2020年のロボット大賞#3:搬送、製造、警備ロボット
週に渡り、紹介してきた2020年の『ロボット大賞』の受賞ロボットを振り返るのも今回がラストです。
3回目の今回は、中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)に選ばれた協働運搬ロボット「サウザー」シリーズ[Doog]と日本機械工業連合会会長賞に選ばれた「meviy」[ミスミ]、自律移動型警備ロボットSQ-2[SEQSENSE]について調べて見たいと思います。
●協働運搬ロボット「サウザー」シリーズ[Doog]
大島さん率いるDoog社のサウザーです。搬送ロボットとして多くの現場で使用されています。Doog社の報告によると、2015年の発売以来、日本やシンガポールなどで自動車メーカ、電機メーカ、物流会社などに対して、累計約400台が売れているそうです。
私も何度かデモを見せて頂いたことがあるのですが、完成度高いです。その「使いやすさ」と、徹底的に使い方を想定した上での技術は、他社ではあるのですが、素直に拍手!
多くの現場でA地点からB地点へモノを運ぶのに必要な
・前の人に付いていく「追従走行」
・決められたコースを走る「ライントレース」
・一度走らせたコースを覚える「メモリートレース」
という3つの機能が搭載されていて、現場の使い方に応じて、ユーザ側が簡単に使いこなせるようになっています。
技術の完成度も素晴らしいのですが、使いやすいというのがポイントで、エンドユーザにとっても使いやすいことはもちろんのこと、その間に入ることもあるシステムインテグレータにとっても使いやすいようにできているんだと思います。
つまり、搬送ロボットを全体システムの中の「モジュール」というか「部品」として洗練されているので、導入先の使い方や使っている倉庫管理システム(WMS)などに応じて、フレキシブルに提案が行え、導入に繋がりやすくなっているのではないでしょうか。
サウザーはなんと!!アマゾンでも買えます!!
ご興味ある方は買ってみてはいかがでしょうか?そして、取扱説明はyoutubeで動画で確認できます。
このようなことができるのは、やはり「シンプルで使いやすい」というのが徹底されているからでしょう。
●ものづくりプラットフォーム「meviy」[ミスミ]
機械系のエンジニアであれば、誰もがお世話になるミスミ。約3000万点の機械部品を紙カタログやWebで提供する製造業のアマゾン的なプレイヤーです。そんなミスミが2016年から提供しているのが、3Dモデルから直接板金や切削品を発注できるサービスを実現するECプラットフォーム「meviy」です。
これまでの部品の発注という概念というかプロセス自体も変えてしまうくらいのインパクトがあります。普通に2D図面で調達するよりもちょっと高い気もしますが、2D図面を作図する工数を考えたら十分安く、納期も圧倒的に短いです。
これぞ本物のDX!!という感じのサービスです。
結果として、部品調達工程を90%以上短縮することができ、利用者数は55,000ユーザを超え、リピート率は8割を超えているそうです。
技術的には、2つのAIにポイントがありそうです。1つは、見積作業へのAI導入。もう一つは、加工へのAI導入(ミスミの言葉では、「デジタルものづくり」)です。前者により、3D設計データから精度なども加味した価格と納期の見積もりを自動で算出することができるようになりますし、後者により加工機の動作プログラムの自動生成ができるようになっています。
なぜミスミが「meviy」というシステム、特に、2つのAIシステムを作り上げられたかは、正直よく分りません。言葉にすると、ミスミが長年積み重ねてきた部品加工の品質や納期に関するノウハウや、多くの部品メーカーとのネットワークの蓄積、というような表現になってしまうのでしょうが、どう考えても、そんな簡単ではないシステムです。
特許検索してみると、2013,4年ごろからmeviyに関する特許が積極的に出願されているのが分かります。最初に登録になっている特許第5753621号はかなり広い権利範囲です。
【請求項1】
入力端末を介してアイテムの形状データを取り込む第1工程と、
前記形状データに基づいて、前記入力端末に入力された前記アイテムの形状及び寸法を認識する第2工程と、
認識された前記アイテムの形状及び寸法に基づいて、前記アイテムを製造する際に選択し得る公差を含む製造条件を取得する第3工程と、
