契約不適合責任を免除できるか 前編【契約テクニック】
瑕疵から契約不適合へ
契約書があなたをどう守ってくれるのかの話をします。
「契約不適合」とは新しい民法による概念であり、「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことをいいます。
民法改正によって「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」となりました。いまだについ癖で「瑕疵担保」といってしまいますが、今は「契約不適合責任」というべきです。今日はこれを契約でコントロールできるかどうかについてです。
まず、そもそもどういう責任なのか。
ざっくりとしたイメージ
「瑕疵担保責任」は、売買したものに「隠れた瑕疵」があった場合に、①損害賠償請求や、②契約解除(契約の目的が達成できない場合)ができるものでした。売主が無過失でもこれらの責任を負うことが特徴です。
「契約不適合責任」は、「隠れた瑕疵」があったかどうかではなく、「契約と合っているかどうか」を重視して「引き渡された目的物がその種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合していない場合」に、売主が責任を負うとされるものです。その責任とは具体的には買主側からの①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償、④契約解除ができます。(ちなみに減額請求は追完請求の後であることや、損害賠償には帰責事由が必要、契約解除は不適合が軽微だとできない、といった細かい条件がついています。)
ようするに「売ったらおしまい」ではない
「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」とは、細かく比べると違いがあるのですが、その趣旨はほぼ同じです。ようするに売った後もしばらくの間は「売主」には法的な責任が残っているぞ、という意味です。
つまり買った人があまり損をしないように、法律で責任を足しているだけです。法律はよくこうやって、一方の責任をつけ足したりすることで当事者間の力のバランスを取ろうとしますね。ところで「契約不適合責任」は、あなたがお買い物をするときは有利なのですが、逆にあなたが売主のときは、責任をプラスされることになるので、注意が必要になります。
つまりあなたが何かを売るときは「契約不適合責任」をあなたが負うわけで、具体的には、目的物を引き渡したあとも、買主から「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」などとして「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完」などを請求されるかもしれないのです。
売主にとっての契約不適合責任
もっとリアルにイメージするためにいうと、たとえばあなたが「親から受け継いだ家」を売りたい場面だったとします。業者に頼んでやっと買い手をみつけることができました。あとはお金をもらって引き渡せば済みます。
でも、売主であるあなたには「契約不適合責任」があるために、もしかしたら今後も何か不具合(雨漏りやシロアリやいろいろ)があれば修理しろといわれるかもしれませんね。せっかく売れる! と喜んでいたのに、一方であなたにとっては心配が増えてしまいます。これが売主にとっての「契約不適合責任」です。あなたには売った後も責任が残っているのです。
どうすればいいでしょうか?
契約で解決できないだろうか
あなたならどうしますか? 当然、あなたも契約書でこの責任を免除してしまおうと考えるでしょう。
民法のルールは多くが任意規定、つまり当事者が民法と異なる取り決めをすることは原則として自由です(契約自由の原則)。だったら契約書で、契約不適合責任を免除してしまえばいい。当事者が決めたことなので原則として尊重されます。
あなたは「売主は契約不適合責任を負いませんよ、それでもいいですね?」という特約を入れた売買契約を、買主と締結すればいいのです。これで少なくとも家の老朽化などの理由で責任追及される心配はなくなります。
契約不適合責任の免除は有効か?
ただきっとあなたはこういうでしょう。
その特約は効力があるの? と。
つまり次に気になるのは、免除の特約の有効性です。
結論からいえば大丈夫で、契約不適合責任も原則として特約で免除できます。ただちょっと長くなってきたので、例外などくわしくは明日書くことにします。