高齢者のDXと遠隔診療
企業のDX(Digital Transformation)が注目されているが、いま日本で最も進めるべきが高齢者のDXだと思います。行政のデジタル化にしろ、企業のDXにしろ、高齢者への対応が最も懸念される点です。多様性という面では、外国人や障碍者などもありますが、日本で約3割の人口を占める高齢者のDXなくして、社会のDXはなされそうにありません。
近年で高齢者のインターネット利用にあたってのインフラ的な状況は急激に改善されつつあります。最新の総務省の調査によれば、平成30年度まで75歳はインターネットの利用経験のない世帯が半数に上りましたが、令和元年の調査ではインターネットの利用経験のある世帯が一気に76%を超えています。つまり、世帯の中で誰かはインターネット利用経験がある割合は大幅に増えているのです。
(通信利用動向調査(世帯編)令和元年)
しかし、企業のDXと同じように、インターネットには接続しているが、活用していないという状況でもあります。インターネットに毎日接続している人は、70歳代で約36%、80歳以上だと約15%しかありません。これは推測ですが、高齢者にとってインターネットの利用はまだまだなじみが薄く、魅力的なサービスが展開されていない、ということではないでしょうか。
では高齢者にとって魅力的なサービスとは何か、と考えると、最も魅力的なのは遠隔診療ではだと考えられます。良く病院が高齢者サロンになっている、といいますが、「行きたくて行っている」という人は本当に多いのでしょうか?お薬をもらうためだけに長時間の通院を強いられることは本当に幸せなのでしょうか?そう考えると遠隔診療で薬が宅配されることは、非常に魅力的なサービスです。
現状の遠隔診療は非常に規制が多く、限られたものでしかありませんが、これが一般化すれば毎日インターネットを利用する高齢者は劇的に増えるでしょう。遠隔診療で頻繁にインターネットを利用するようになれば、インターネットによる行政手続きなどへの心理的抵抗もかなり下がるでしょうし、高齢者のDXの嚆矢となるに違いありません。
高度な医療ができない、誤診が増える等の心配はあるでしょう。しかし、そもそも対面なら100%確実だと言い切れるわけではないわけで、程度問題にすぎず、きちんとインフォームドコンセントを行えばよいという話です。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、高齢者の外出には非常に危険が伴う時代です。理由と状況はそろっています。今こそ、遠隔診療をもっと強力に推し進め、高齢者のDXを達成することで、日本社会全体のDXを進めて頂きたいと思います。