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ライセンス契約書で絶対に決めておくべきことまとめ

ライセンス契約って、響きはかっこいいけど実態はよくわからない。そう思う方も多いのではないでしょうか。そこで「ライセンス契約のライセンス契約たる要素」だけを純粋にとりだして、リストアップします。これによって、これからライセンス契約をつくる方や、ライセンス契約についてざっと要点を知りたい方にとって役に立つと思います。


ライセンスは権利を貸して利用させる契約

そもそもライセンス契約は、権利を貸して利用させる契約です。家やマンションの一室を貸すと「賃貸借契約」となりますが、イメージとしてはこれによく似ています。

ただ違うのは、賃貸借契約では家やマンションの部屋という「目に見える物体」を貸すのに対して、ライセンス契約は目に見えない「権利」を貸します。

知的財産権ごとの特徴を説明すると長くなりすぎるので、今回はざっくりと、特許権、商標権、著作権などの排他的な権利を、相手に利用させて代金をもらうしくみのことだと思ってください。そして、契約書にする際に、相手方と「どんなことを決めなければいけないか」を箇条書きにします。


ポイントは4つある

必須の事項は4つあります。誰に何をライセンスか、どんな利用ができるのか、期間はいつからいつまでか、代金はいくらか、です。

4つのポイント
①誰に何をライセンスするか(許諾)
②どんな利用ができるのか(態様)
③期間はいつからいつまでか(期間)
④代金はいくらか(対価)

以下にそれぞれ説明します。


①誰に何をライセンスするか(許諾)

まずはライセンス(許諾)の根拠となる権利をはっきりさせて、誰に何を許諾するのかを明確にします。

たとえば

特許権なら、
「甲から乙に対して●●という特許権について、非独占的通常実施権を許諾する」

商標権
なら、
「甲から乙に対して●●という商標について、非独占的通常使用権を許諾する」

著作権
なら、
「甲から乙に対して、●●という著作物について、利用することを非独占的にする」

みたいにです。

この、●●の部分も登録番号や具体的な内容を書くなどして契約書のなかで「特定」します。ここを間違えてしまうと大変なので「特定」するということ自体が重要ポイントといえます。

たとえば「商標」の場合なら、

                 記
商標登録第○○号
商標「○○○○」
指定商品・指定役務○○(○○類)

と記載するとよいでしょう。

さらに解説書によっては、ここは「別紙」に記載すべきとしており、図柄を貼り付けるなどしてより明確に特定できるようにしたほうがよいと説明されます。たしかにデザインなど視覚的な情報は、別紙でわかりやすく表示されたほうがベターでしょう。

また使用権の種類として、独占的かどうか、他人にも権利が付与されるかによる区別があります。ようするに「誰が使うか」なのですが、これについての具体的なことは各権利の詳細になるのでここでは省略しますが、かわりに、対象となる権利の種類についての根拠法をリストアップしておきます。

特許ライセンスの場合
①専用実施権(特許法77条)
②仮専用実施権(特許法37条の2)
③通常実施権(特許法78条)
④仮通常実施権(特許法37条の3)
商標ライセンスの場合
①専用使用権(商標法30条)
②通常使用権(商標法31条)
著作権ライセンスの場合
①利用の許諾(著作権法63条)
②出版権の設定(著作権法79条以下)



②どんな利用ができるのか(態様)

どのような実施や使用ができるのかを特定します。ここも非常に重要です。もしもこうしたルールを決めないでいると、極端にいえば許諾した相手はその権利についてどんな使い方もできてしまいます。

でも権利を許諾する方(ライセンサー)としては、ある一定の範囲につかわれかたを限定したいはずです。ようするに無制限の利用を意図していません。

そこで例えば「生産」「使用」「譲渡」「輸出」などの現実の使い方を定義する必要があります。逆にいうと許諾を受ける側(ライセンシー)としては、ここに書かれたことが許諾のすべてであり、書かれていないことは許諾されていないと解釈されても文句はいえません。たとえば「製造」の予定があるのに「製造」が記載されていなかった、といったミスがないように気を付けなければなりません。


③期間はいつからいつまでか(期間)

期間も態様に含めて考えることもできたのですが、なぜか忘れやすいポイントなので項目を分けました。

ようするにそのライセンスはいつからいつまでなのかを確認します。権利をライセンシーが使用できる期間を、限定するわけです。

よくある疑問ですが、この「ライセンスの期間」は必ずしも、「契約の期間」と一致させる必要はありません。一致しても構いませんが、契約の有効期間とは別個の概念ですから、ずれることも当然ありえます。地味ですが結構聞かれるポイントなので、覚えておいて損はないでしょう。


④代金はいくらか(対価)

最後に大事なお金のことです。物品のやり取りと違って、ライセンス契約は目に見えない権利の使い方(利用方法)の話なので、価格設定も複雑なことが多いです。

もちろん単純に、月●万円、とかでも全く問題ありませんが、ライセンスによって得られた追加的利益に比例して支払うという、ロイヤルティ方式(出来高払)が用いられることもよくあります。

売れた中から一定の割合の利用料を支払うとすれば、許諾を受ける側(ライセンシー)にとってはリスクがすくなくなる(売れたら払えばよいから)良いやり方ですが、ロイヤルティの算定のベースになる金額(たとえば売上)でもめやすいというデメリットがあります。

たとえば対象となる商品(@1000円)が1個売れたら販売代金の10%のロイヤルティを払うことに決めるとします。
しかし、通常1個の商品を売るのには販売者はさまざまな経費を負担します。なので、@1000円の商品が売れたからといっても、販売者に1000円はいってくるわけではありませんよね。ここが複雑なところです。

顧客ごとに異なる送料がかかるかもしれないし、梱包など自社が負担しているコストがあったり、当然返品もあるでしょう。このコスト分は計算に含まれるのでしょうか。ライセンシーにとっては、@1000円に対して10%のロイヤルティを支払うよりも、売上からコスト分を控除して(1000円-コスト分で)計算したほうが、利用料は安くなるわけです。

よって、繰り返しになりますが、ロイヤルティの算定のベースとなる金額が、双方にとって誤解なく規定される必要があります。

場合によってはもっとシンプルな料金設定にした方が良い場合もあるでしょう。無理にロイヤルティ方式をとらなければいけないわけではありません。最初に一括で定めた金額にすることも、それらとの併用もできます。いずれにしても重要なことは、当事者間で認識の齟齬が生まれないようにすることです。


まとめ

ライセンス契約を締結するには、最初に4つのポイントを検討しておく必要があります。

4つのパーツ
①誰に何をライセンスするか(許諾)
②どんな利用ができるのか(態様)
③期間はいつからいつまでか(期間)
④代金はいくらか(対価)

契約書を作成する前に、あらかじめヒアリング事項として上記を箇条書きにして整理すると、スムーズに整理されます。試してみてください。


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