスト費以外ほとんど固定費はないです。
通常のゲームでは、カード、マニュアル、化粧箱などを外注するので外注の基本料金がかかりますが、このゲームでは外注が無く基本料金が無いのが大きいです。

  • ロゴ&イラスト ⇒ イラストレイターに依頼(固定費)

  • 化粧箱 ⇒ レーザーカッターで自作(従量料金のみ)

  • カード ⇒ 使用しない

  • マニュアル ⇒ キンコーズで印刷(ほぼ従量料金のみ)

  • コマ・タイルなど ⇒ レーザーカッターで自作(従量料金のみ)

価格の決定

価格については、1個当たりの製造コストの2倍くらいを目安に切りのいい金額を付けています。
原価の2倍くらいにしておくと、半分くらい売れたところで元が取れるので多少売れ残りがあっても気分が楽なのがいいです。

ただ、今回は需要が供給を上回っているので、金額を上げて需要と供給のバランスをとることも考えました。
結論としては、金額は変えず供給不足については、ゲムマ後も作り続けて欲しい人に届けることを目指すことにしました。
少数生産できるタイプのゲームで追加生産が難しくないのも影響していると思います

委託販売

委託販売はボドゲーマ通販のみとなっています。
通販手数料は30%で結構高めに見えますが、Boothと違い送料が含まれていることと、在庫、顧客管理をボドゲーマでやってくれることを考えると妥当と思っています。

宣伝

前作の結果から

前作「トリテ人狼」は初めてのゲーム作成で、宣伝については「きたこしチャンネル」への投稿くらいしかしていませんでした。
ちなみに、「トリテ人狼」はゲムマ2023秋にチャック横丁で販売し、結果は下記のような感じでした

  1. ゲムマ2023秋での販売数は約30個

  2. Xでの戦利品報告を上げてくれていた人が15個くらい

  3. Xで戦利品報告してくれた人の半分くらいが東海エリア(地元)の人

この結果のうち、自分が重要に思ったのは3.です。
ゲムマ参加者は圧倒的に関東エリアの人が多いにもかかわらず、半分くらい地元の東海エリアの人が購入しているのは、東海以外の人に気が付いてもらえず、購入の候補に挙がらなかったってことだと思います。
東海エリアについては、テストプレイで遊んでくれた方が購入や口コミで広げてくれたことで、宣伝になっていたのだと思います。
つまり、知らないものは購入の候補にもならないという、当たり前の結論です。

ということで、今作では東海エリア以外の人に知ってもらうために、「きたこしチャンネル」への投稿以外に、「フォアシュピール大阪」への参加とみさき工房さんの「みさき工房杯」への投稿も試してみました。
また、今作はフィールドが動く見た目が訴求すると思い、スマホでの撮って出しですが動画も上げてみました。

きたこしちゃんねる

テンプレートの画像を作成し投稿することで、ゲムマ直前に紹介配信をしてもらえるので結構、結構費用対効果が高いと思ています。
また、テンプレ画像はゲーム紹介内容が良い感じにまとまっているので、紹介配信の前のタイミングでも宣伝に使えるのがありがたいです。
「ボドこし」のハッシュタグも、定期的にチェックしている人が結構いるようで、タグをつけるだけでポストの反応が良かったです。
多分次回も利用すると思いますが、紹介数がすごいことになっており店長の体調が少し心配です

▼テンプレを利用した最も反響の大きかったポスト▼

ちなみに、上記ポストの反応で需要が供給力を超えているのを実感してすごく焦りました。

みさき工房杯

実力だめしを兼ねて、みさき工房杯に応募して、優秀賞を頂きました。
最初は「みさき工房杯」の結果を宣伝に使う予定だったのですが、Xで動画を上げた時に供給能力を超えた反応がありビビった結果、追加の宣伝を行うのに躊躇し宣伝には活用しないという不義理な状態に、、、本当に申し訳ないです。
でも、優秀賞に選んでもらえたことで自信になっているのでやった意義はあったと思います。

フォアシュピール大阪

フォアシュピール大阪については、大阪で実際に遊んでもらえて、地元以外の人にアピールできたのが良いですね。
ただ、ゲムマでのアピールでいえば、ゲムマ参加者は圧倒的に関東勢が多いので東京のフォアシュピールの方が効果が高いと思います

フォアシュピールについては、運営の方が積極的に宣伝してくれるなど試遊以外の特典も多く積極的に使っていきたいですね。

最後に

ギミックメインのゲームなので、他の方のゲーム開発の役に立つかわかりませんが、何かのお役に立てば幸いです。

ギミック系については特有の難しさはありますが、うまく動いたときの面白さがあるので、またアイデアを出して挑戦してみたいです。

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