見出し画像

ロボットのシステムインテグレーションは本当に最重要なのか?という話

DIGITAL Xでの月1回のロボットコラムも5回目を迎え、「システムインテグレーション」の重要性について書いてみました。

有難いことに読んで頂いたと思われる感想やコメントを頂くことができ、改めてロボット領域におけるシステムインテグレーションの関心の高さを感じることができました。

コラムで書いた内容に嘘、偽りはないと思っているのですが、一方で

「本当にシステムインテグレーションが重要なのだろうか?」

という矛盾する考えも持っています。今のところの答えは、『もちろん重要なんだけど、もっと重要なことがあると思う』という感じです。今回はこの辺りについて書いてみたいと思います。

改めてシステムインテグレーションとは?

ロボットの領域においてシステムインテグレーションとは「ロボット単体ではなく、関連機器や関連システムを組み合わせて“1つのシステム”として、しっかりとエンドユーザーの要望を満足させるようにする作業」だと思っています。ロボットが使われる現場で本当に役に立つためには、しなくてはいけない作業です。そういう意味ではめちゃくちゃ重要です。

ここが知りたい!ロボット活用の基礎知識』(日本ロボット工業会)を読んでみても、ロボット本体のコストよりも圧倒的にインテグレーションに掛かる費用が多い。以下の事例を見てみると、どうやって使うかを考える構想設計から実際に安全に動かすところまで、本体代の2~5倍くらいは掛かってしまうことが分かる。

画像1

(引用:ここが知りたい!ロボット活用の基礎知識)

システムインテグレーションしなくても役に立つ

ただし、穿った見方をすると、ここまでのコストを掛けないと役に立たないのが今のロボットの現実とも言える。では、これが本当にあるべき姿なのだろうか?

理想はやっぱり「システムインテグレーションがなくても成り立つ世界」なのではないかと思う。少なくとも今のような膨大なコストが掛かるようではなかなか普及は進まない。「買ったらすぐにパッと使える」「専門の技術的な知識がなくても使える」というのが理想な気がする。

例えが良くない&古いかもですが、家にレコーダを買ったら、自力でテレビと繋ぎ、ネットとも繋ぎ、違う部屋からタブレットで録画したコンテンツを見る。結構!?なインテグレーションにも関わらず、簡単にできる(トラブル時もあるけど・・・少なくとも昔よりドンドン簡単になっていっている気がする)。簡単にできるように製品が成熟していっている。

(自戒の念もかなり込めて言うと)「とにかく誰でも簡単に使えるようにする!」そんな思想がまだまだロボット業界には足りないと思っている。「ロボット自体は非常に高度な技術が使わていて、それを使いこなし、性能を引き出すために、専門のシステムインテグレータが現場にベストな状態にチューニングしてくれる」という思想を捨てない限り、なかなか普及はしていかない。

この考えは「システムインテグレータが不要だ」と言っているわけではない。もちろん、インテグレータは必要だ。上位システムと繋いだり、他のシステムと連動させることで、よりお客様のお役立ちに繋げることができるケースも多々ある。

ただし、その元となるロボット本体だけでも役立ちできるケースの探索・実現やインテグレーションコストを下げるための簡易化というのに、もっと力を入れた方が良いと思っている。

この辺りのことを本当に良く考えられているなぁといつも感心するのが、Doog社である。

展示会などで何度か見せて頂いたことがあるが、本当に使うのか簡単である。何か人が教えたり、設定・操作したりする作業が必要な場合もあるが、その操作も非常に簡単。単体だけでもしっかりと機能するユースケースが多く存在しているように感じる。

一方で、システムインテグレータの存在も大事にされていて、全体として高いユーザビリティを実現できているように感じる。最近では、Amazonで買えて、使い方はyoutubeで確認できるという話も聞くので、そういう意味では本当に誰もが使えるレベルにまでロボット単体として仕上がっているのだろう。

本当に重要なことはロボットアーキテクト!?

では、単体として誰でも動かせるロボットができたら、それで良いのか?というとそうではない。それを他の機器と繋いだりするインテグレータが必要だ、という話は前述の通りであるが、もっと大事なことがある。

そもそもロボット使うのか?使うなら、どのシーンでどうやって使うのか?完全自動化を目指すのか、それともある程度ヒトによる介入を想定するのか?どれくらいの費用を掛けて行うのか?という「そもそも」の話をしっかりと考えることである。

このようなことをすることを、ここでは「ロボットアーキテクト」、そのようなことをする人を「ロボットアーキテクト人材」と呼ぶことにする。

この「ロボットアーキテクト」こそがロボット普及のカギを握っているように感じる。

似たような言葉でITアーキテクトという言葉があるが、経産省が策定したITスキル標準を参考に、ITアーキテクトが担う役割を「ロボットアーキテクト」に求められる役割としてと読み替えると以下のようになる。

1.事業上の課題を分析し、ソリューションを構成するロボットシステム化要件として再構成する。
2.顧客のビジネス戦略を実現するためにロボットシステム全体の品質(整合性・一貫性等)を保ったロボットアーキテクチャを設計する。
3.設計したアーキテクチャが課題に対するソリューションを構成することを確認するとともに、後続の開発、導入が可能であることを確認する。
4.ソリューションを構成するためにロボットシステムが満たすべき基準を明らかにする。
5.実現性に対する技術リスクについて事前に影響を評価する。

とても良い!

さらに、IPA(情報処理推進機構)が定めた「ITスキル標準V3 2011」にはITアーキテクトに必要なスキルもしっかりと定められている。

画像3

(引用:ITスキル標準V3 2011)

文字が小さくて読みずらいところがありますが、ザックリ言うと

●要件の分析・定義や実現可能性の評価、技術上の課題や代替案の分析など『アーキテクチャ設計』に関するスキル
●アプリケーション設計やプロセスモデリングなど『設計技法』の理解と適用
●『標準化と再利用』のために開発標準・IT標準を定義し、再利用資産の開発と適用が行えるスキル
●『コンサルティング技法』の選択と活用
●『業務分析』
●『知的資産』の管理と活用
●ロボット業界の動向把握と『技術標準』の理解と適用
●関連業界の動向把握と『ビジネス標準』の理解と適用
●『プロジェクトマネジメント』
●『リーダーシップ』・『コミュニケーション』・『ネゴシエーション』

ということです。こんな人材がいたら、引っ張りだこなことは間違いないのですが、間違いなくロボット業界で今必要なスキルなように感じます。

コンサルティングスキル、業務分析スキルを用いて、本当にロボット化が必要なところを見分け、どんなロボットシステムが相応しいかを策定し、再利用可能な形で実装する。そんな理想形が簡単に成り立つとは思っていませんが、インテグレーションより上位の考え方として「アーキテクト」というのを改めて考えてみるのも良いんではないかと思った週末でした。

では、また来週~。

安藤健@takecando

=================================

Twitter(@takecando)では気になったロボットやWell-beingの関連ニュースなどを発信しています。よければ、フォローください。


頂いたサポートは記事作成のために活用させて頂きます。