オールラウンダーにならなければならないという幻想

「これ一つでなんでも出来る」そんなキャッチコピーで売られてるモノやサービスはいっぱいある。なんでも出来るっていいよね、なんでも出来たらいいよね、確かに。

なんでも出来る、万能、つまりオールラウンド。そして、なんでも出来る人、万能な人は「オールラウンダー」と呼ばれる。仕事してても周りにいませんか?なんでも出来る人。

何やっても上手くできる、それも結構高いクオリティで。そういう風に見える人達を見て「あぁいう風に"なりたい"」と思うのはとても素晴らしいことだと思うけど、一方で「あぁいう風に"ならなきゃ"」と思っちゃうと、それはしんどくなることに繋がりかねないなと思う。

実際、僕がそうだったので。

出来ない部分ばかりに目がいく

これは僕特有の傾向だと思うので、他の人に当てはまるかは分かりませんが、僕はとにかく何事においても【出来ない部分】に目が行きやすいです。仕事の内容にしても、自分という人間に対しても。

自分のここが足りない
もっとこうした方が良かった
自分はまだまだ

こういったマインドで割と長い間生きてきました。

他の人の目にその姿がどう映ってたかは分からないけど、あえて前向きに捉えるなら「謙虚」「課題意識」になるのかも知れません。出来ていないことを認知し、出来るようになろうとする。それ自体は、別に悪いことではないと思います。

ただその一方で、僕自身はその自分の傾向に、時々しんどさを感じていました。どんなに出来るようになっても、些細な”出来ないこと”に目が向いてしまい、無限に続く"自分へのダメ出し"が発生します。でもそうやって、自分への無限ダメ出しを続けるのも限界があります。心が折れます。というか折れました。

今でこそ、当時の自分のことを「自己肯定感が低かったんだろなぁ」と振り返ることができるけど、その頃は「自己肯定感」という単語すら知らなかった。だからただただ、自分へのダメ出しに自分で耐え続ける、そんな日々でした。

オールラウンダーなんていない

ある時ふと周りの人を見ている時に「もしかして得意と苦手は表裏一体なのか?」と思った。例えば・・・

・ズバズバ意見を言えるけど、対立を生む
・意見をよく聞けるけど、周りに振り回される
・じっくり考えられるけど、スピードに欠ける
・ルールを重んじるけど、融通が効かない
・直感はすごいけど、裏付けがない

別にアラ探しをしてたわけではないんだけど、一緒に働く人達を見ていて、そういう”オモテとウラ”がチラホラ見え始めた。興味深かったのは、仕事の能力に関わらず全ての人に、そういった二面性があったこと。

そうやって”オモとテウラ”の関係に気づいた時に「これたぶん、自分にもできることあるんだろな」と(なんの根拠もなく)思うようになった。周りの人の”できる”の裏には”出来ない”があるだろうし、自分の”できない”の裏にはきっと”できる”がある。そういう見方ができるようになってきた時に初めて

オールラウンダーっていないかも

と実感を持った。そう、オールラウンダーなんかいなかった。正確には「オールラウンダーに見えていただけ」なのかも知れない。いずれにせよ、何でも出来る人なんかいない。それ以上でもそれ以下でもない。

冷静に考えてみれば「そりゃそうでしょ。なんでも出来る人なんていないでしょ、当たり前でしょ」となると思う。でも僕にはその【当たり前すぎること】が分からなかったんです。働き始めてから10年近く経って、やっと腹落ちした。

よかったよかった。

出来ることに気付く

謙虚とか謙遜ってのは日本人特有の美意識と言われることもよくある。自分が”へりくだる”という感覚。悪いことではないと思うし、それが日本人の良いところだと思う。

僕自身は謙虚・謙遜に特別美意識を感じてたわけではなく、純粋に「自分はまだまだ」と思ってたつもりなんだけど、それが自分自身への重荷にとなり、自分自身を苦しめてたように思う(無限ダメ出しとかね)

そんな中で、得意と苦手に見られる”オモテとウラ”の関係に気づいたのは、僕の中では大きな転換だったと思うし、こういう見方が出来るようになるだけで、働く上でのストレスはずいぶん減ったと思う。

出来ないこともある
でも出来ることもある

働いていると、もっと言うと生きていると、得意なことばかりが降ってくるわけでもない。だから、出来ないことを出来るようにする努力が必要な場面もあると思う。それ自体は否定はしないし、成長意欲の表れだから大事だと思う。

でもそれによって、出来ないことに囚われて苦しくなるなら、出来ないことを手放すのも必要だと思うし、そういう時に”できること”にどれだけ目を向けられるかが、自分自身の気持ちの穏やかさに影響する。

自分自身の「楽しくはたらく」は誰かが作ってくれるものではなく「自分で作る」ことになると思う。その土台を形成する上で”出来ることに目を向ける”は大きな要素の一つだと思う。

傲慢にならず、かと言って謙遜しすぎず、フラットな目で”出来る&出来ない”を捉えられるようになっていきたい。

今日はここまで。

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