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加速する少子化と政策の失敗の原因
この国は戦前から「失敗しているのに作戦担当者と戦略を変えない」という傾向がありますが、少子化対策についてはまさにこのパターンにはまっています。
2019年の特殊合計出生率は、2007年以来12年ぶりの低水準となりました。政策的な支援が少なく、政府の施策が効果を上げていないことは明らかなのに、やってます、というポーズだけで全然戦略を変えようとしない結果が表れています。少子化は先進国共通の問題ですが、対策に失敗する国ばかりではありません。しかし、日本は失敗し続けています。戦略を大きく変える必要があるのは明らかです。
しかし、先ごろ発表された少子化社会対策大綱でも、根本的な政策の変化はほとんどありません。なぜこんなことが起こるのでしょうか?その原因は、政策を立てている人がこれから子供を産み育てようとする人でないからです。
たとえば、この少子化社会対策大綱の策定にかかわった「第4次少子化社会対策大綱の策定のための検討会」の委員の年齢をご覧ください。
阿部 正浩 中央大学経済学部教授 1966年 54歳
井崎 義治 流山市長 1954年 66歳
石蔵 文信 大阪大学大学院人間科学研究科未来共創センター招へい教授 1955年 65歳
大日向 雅美 恵泉女学園大学学長 1950年 70歳
奥山 千鶴子 NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長 1962年 58歳
榊原 智子 読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員 1962年 58歳
佐藤 博樹 中央大学大学院戦略経営研究科教授 1953年 67歳
新谷 英子 カルビー(株)人事総務本部ヘルスケア委員会委員長 不明
筒井 淳也 立命館大学産業社会学部教授 1970年 50歳
羽生 祥子 日経DUAL創刊編集長(日経xwoman編集長) 1976年 44歳
村岡 嗣政 山口県知事(全国知事会) 1972年 48歳
そう、全員これから子供を産み育てようとする年齢でない人ばかりです。もちろん、有識者ですから、データとエビデンスに基づいてお話されるのでしょうが、そこに本人のバイアスが入らないはずがありません。「私が若いころはこう思っていた」という思いで、これから子供を産み育てようとする人の声を本当に反映できるでしょうか?しかも、青年世代を代表する団体の長などもここに入っていないのです。(2018年の少子化克服会議の時も、青年世代を代表し40歳以下なのは日本青年会議所だけでした。)
失敗の本質でも語られているように、敵のことをよく調べずに戦略を立て、いったん立てた計画を変えらないということは悲劇を招きます。少なくとも、過半数は10代~30代のこれから子供を産み育てられる世代が、少子化の政策構築に関わるべきです。厚生労働省の過去の担当者ですら、このことに気づいています。
過去の呪縛にとらわれず、日本の未来を作る有効な人口政策を実施するためには、10代~30代のこれから子供を産み育てられる世代の多子社会の実現に繋がる議論が必要なのです。