前記製造条件を選択可能に表示端末に表示するとともに、表示された前記製造条件に対応する価格又は納期と、寸法及び公差を付した前記アイテムの3Dモデルとを前記表示端末に表示する第4工程と、
前記入力端末を介して選択された前記製造条件に応じて、前記表示端末に表示される前記価格又は前記納期と、前記3Dモデルに付された寸法及び公差とを更新する第5工程と
を備えることを特徴とする自動見積り方法。
プロジェクト推進のキーとなったのは、吉田光伸さんというミスミの常務のようです。上記特許の発明者にもなっていますが、もともとNTT、オラクルを経て、2008年にミスミに入社されています。入社前にITベンダー側で、インターネットやデジタルを使った様々な新規事業の立上げをされてきたようです。
「デジタル化のプロ人材」と「ものづくりの社会インフラである企業として長年研究開発」の掛け合わせが、meviyを生んだのかもしれません。meviyの構想自体は1985年から始まっていたとも言われています。それが実際のプロジェクト化された2013年から3年で作り上げ、この1,2年で倍々ゲームで劇的にユーザ数を伸ばしています。
このプラットフォームに対して、ミスミが培ってきた様々な加工業者の△や海外も含めた展開性ができたとき、本当にアマゾン並のプラットフォーマーが日本から輩出されるかもしれないですね。考えるだけでワクワクします!
ミスミというと、エンジニア以外の方には三枝氏による会社経営の方がピンと来る方も多いかと思いますが、DMaaS(Digital Manufacturing as a Service)と呼ぶ製造業界のインフラとしての技術力も素晴らしいですね。
もちろん、三枝さんの一連の本も大好きです。笑
●自律移動型警備ロボットSQ-2[SEQSENSE]
もう一つの日本機械工業連合会会長賞に選ばれたのが、SEQSENSE(シークセンス)社の警備ロボット。ちょうど先日10台導入のリリースが出されていました。「大手町パークビルディング」「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」などの三菱地所系のオフィスビルや、成田国際空港、大阪「なんばスカイオ」などに導入がされているようです。
もともとは明治大学理工学部の黒田洋司教授らが2016年に作った大学発ベンチャーという感じでしたが、ホームページを見てみると、資本金も10億円を超えていて、ファイナンス系の人材が結構充実しているんですね!?
技術としては、自律移動技術をコアとしながら、巡回業務、立哨業務、動哨業務などの警備業務を行うことができるようになっています。
開発側は出資もしているTISがガッツリと入り込んでいるようなので、今後、エレベータなどとのシステム連携、全体管理などのシナジーが強くなっていくことが期待されますね。
警備ロボットに関しては、セコム「X2」、ALSOK「REBORG-Z」など警備会社も取り組んでいるので、ニーズとしては間違いなく存在している領域です。ただし、どのようにオペレーションするのかというのが結構難しい領域とも言え、ロボット、監視カメラ、警備員の役割分担の最適化がポイントになるような気がします。
開発者だけではないロボットスタートアップとして、イノベーティブなビジネスモデルとともに、ドンドンと導入が進むと良いなぁと思います。
まとめにかえて
2020年の第9回ロボット大賞の紹介はいかがでしたでしょうか?
個人的にもあまり知らないロボットもあり、見えるところ見えないところで様々なロボット技術が活用され始めているものだなぁと改めて思いました。
2006年の第1回の受賞ロボットを見てみると、確かに15年前の段階でも多くのロボットが実用化されているのですが、やはり最近のロボットの方がより洗練されてきた、かつ、まだまだ黒字で大儲けという会社はないかもしれませんが、ビジネスとしての規模も大きくなってきています。
一方で、海外を見てみると、日本の比ではないほどスピード感を持ってビジネス開発が進められています。
負けないように頑張っていきましょう!!(自戒も込めて・・・)
ロボット大賞特集は一旦ここまでにして、来週からはまた通常モードに戻ろうと思います。
では、また来週〜。
「フォロー」や「スキ」が頂けると喜びます。笑
安藤健(@takecando)
======================
Twitterでは気になった「ロボット」や「Well-being」の関連ニュースなどを発信しています。よければ、フォローください。