フランチャイズ契約書のつくりかた【フランチャイズは悪用厳禁】
もしもあなたがフランチャイズ契約書をつくることになったらここだけはおさえておこう2
前回に続いてフランチャイズ契約書のつくりかたです。法務的に重要な点は前編でも書いたので、今日はより実際的なテクニックについて。くれぐれもフランチャイズは悪用厳禁。ただの加盟金あつめとかではなく、本質的にフランチャイズを成功させたい方だけ読んでください。
テリトリー争いは避けては通れない
加盟店が、地理的にどの地域(場所・エリア)に出店できるかという問題をテリトリーとか「テリトリー権」といいます。理屈は簡単ですが、これが大問題なのです。
フランチャイズは、看板は同じでも実際に経営する会社は別なので、たとえば新宿にA社がフランチャイズとして開店していたところへ、新たにB社もフランチャイズに加盟して店を出したいといってきたとき、本部(フランチャイザー)がそれを認めるのか、認めないのかです。
同じ新宿という近所に2つ目の店ができることは、同じブランドという意味では、そのエリアでの存在感を増すわけですから一層のブランディング効果となります。一方で、もとからやっていたA社にとっては、お客をとられる心配があり、正直いって迷惑な話なわけです。
このように、複数のフランチャイズが同一エリアに存在することは、本部にとっては良い場合が多く、加盟店にとっては悪い面が目立ちます。しかも、うまくいっているフランチャイズほど(うまくいっているからこそ加盟店が増えるわけで)、テリトリー争い(テリトリー侵害)は起こりやすくなります。というか、必ず起きるのです。ようするに、人気のフランチャイズになると加盟店同士がけんかしやすいわけですね。気を付けていても起きてしまう前提で考えるべきです。
ノンテリトリーも悪くない
だからこそ契約書では、テリトリー制にするのか、ノンテリトリー制(あえてテリトリーの制限をしない)とするのかを明確に規定しなければなりません。途中でルールを変えるとさらに混乱が激しくなるので、規模が小さいうちからはっきりさせるべきです。かつ、テリトリー侵害は「起きる」前提で考えた方がよいですから、侵害へのペナルティや補償の定めも必要です。
フランチャイズ全体の成長戦略を考えるとノンテリトリーも悪くありません。けんかにはなりがちですが、地域内に複数店舗が展開することは、ブランドを強め、競争を高める要素だからです。ただし行き過ぎれば加盟店のモチベーションは低くなるリスクがあります。加盟店の出す結果が、結局はロイヤルティとなって本部に還ってくるわけで、これも野放しにはできません。結局は本部がテリトリー問題に積極的に関与することで、加盟店の横のつながりや対話を維持しながら、環境を整える必要があります。
テリトリー保障のメリット
テリトリー制は、契約書でいったんその地域に店舗ができたら他の店舗にフランチャイズを許さないことにするやり方です。これはこれでメリットがあって、ようするに最初から出店可能エリアが厳格に決まっているので、テリトリーをめぐって加盟店が揉める要素が少ないのです。ただ、エリアによってはチャンスロスを起こすおそれがあるでしょう。その場合のテクニックとしては、従前の加盟店の文書による承諾があればエリア内に店舗を増やすことができる、などの例外規定を置くことにより、交渉の余地を残すなどの戦略が考えられます。
いずれにしても、テリトリーを定めるのか定めないのかはシビアな問題なので、契約書の規程だけで安心せず、運用上も常に配慮したほうがいいです。たとえば油断して、加盟店さんに「この地域はまかせますよ」などと、ちょっとした営業トークのつもりでいってしまうと、あとでテリトリー権を保障されたと主張される危険があります。契約前から意識すべきリスクといえます。
まとめ
ビジネス契約書は、優れたビジネスモデルをうつしとった地図のようなもの。そこに危険地帯も宝のありかも書いてあります。フランチャイズ契約は特に興味深いカテゴリーのひとつであり、実際に数々のスモールビジネスを大企業に育て上げてきた、非常にパワフルな契約のしくみでもあります。
この魅力的な契約を研究することにより、ひとつのブランドで成功パターンをもっていれば、最初は小さくてもフランチャイズで急成長する可能性があります。必ずしも多店舗展開が目標でなくても、フランチャイズ契約には自社ブランド成長のヒントがあります。フランチャイズ契約のエッセンスをあなたの事業計画にもいかしましょう。
あわせてお読みください
契約書のひな型をまとめています。あなたのビジネスにお役立てください。
もしこの記事が少しでも「役に立ったな」「有益だな」と思っていただけましたら、サポートをご検討いただけますと大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。